経済・金融のホットな話題を提供。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト
***
アレックス・マチスさんが自宅からほど近いオハイオ州アクロンにプログラミング訓練校があると知ったとき、その宣伝文句にまだ半信半疑だった。3カ月の訓練コースを修了すれば、有給のプログラマー職に就ける可能性があるというのだ。
これまでの人生でコンピュータープログラミングを習ったことはなかった。しかし、マチスさんがその訓練校「ソフトウエア・ギルド」で授業料1万3750ドル(約154万円)の12週間集中コースを修了すると、鉄道貨物向けソフト開発会社バッカイ・マウンテンへの就職が決まった。給料は印刷会社の発送責任者だった前職より10%アップした。
ソフトウエア主導の業務が広がる中、全米の雇用主や教育機関、求職者で構成されるエコシステム(事業者の離合集散)に変化が起きつつある。スキルの格差拡大、中間層の賃金停滞、ミレニアル世代のキャリア志向の後退という重要な要素の絡み合いを背景に、プログラマーなどのIT専門技術者の労働市場に急速な変革が訪れている。
そこに目をつけたのが「コードスクール」と呼ばれる一種の職業訓練校だ。雇用主がいま必要としているソフトウエア開発技術を12週間の集中特訓コースを通じて生徒に教え込むのが売りだ。
グーグルやフェイスブックで「ロックスター」として輝きたい人が行くような場所ではない。現在16人の講師と148人の生徒(対面授業およびオンライン講座)が在籍するソフトウエア・ギルドでは「実習生」と呼ぶ開発技術者の卵を養成している。生徒は経験豊かなプログラマーのチームに加わるのに必要な知識を身につけ、卒業後は企業に入って比較的高いフルタイム給与を受け取りながら訓練を続ける。彼らは飛ぶ鳥を落とす勢いの新興IT企業向けの要員ではない。大半が携わるのは単にビジネスプロセスをコード(プログラム)に置き換え、データを変換し、長年使ってきたシステムを維持・更新するといった仕事だ。
こうした訓練校を把握する数少ない団体の一つ、「コース・リポート」のリズ・エグルストン氏によると、コードスクールの卒業生の数は毎年ほぼ倍増している。2016年の卒業生は約1万8000人。15年に米国の大学でコンピューター科学の学位を取得した卒業生が約6万人だったことと比較すれば、かなりの人数であることが分かる。現在、短期集中プログラミング講座は全米71都市の91校に開設されている。
営利目的の教育機関には当然ながら良からぬ評判もあり、昨年はカリフォルニア州があるコードスクールを営業停止処分にした。コース・リポートによると、コードスクールの授業料は平均1万1450ドルかかるという。
デラウェア州にあるコードスクール「ジップコード」のメラニー・オーガスチン校長によると、同校では卒業後3カ月以内には93%がプログラミング技能を必要とする職に就く。また入学合格率は12%にとどまるとしている。
ヘロン・ジーゲルさんも同校の卒業生の一人だ。彼女は6カ月前(当時23歳)には学位もフルタイムの就業経験もなく、フリーランスのグラフィックデザイナーの仕事が行き詰まっていた。この学校に志願したとき、選別過程でスクリプト言語「ジャバスクリプト」の未経験者向けの簡単な個人指導を受けた。ジーゲルさんは楽しいと感じ、このときキャリアの転機になるかもしれないと直感した。
現在、ジーゲルさんはトロント・ドミニオン(TD)銀行のアシスタント・バイスプレジデントとなり、ITデータアナリストとして働いている。「正直言って、半年前はこの業界にいるとは予想もしなかった」
TD銀行など複数の企業がジップコードの授業内容を助言しており、ある意味では非営利機関のジップコードは、パートナー企業の研修プログラムの外部委託を引き受けていると言える。
ただ、コードスクールは万人向けというわけではない。プログラミングは集中力と問題解決への適性が必要だ。通常、コードスクールは志願者の一部しか入学を認めないが、従来とは違うタイプの志願者も歓迎している。コース・リポートによると、入学者のうち学士号を取得していない人は平均24%。平均年齢は30歳で女性の割合は43%だ。これに対し、従来のコンピューター科学の学生のうち女性は20%に満たない。
ソフトウエア・ギルドを創設したエリック・ワイズ氏によると、同校が教えるプログラミング言語は銀行や保険会社、製造企業などで広く使われているものだが、新興IT企業では時代遅れになっているものだという。
ソフトウエアが広く浸透するにつれ、あらゆる業種で旧式の日常業務をデジタル化するプログラマーが求められている。実際、こうした仕事はデジタル関連の職業経験がない中途転職者の受け皿ともなっている。
労働省労働統計局(BLS)の推定では、20年までにコンピューター関連の労働者が100万人不足するという。直近の報告書はソフト開発者の雇用は今後10年間、全職種平均をはるかに上回るペースで増加すると指摘している。
By CHRISTOPHER MIMS
ただいまコメントを受けつけておりません。