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食事やおやつ、休憩のお供として定番となっているキリン「午後の紅茶」。発売30周年の2016年は、過去最高の販売を達成。キリンの看板商品として、さらなる飛躍を遂げた。マーケティング施策でその飛躍を支えたのが、キリンビバレッジマーケティング部商品担当部長代理の星島義明さん。躍進につながった取り組みやその狙いについて聞いた。
【「午後の紅茶」のマーケティングチームを率いるキリンビバレッジの星島さん】
紅茶飲料市場の拡大をけん引してきた午後の紅茶シリーズ。16年の販売数量は初めて5000万ケースを突破し、節目の年を彩った。
30年の歴史を振り返ると、常に成長を続けてきたわけではない。日本初のペットボトル容器の本格紅茶として販売を開始したのは1986年。同年に発売された「写ルンです」や「ドラゴンクエスト」などのヒット商品とともに、「午後ティー」の愛称でブームを巻き起こした。しかし、2000年代に入ると緑茶やブレンド茶などの無糖茶が台頭し、低迷。「甘い」「高カロリー」といったイメージを変える必要に迫られた。
そこで、新商品「エスプレッソティー」や「おいしい無糖」を投入し、新たな飲用スタイルを提案。それらがヒットして再成長した。10年以降、7年連続で前年を上回る販売を続けている。
●初めてのマーケティング
星島さんは1999年に入社。以来、営業畑を歩み、コンビニ営業などを担当してキャリアを積んできた。ところが2016年4月、マーケティング部に配属。午後の紅茶のマーケティングチームを率いることになった。30周年を迎える重要なタイミングでマーケティングを任されることになり、「最初はびっくり。務まるだろうかと思った」そうだ。
午後の紅茶はキリンビバレッジの売り上げの半分程度を占める主力商品であり、社員にとっても特別なブランド。星島さんも「営業時代もずっと深く携わってきた商品。核となるブランド」という認識を持つ。マーケティングの仕事は初めてだったが、社内からの期待に応えるべく取り組むことになった。
マーケティングの仕事は、商品コンセプトの設定から販促まで多岐にわたる。「売れること」を目指し、開発段階から店頭に並ぶまで、全ての仕掛けに携わらなければならない。午後の紅茶は毎月新商品が出るブランドであることに加え、16年は30周年記念の企画もあった。必死に走りながら、盛りだくさんの取り組みに挑んできた。
●紅茶市場の拡大を目指す
節目を迎えた16年は、30年の歴史の中であまり取り組んでこなかったことに挑戦した。それは、季節を意識したキャンペーンだ。特に冬は、もともとコンビニのホット飲料として売り上げが伸びる季節でもあるため、積極的な販促活動を仕掛けてこなかった。そこに目を付けて、「冬に午後の紅茶を思い出してもらう」ことを目標に掲げた。
キャンペーンの狙いはもう1つある。「紅茶飲料の市場拡大」という課題に取り組むことだ。清涼飲料の紅茶カテゴリーでは、午後の紅茶が50%に近いシェアを誇る。しかし、清涼飲料の市場全体から見ると、紅茶カテゴリーの割合はわずか5%程度。市場を拡大できれば、まだまだ販売を増やすことが可能だ。「新しい仕掛けで午後の紅茶に触れてもらうきっかけを増やし、市場を広げたい」と星島さんは意気込む。
販促の目玉の1つが、7年ぶりに制作した冬限定のテレビCM。現役高校生で女優の上白石萌歌さんがCharaさんの代表曲「やさしい気持ち」を歌う「あいたいって、あたためたいだ。」編を12月から放映した。印象的な歌声に対する反響は大きく、「『泣いてしまった』という声もあった」(星島さん)。動画サイトの急上昇ランキングでも大きな話題となり、午後の紅茶のブランドイメージをあらためて定着させた。星島さんは「『紅茶っていいな』『キリンっていいな』と思ってもらうことを目指した。来年以降も冬のCMを継続できれば」と振り返る。
また、紅茶市場の枠を広げる取り組みの一環として、30周年記念商品「エスプレッソティーラテ」を10月に発売した。コーヒーのエスプレッソのように高温・高圧で紅茶を抽出することで引き出した、茶葉のしっかりとした香りと飲み応えが特徴。コーヒーに替わる飲み物として提案し、紅茶ユーザー層の拡大を狙った。香り高く濃厚な味わいが受け入れられ、ブランド全体の好調を後押ししたという。
7月と12月に開催した、季節の飲み方を提案するイベントも好評だった。「1年を通じてなんとなく飲まれる」だけでは市場は広がらない。季節ごとのイメージ強化や他の飲料に替わる飲み方の提案によって、その存在感をさらに強めた年になった。
●意識のギャップをなくす
イベントやキャンペーン、新商品など、他の部署や外部の会社を巻き込みながら取り組む仕事が多い星島さん。社内外における意思疎通の難しさを痛感したという。
広告代理店など、外部とのやりとりが多いCM制作では、ナレーションの文言などについて、「細かい機微が伝わらない」と感じることがあった。細かい表現の1つ1つがブランドイメージを左右するため、正確な意思疎通は欠かせない。お互いに「良くしよう」と思っているのにもかかわらず、その思いが一致しないこともあったという。制作チームの認識を合わせていくことに苦労した。
それは、社内のマーケティングチーム内の課題でもある。星島さんがまとめるチームでは、メンバー8人がそれぞれ担当のプロジェクトを抱えているため、全員で集まる場をなかなかつくれないのが現状だ。メールで各プロジェクトの進行状況を共有することはもちろん、実際に顔を見てコミュニケーションをとるように心掛けているそうだ。
チームとしてうまく機能するためには、どの仕事をしていても、午後の紅茶ブランドとしての方向性を全員が認識していることが重要だという。「意識のズレやギャップが生まれないように、積極的に声掛けをしていかなければならない」と星島さんは話す。
「優秀なチームメンバーをはじめ、社内外の人たちに支えられて飛躍できた」と16年を振り返る星島さん。しかし、過去最高の販売を達成した喜びもつかの間。17年はさらなる成長が求められる。紅茶市場の活性化を目指して、「日常生活のさまざまなシーンで、紅茶の出番を増やすことにチャレンジしたい」と前を向く。
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