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高齢社会に突入したが、その実像はあまり知られていない。「高齢者」と言っても年齢幅は広く、年代の偏りもある。
総務省の報告書(2016年9月15日現在)によれば、65~74歳(1764万人)と75歳以上(1697万人)の人口は拮抗(きっこう)している。75歳以上をさらに区分すると75~79歳が652万人、80~84歳が518万人、85歳以上は527万人。高齢者全体の3分の1近くを80歳以上が占める計算だ。「高齢者」の高齢化が進んでいるのだ。
この傾向は加速していく。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計では、17年には75歳以上人口が65~74歳人口を上回る。その後も75歳以上は増え続け、50年頃には総人口の4人に1人が該当するという。一方、65~74歳は31年まで減少傾向をたどり、いったんは上昇に転じるが41年に1676万人となった後に再び減り始める。
65歳になったばかりの人と、100歳近い人とでは親子ほどの年齢差がある。これを、ひとくくりにして考えるのは無理があろう。労働力不足対策として高齢者の活用が語られるが、企業が求める「比較的若い高齢者」ばかりではないのだ。
むしろ「高齢者」の高齢化による懸念が広がる。例えば医療や介護費用の増大だ。健康は個人差が大きいとはいえ、75歳を過ぎる頃から大病を患う人が増える。
健康であっても若い頃と同じとはいかない。足腰が弱り駅の階段などは障害となる。電車やバスの乗降に手間取る人が目立つようになれば、恒常的なダイヤの乱れとなろう。小売店でも商品説明や支払いに時間がかかる客が増え、効率性ばかりを追い求めては社会は成り立たない。
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「高齢者」の高齢化は、長寿である女性高齢者を増やす。前出の総務省の報告書では男性1499万人、女性1962万人で463万人上回っている。すでに日本女性の約3人に1人は高齢者だ。その“長き老後”の支援が大きな課題となろう。
女性高齢者の増加は1人暮らしの増大にもつながる。国勢調査によれば、65歳以上に占める割合は男性13.3%、女性21.1%だ。少子化や未婚化は進んでおり、今後さらなる拡大が見込まれる。
1人暮らしに関する男性と女性の事情は大きく異なる。最も多い年齢層は男性が25~29歳(29.3%)、女性は80~84歳(28.2%)だ。女性の中で1人暮らし世帯を年代別に比べても70~79歳(19.6%)と80歳以上(19.0%)が上位に来た。高齢になるにつれて増えている。夫の死亡後、独居となる人が多いということだ。
高齢女性には力仕事や役所への書類提出、金融機関での手続きなどを「夫任せ」にしてきた人も珍しくない。まずは、こうした日常生活の支援が急がれる。
だが、生活能力の衰えとともに1人で暮らせなくなるときがくる。住民基本台帳人口移動報告(15年)によれば、女性高齢者の都道府県を越えた移動率は85歳以上で増える傾向が見られる。都会に出た子供との同居や施設入所に踏み切る人が増えるということだろう。
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深刻なのは身寄りがなく、経済的にも窮乏して1人暮らしにならざるを得ない人だ。一概にはいえないが、女性には低年金者が少なくない。国民年金のみだったり厚生年金であっても男性と比べて勤務期間が短かったりして受給額が少ない例は多い。14年度の厚生年金平均受給額は男性が月約16万5000円、女性は約10万2000円だ。老後の蓄えの多くを夫の介護費用に充ててしまったという人もいるだろう。
生活保護などで個別対応したのでは行政コストがかさむ。そこで提言したいのが、政府や自治体主導による低家賃の「特別住宅」整備だ。大都市郊外では家族向けマンションなどの空き家が増えると予想されている。これを一棟丸ごとリニューアルするのも方策だ。医療や介護、生活支援サービスを一元的に提供することによって行政コストを抑えるのである。
金銭面での不安を抱きながら“長き老後”を過ごす人が増えるであろう日本。よほど効果的に政策を講じなければ乗り切ることはできない。(産経新聞論説委員・河合雅司)
引用:高齢者の「高齢化」加速、広がる懸念 「貧しき独居女性」対策急務
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