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雇用延長が進む中、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が、「65歳超雇用推進マニュアル」を作成した。ヤマト運輸、サントリー、野村証券といった55の企業を調査した具体事例を詳細に分析しながら、“お荷物”にしない高齢社員の働き方改革を提案。高齢者の「雇用確保」から「戦力化」へと転換を促す狙いだ。将来的には、年金制度の破綻の恐れから、定年制度自体の廃止も見込んだノウハウを指南している。(社会部 天野健作)
■65歳以上の定年はわずか1・1%
「70歳までを『ほぼ現役世代』とし、働ける社会にする」。自民党のプロジェクトチームは13日、こんな提言案をまとめた。超高齢化社会に備える必要性は急激に増している。特に日本老年学会などが1月、「65歳以上」と定義されていた高齢者を、「75歳以上」と見直すことを提言したことに伴い、こうした議論に拍車がかかっている。
マニュアルではこれまでの経緯を詳細に記載。高齢者雇用安定法によると、平成25年4月から社員が希望すれば65歳まで働き続けられるよう企業に義務付けた。28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」には、65歳以上の雇用延長や、それ以上の定年引き上げも働きかけている。
厚生労働省の高年齢者の雇用状況調査によると、28年に高齢者の雇用確保措置を取っている企業は99・5%で、65歳まで働ける企業の割合は74・1%になっている。しかし、定年制度としては60歳が維持されており、65歳定年の企業は14・9%、65歳以上の定年はわずか1・1%だ。
■再雇用で「のんびり」を戒め
「65歳までの者に力を発揮してもらうためには、モチベーションを高めてもらい、これまで以上に戦力になってもらうことが必要」
3月にマニュアルを公表した雇用支援機構はこのように作成趣旨を説明する。
60歳の定年後の再雇用については「正社員でなくなることで、余生のような気持ちになって意欲も低下しがち。賃金が低下した場合は特に『のんびりやろう』という気持ちになったりする」と社内での悠々自適生活を戒める。
マニュアルを作成するに当たり、雇用支援機構は昨年4月から12月にかけて、55社の状況を調査した。
高機能性樹脂フィルムの加工業「松元加工」(奈良県田原本町)は8年前から、「70歳定年」という珍しい制度を導入。従業員は約40人と小規模会社だが、「新卒者がなかなか採用できず、慢性的な人手不足のため、高齢者の採用に積極的に取り組むことにした」という。
高齢者であっても、職務内容や役職、賃金も他の年齢層と同じ。職場環境の改善のため、8種類の勤務時間帯を導入したり、休憩室を充実させたりした。床でつまずかないように、配線や配管を床から天井に移すなど高齢社員に配慮した。
同社は「定年引き上げで、60歳前後の体力、気力とも充実した優秀な経験者を採用することが容易になった」と分析している。
■職場環境の整備や教育訓練が必要
「その仕事、80歳までできますか?」を合言葉に、高齢者の戦力化に努めたのは、豆腐製造販売業「おとうふ家族」(茨城県笠間市)。従業員は約90人で、23年から希望者全員を70歳まで再雇用するとともに、健康で能力があれば年齢の上限なく雇用している。
移動販売では、午前8時~午後2時の間で、顧客の都合に合わせていつでも出勤可能。高齢者のモチベーションを上げるために「シニアブラザー制度」を導入した。新しく仕事に就いた新人の高齢従業員に対し、技術やノウハウなどをベテランが授けている。
こうした事例を基に、雇用支援機構は「戦力化」に向けた定年引き上げに際し、(1)「戦力」とするなら、これまでの経験を生かせる職務が一番(2)職務や職を変える場合は納得性が大事(3)「居場所」の確保が大切(4)人事制度は「生き物」、職場の意見をしっかり吸い上げる-などを提案している。特に、高齢社員への役割を明示し、職場環境の整備や教育訓練の必要性を強調した。
雇用支援機構の和田慶宏理事長はマニュアルで、「働き方改革の中でも、高齢者の就労促進は、重点的に取り組むべき課題の一つ。企業によって置かれている状況、抱えている課題はさまざまで、それぞれの企業が主体的に考え、取り組むことが必要だ」と指摘している。
◇
「高齢・障害・求職者雇用支援機構」=千葉市に本部がある厚生労働省所管の独立行政法人で、平成15年10月に設立。高齢者や障害者などの雇用を支援するとともに、職を求める労働者の職業能力をアップさせるための業務を行う。「65歳超雇用推進マニュアル」は同機構のホームページに掲載(http://www.jeed.or.jp/elderly/data/manual.html)。
引用:高齢社員の働き方改革 独立法人が「戦力化マニュアル」作成、定年なし時代へ一石
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