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「眼鏡(JINS MEME)で認知症のない世界を実現する」――。
そう語るのは、眼鏡メーカーのジェイアイエヌで「JINS MEME」プロジェクトのリーダーを務める井上一鷹さんだ。
【2017年1月18日に行われた新サービス発表会でサービスの説明を行う井上さん】
同社は、PCのブルーライトをカットして目の疲れを軽減する「JINS PC」(現・JINS SCREEN)や、花粉症対策に効果的な「JINS 花粉CUT」など、さまざまな革新的商品を生み出してきた。その中でも、特にここ数年話題を集めているのが眼鏡型ウェアラブル端末、JINS MEMEである。
JINS MEMEには3点式眼電位センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーが搭載されており、装着した人の目の動きと姿勢から「身体の状態」を計測できるのが特徴だ。
実はこのJINS MEMEが近い将来、認知症のない世界を実現するのかもしれないという。
●認知症予防のために誕生したJINS MEME
井上さんがジェイアイエヌに入社したのは2012年。もともとは経営コンサルティングの会社で働いていたが、次第に「自分も何かイノベーションを起こせる仕事をしたい」と転職を考えるようになった。そのときの転職活動で出会ったのが同社だ。
「ちょうど『JINS PC』がローンチされて3カ月ぐらいの頃でした。ブルーオーシャン(競合相手のいない領域)に大きな投資ができる社風が魅力的でしたし、眼鏡は身につけるぐらい人と距離が近いものなので、工夫次第で何か新しい市場を作れるかもしれないと思いました」(井上さん)
井上さんは入社した1年後に新しく立ち上がった事業部「R&D室」に配属され、当時はまだ構想段階であった「JINS MEMEプロジェクト」のリーダーになった。同プロジェクトについて井上さんは「もともとセンサーで目の動きを捉えるというアイデア自体は東北大学の川島隆太教授からいただいていました。その頃からJINS MEMEの開発目的は『認知症予防』です」と説明する。
「川島教授は認知症の研究者。研究では、認知症患者と健常者を比べたとき、『目の動きが遅くなる』『重心が少し後ろになる』という仮説をお持ちでした。そこで、川島教授と協力して眼鏡を認知症予防のデバイスとして活用できないかと考えたわけです」
眼鏡に各種センサーを取り込むことで、目の動きだけでなく姿勢(重心バランス)も見える化することができる。また、その人の普段の状態を常に取り続けることができるため、認知症になる前にその傾向を捉えて対策を打つことが可能になるという。
「一度認知症になってしまうと、完治させることのは困難だが、JINS MEMEの活用によって認知症になる前に対策を打つことで認知症問題の根本的な解決策になる」
他にもさまざまなプロジェクトがあった中で、井上さんがJINS MEMEプロジェクトの参加にこだわったのには理由がある。
「高校のときに、祖父が認知症を患いました。身近で認知症患者を見てきたことで病気の過酷さを知りましたし、その経験から大学で認知症の研究者になるために医学部を目指した時期もありました」
その当時はまだ、認知症という言葉も存在しなかった時代。周囲から理解が得られなかったこともあり、結局は理工学部へ進んだという。それから10年後、川島教授と出会い、このアイデアを聞いたときに「これなら認知症予防を実現できるかもしれない。自分の親が認知症になる前に形にしたい」と強く思ったという。
●「眼鏡でデータをとる」を当たり前の社会に
JINS MEMEで認知症予防のソリューションを開発するためには、JINS MEMEの活用を広げて「何をしているとき、どんな状態になるのか」といったデータを大量に集めていく必要がある。しかしどうすれば、多くのユーザーが眼鏡をかけてくれるようになるのか。
井上さんは、まずはさまざまなアプリの提供を通じて「眼鏡で自分の状態を測る」というライフスタイルを提案し、少しずつ広げていくしかないと考えた。
そこで2017年1月に誕生したのが、社員の集中力を可視化して労働生産性の向上をサポートする企業向けサービスだ。JINS MEMEを装着した人の視線移動やまばたきの回数、体軸変化から集中力を計測することができる。集中力が高まる時間帯や業務を見える化させることで、その人に合ったに合った勤務時間帯やポジションを設定するなど、より効果的な施策を打てるようになるという。
「生産性向上は社会のトレンドだが、生産性を図る指標が存在していません。体重計に乗らずに効果的なダイエット方法を見つけようとしているようなものです。まずは『集中力の見える化』から始めて、“常に眼鏡で何かを測ることが当たり前の社会”を作っていきたいですね」
同サービスの正式ローンチは4月以降だが、既に多くの企業から引き合いがあるそうだ。JINS MEMEは集中力ほかにも、精神状態(喜怒哀楽)を見える化するなどさまざまな活用の可能性を秘めている。今後もJINS MEMEならではのサービスを生み出し「最終的には収集したデータを活用して認知症予防の研究を加速させ、世界から認知症をなくすソリューションの開発につなげていく」(井上さん)計画だ。
同社は、JINS MEMEによる認知症予防サービスのローンチ時期については公表していないが、井上さんは「自分の親が認知症になる前に必ず実現したい」と力強く答えた。
(鈴木亮平)
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