経済・金融のホットな話題を提供。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ニューヨーク・ブルックリン在住のアシスタントブランドマネジャー、クリス・アウトウオーターさん(26)は快適な生活を送っている。
ネットフリックスがあるため、「ウォーキング・デッド」などお気に入りの番組を見るためにケーブルテレビを契約する必要はない。タクシーが必要な時は、スマートフォンでウーバーの車を呼ぶ。旅行の予約は航空情報検索エンジン「Google Flights(グーグル・フライト)」を使う。
そんなアウトウオーターさんだが、アマゾン・ドット・コムは使っていない。家や会社の近くにいくつも店がある一方、「1人暮らしでルームメートもドアマンもいない」というアウトウオーターさんが家で荷物を受け取るのは大変なためだ。
調査会社カンター・リテールによると、米国の世帯で主に買い物をする人のうち、アウトウオーターさんのようなアマゾン非利用者は全体の約17%を占める。この割合は過去5年一貫して低下しているが、今年アマゾンを使わなかった世帯が約2200万世帯あった。
カンターによれば、アマゾンを利用しない人(世帯)の平均年齢は57歳と、米国の消費者全般の平均49歳より高い。年間所得は4万5700ドル(約532万円)と、全体の6万2800ドルを下回っている。子供がいる人や、子供と住んでいる人の割合は低い。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が全米各地のアマゾン非利用者に聞いたところ、利用しない理由は所得や生活環境、好みや信念などさまざまだった。
だが理由がどうあれ、そうした少数派は減少している。イーマーケターによると、アマゾンの世界ネット通販売上高は米最大で、それに続く米小売業者20社を合わせたネット通販売上高より大きい。また、トムソン・ロイターのアナリスト調査によると、アマゾンの今年の売上高は28%増加し、1370億ドルに達する見通しだ。
ピュー・リサーチによれば、2015年には米国の成人の約80%はスマートフォンを保有していたか、ブロードバンドの契約をしていた。小売りのテクノロジーを提供するラディアルのステファン・ウェイツ氏によれば、ネット通販を避ける人の理由は主に、ウェブサイトにアクセスできないか、荷物を受け取るのが難しい場所に住んでいることだ。
ウェイツ氏は「ウェブへの恐れや不信感は依然かなりある」とし、「なお消費者の80%が、実店舗で見て回って買いたがっている」と述べた。
ロサンゼルスに住むエブ・リチャードソンさん(28)もその1人だ。リチャードソンさんは、アマゾンを最初に有名にした製品カテゴリーである書籍についてはオンラインではなく実店舗で買う方が好きだ。「何か買わなくてはならない時、アマゾンのことは考えない」と述べ、「いずれにしろロサンゼルスで車に乗っていることが多いため、何か必要になったら、家に帰る途中で手に入れる」と説明した。
一方、フロリダ州の元教師メリー・ゲイ・シムスさん(75)はフェイスブックも使っているが、ネットではあまり買い物をしない。
シムスさんはかなり前にアマゾンで友人の著書を買ったことがあり、「速くて簡単だった」と述べた。ただ、「この年齢になると、店に行って買うことが楽しみなのだと思う」という。
ペンシルベニア大学ウォートン校のデービッド・ベル教授によると、アマゾンで買い物をしない理由には、環境に制約があるケースと、あえてそうしているケースの2通りある。
ベル氏は「インターネット接続が必要だが、経済の一部はデジタルデバイドのためにはじき出されている」と述べた。一方、ネット通販は利用するのに品ぞろえ豊富なアマゾンを避ける人は、もっと珍しいという。
セントルイスに住むコンテンツストラテジストのシーナ・タッカーさん(26)は、もともとアマゾンで大量に買い物をしていたわけではないが、2年前に同社と出版社が書籍の価格を巡って対立してからは、原則としてアマゾンを避けている。現在は小売り大手のターゲットや自然食品スーパーマーケットのホールフーズのほか、地元の商店で買い物をしている。ただ、アマゾンの「プライム・ビデオ」は利用している。
豊富な品ぞろえはアマゾンのセールスポイントだが、前出のロサンゼルスのリチャードソンさんにとっては逆かもしれない。
親族用の炊飯器を探していたリチャードソンさんがアマゾンをチェックすると、50を超える選択肢があった。だがリチャードソンさんは品ぞろえで劣るターゲットに行き、1つ選んで購入した。
リチャードソンさんはアマゾンに不満があるわけではないと述べた。利用しないのは、「私の場合は個人の好みのようなもの。復讐(ふくしゅう)ではない」という。
By SARA GERMANO and LAURA STEVENS
□ユーザベース・新野良介社長、梅田優祐社長
企画書や報告書などを作成する際に経済情報を調べるには膨大な時間を要する。経済に特化した情報プラットフォームの必要性を強く感じていた新野良介、梅田優祐の両社長は2008年、ユーザベースを立ち上げ、今年10月に東証マザーズ上場を果たした。同社は“経済情報のグーグル”を目指し、世界進出を視野に事業を進める。
--BtoB(企業間取引)向け情報プラットフォーム事業が売上高の7割を占めている
新野 「金融機関や事業会社向けに経済情報を提供する『SPEEDA』(スピーダ)は世界200カ国、380万社以上の財務、株価データ、地域別の分析リポートのほか、統計データ、経済ニュース、M&A(企業の合併・買収)情報を網羅している。同様の既存サービスと比べて説明書が必要なく、直観的な操作で情報にアクセスでき、使い勝手がよい」
--BtoC(企業対消費者間取引)向けのニュースサービスも運営している
梅田 「スマートフォンに特化した『NewsPicks』(ニューズピックス)は90以上のメディアの経済ニュースを読むことができる。自社編集部のオリジナルコンテンツも配信している。経済情報に特化し、メディアとSNS(会員制交流サイト)を組み合わせ、有名アナリストら、多くの専門家がコメントを寄せている。このためニュースを多面的に理解できることが特徴だ」
--業績は
梅田 「スピーダの海外展開とニューズピックスの立ち上げに投資したため、営業損益が13年12月期から赤字になったが、今期は通年で黒字化する見込みだ。スピーダは、しっかり利益を生み出す高収益事業になった。ニューズピックスは、ようやく黒字化の見通しが立ってきたところだ」
--社長は2人体制だが、意思疎通に問題はないのか
新野 「創業時からわれわれ2人に加え、稲垣裕介最高執行責任者(COO)を加えた3人の創業メンバーで役割分担を明確にして、最適な業務遂行をしている。1人だとカバーできる範囲は限られるが、分担することで経営のスピードが上がる。何でも話し合うが、これまで物事が決まらず、会社が動かないということはなかった」
--ミッションに「経済情報で世界をかえる」を掲げている
新野 「スピーダは経済情報に特化したデータベースで国内トップクラスのシェアを得ている。次は世界市場でアジア情報に特化した経済データベースとしてナンバーワンを目指す。将来、欧米に進出する場合、アジア情報が充実していることは、明確な差別化のポイントになる。一方のニューズピックスは米国進出に向けて、準備に入っている」
浜松商工会議所のロボット製作チームが企画した浜松市のマスコットキャラクター「出世大名家康くん」が11月初頭、お披露目された。高さ75センチ、重さ20キロのロボットで、足元の駆動部品で自走するほか、音声認識の機能も搭載し、あいさつなどの会話もできる。浜松商工会議所は、今後の成長が期待できるロボット産業を育成しようと、加盟企業から有志を募り、開発を進めてきた。製作期間はわずか5カ月。この困難なプロジェクトで中心的な役割を果たしたのが、自動車部品の試作などを手掛けるエム・エス・ケーだった。
エム・エス・ケーは、自動車部品の試作品専門メーカーだ。精密板金や機械加工、ダイカスト、プレス成形、紛体造形といったさまざまな金属加工技術を駆使。シートの製作や樹脂の加工などに対応する設備やノウハウも有している。「二輪車のフレームならまるごと作れる」(松浦譲エム・エス・ケー代表取締役)ほどだ。その技術とノウハウは、ロボット製作にも発揮された。「短時間で作り上げるため、設計データを基に粉末造形で直接本体を製造した。金型などを作らなくても、これぐらいのものなら問題なく製造できる」(同)
同社の本業は、試作品の製造。自動車工場の海外移転などはあっても、試作は日本で行われることから、当面は仕事がなくなることもなさそうだ。とはいえ、品種の減少や開発周期の延長などもあり、自動車メーカーからの部品試作依頼は減少傾向にあるという。
そこで、最近では農機メーカーから農機の部品試作を受注するなど、業容拡大も探っている。部品単体の試作ではなく、複数の部品で構成するモジュールで受注するといった取り組みも進めている。3D(3次元)データへの対応も強化しており、部品試作の底固めには余念がない。
これと並行し、今後はこれまで手掛けていない分野についても、事業の可能性を探っていきたいという。「出世大名家康くん」はその契機になった。
「作れるとは思ったが、実際に作ると自信にはなる」(同)
しかし、課題がある。「うちはある意味ではなんでも作れる。しかし、設計ができないし、市場を見極めたりするのも難しい」(同)という。そこで考えられたのは、いろいろな技術を持った企業が集まって取り組む、というまさにロボットプロジェクトのようなスキームの構築だ。
「専門性の高い中小企業も、集結すれば大企業並みにいろいろなものが作れる。今後も機をみては、こういった新しいものにも挑戦してみたい」(同)
エム・エス・ケーの挑戦には、ものづくり企業が多い浜松らしさを感じるが、実は多くの専門性の高い中堅・中小企業にもあてはまる戦略といえそうだ。
引用:車部品試作技術でロボット製作 エム・エス・ケー「出世大名家康くん」
「やよい軒」「ほっともっと」など外食チェーンを運営するプレナスは12月27日、店舗運営にビッグデータ分析を導入すると発表した。顧客の嗜好の多様化や少子高齢化など環境の変化に対応する考えだ。
【画像】Test & Learnの詳細
分析には、施策と成果の因果関係を特定できる、米APTのクラウドソフトウェア「Test & Learn」を使用する。プレナスは同ソフトを使用して、メニューの改善、新商品の導入、各種プロモーション、店舗の改装や移転、スタッフのトレーニングなどの各施策と、POSデータの関連性を分析。売り上げに影響した施策を特定し、戦略の改善につなげるという。
9月から4カ月にわたって実施したトライアルでは、TVCMを活用したマーケティング施策が効果的との結果を得たという。今後も継続的にビッグデータ分析に取り組み、ブランドの成長を図るとしている。
異常気象や農薬の過剰使用によって農産物のリスクが高まるなか、JXエネルギーが人工光型植物工場と抗酸化物質「グルタチオン」を組み合わせた野菜栽培の実証実験に乗り出した。植物工場事業運営会社、スプレッド(京都市)と岡山県農林水産総合センター生物科学研究所(RIBS、同県)と共同で、グルタチオンの効果的な投与方法を検証し、気候に左右されずに世界中のどこでも安心・安全に野菜が栽培できる技術の確立を目指す。
グルタチオンは3つのアミノ酸が結合した物質で、植物の光合成を活性化させる作用がある。投与する量や期間によって効果が変化するのが特長。グルタチオンを使った実験では、RIBSがジャガイモなどの露地栽培で収穫量を最大4割程度増加させることに成功している。
実証実験での3者の役割は、RIBSでレタスを栽培する際のグルタチオンの投与方法について複数のパターンを設定。その後、スプレッドが保有する照射や気温、湿度などを完全に制御できる植物工場で実際にグルタチオンを投与してレタスを栽培、生育結果のデータを取っていく。その後、JXがこれらの実験で得られた実証データの分析や経済性の評価を行う。
JXはバイオ事業に20年以上、取り組んでおり、サケやマスなど養殖魚の色調改善に用いられる赤色色素であるアスタキサンチンの開発に成功している。今年1月には飼料・健康食品の「ニュートリション」分野を重点領域に選定し、第1弾としてグルタチオン研究に乗り出した。JXの担当者は「この検証が成功すれば世界初の事例となり、高い将来性を期待している」と話す。
近年、ゲリラ豪雨や猛暑などの異常気象が頻発し、食料の供給リスクや農薬の過剰使用による人体影響、土壌汚染リスクなどの不安定要素が増える中、脚光を浴びる人工光型植物工場とグルタチオンを組み合わせることで「食の安心・安全・安定」を確立させ、世界の農業・食糧問題解決につなげたい狙いがある。
引用:JXエネルギー、人工光型植物工場実験 抗酸化物質を利用し野菜栽培
矢野経済研究所はアフィリエイトサービス事業者やポイントサイト事業者などを対象に、アフィリエイト市場に関する調査を実施し、その結果を12月13日に発表した。調査期間は6月から10月にかけて。
アフィリエイトとは、ブログやホームページなどに広告を表示し、閲覧者がその広告を経由して会員登録や商品の購入などを行うと、そのブログやホームページの運営者に報酬が支払われる広告サービスのこと。市場規模の算出では、アフィリエイトの広告費(成果報酬額)のほか、手数料や諸費用を合算した。
アフィリエイト市場は、EC市場の拡大とスマートフォンの普及を背景に拡大しており、2015年度の市場規模は前年度比16.4%増の1,740億2,000万円で、2016年度は同15.3%の2,006億5,000万円まで成長する。アフィリエイトの費用対効果が高まることで、広告主1社当たりのアフィリエイト予算が拡大するほか、中小規模の広告主のアフィリエイト利用の広がりなどが期待されており、同市場は2020年度には3,500億円に達すると予測されている。
そんな中、「フリーキャリア総研」を運営する株式会社もしもは、「ネット副業サービスの認知度&利用意向」に関する調査を実施し、その結果を10月19日に発表した。調査期間は9月7日から14日で、1,058名から有効回答を得た。
ネットを使って収益を得るサービスの認知度を聞いたところ、「知っている」が57%で、「知らない」の43%を上回った。「知っている」と回答した人に、知っているカテゴリを複数回答で聞いたところ、「アフィリエイト」が40.8%で最も高く、「クラウドソーシング」(32.9%)、「広告配信」(21.4%)、「ハンドメイド販売」(20.8%)と続いた。
アフィリエイトを含めたネット副業サービスの利用意向を聞いたところ、「現在利用している」が14%で、「今後利用してみたい」が33%となった。コメント欄には、「家にいながら仕事ができるから」「副収入として生活の足しにしたいから」「現在の仕事とは違った自分も見つけたい」などがあり、副収入を得ること以外にも魅力を感じている人が多かった。一方、53%の人が「利用したくない」と回答し、コメント欄には「安全性に不安がある」「仕組みが良くわからない」「裏がありそうで怖いから」などがあった。
アフィリエイト市場の拡大に伴い、副業として魅力を感じる人も増えている。しかし、漠然とした不安を抱いている人も少なくないようだ。
引用:アフィリエイト、2020年に3,500億円まで拡大予想 副業としても認知、「今後利用してみたい」33%
『A列車で行こう』シリーズは、アートディンクが制作する鉄道会社経営ゲームだ。鉄道好きのゲームファンにはおなじみのタイトルである。第1作は1986年に富士通製PC「FM-7」用ソフトとして販売された。その後NEC製の「PC8801」シリーズ、シャープ製の「X1turbo」シリーズなどに移植された。
【ゲーム開始時は単線で運行本数が少ない】
当時はWindowsのような共通のOSがなく、各社から独自仕様のPCが発売されていた。人気ゲームは複数のPCに移植された時代だ。その後の30年間で、任天堂のファミリーコンピュータ、ソニーのプレイステーション、iアプリ版など他機種に展開している。PCだけではなく、家庭用ゲーム機版もあったから、現在も幅広い年代層にファンがいる。
私も本シリーズのファンで、Windows版の『A列車で行こう7』からガイドブックの制作にもかかわっている。『みんなのA列車で行こうPC』も同様だ。だから今回はちょっと宣伝めいてしまうけれども、本作のおもしろさに実際の鉄道のおもしろさを重ねて紹介したい。
●「小林一三方式」を再現するゲーム
A列車で行こうと続編の『A列車で行こうII』は、現在のよう町作りゲームではなかった。画面の下に起点の駅があり、1本の作業用列車と複数の旅客列車と貨物列車がある。当時のグラフィック性能でリアルな列車を描けるわけはなく、列車は○マーク、線路は1本線だ。機関車には番号が描かれ、作業用列車はAと書かれていた。これがA列車だ。
A列車は進んだ方向に線路を敷く機能がある。線路を敷くためには資金と資材が必要だ。A列車が線路を延ばし、駅を作り、客車と貨車を誘導する。貨車は建設資材を運び、客車は旅客を運んで運賃を得る。A列車は旅客列車や貨物列車のために線路を敷きつつ、画面の上へと進んでいく。最上部には首都の駅がある。そこに線路をつないで、起点駅付近で待機していた大統領列車をここまで走らせればクリア、というルールだった。
資金稼ぎという意味では経営的要素もあるけれど、列車は走りっぱなし。A列車以外は操作できないから、各列車を衝突しないようにA列車を操作するというパズル的な作品だった。ただし、旅客列車が駅に停車すると、駅の周辺に建物が増えるという要素はこのころからあった。
A列車で行こうシリーズの転機は1990年のシリーズ第3作『A.III.』だ。大統領を運ぶ使命はなくなり、当時大人気だった『シムシティ』のような町作りゲームに変わった。画面は斜め見下ろし視点となり、このアイデアは後のシムシティに影響を与えた。
シムシティは土地の区画に用途を指定し、発展を促すゲームだった。これに対してA.III.は、「線路を敷き列車を走らせる」「列車の乗客が発生する」「乗客数に応じて建物が増える」「列車の乗客数が増える」という循環を作って街を発展させるゲームだ。初代・A列車で行こうの「駅周辺の建物が増えていく」という部分を抜き出した経済的なゲームとなった。
A.III.ではプレーヤーが鉄道会社の社長となり、鉄道を建設していく。しかし、原野に鉄道を敷いただけでは乗客は集まらない。都市も発展しないし儲(もう)からない。そこで、子会社を建設する役目もある。ターミナル付近に商業ビルを建てる。郊外の駅周辺に住宅を建てる。住民が通勤するための工場を作る。こうして沿線を開発し、鉄道の利益と都市の発展を目指す。
A.III.以降のA列車で行こうシリーズは、一部の番外編的タイトルを除いて、この「鉄道建設と都市開発」という遊び方が基本だ。鉄道を敷き、その需要を喚起するために住宅、商業、レジャー産業を手掛けるという手法は、阪急電鉄の創始者、小林一三が発明した手法であり、後の日本の私鉄に大きな影響を与えている。
A列車で行こうシリーズは小林一三シミュレーターであり、このアイデアは実に日本的と言える。海外にも鉄道会社経営ゲーム『レイルロードタイクーン』シリーズがある。第1作はA.III.と同じ1990年の発売だった。しかし、レイルロードタイクーンは「需要地と供給地を効率良く結ぶ」に主題があり、ライバルの鉄道会社を倒産させるか買収するなどして、資産の順位でトップに立つという目的だった。
レイルロードタイクーンは、欧米で1840年代から始まった鉄道狂時代を再現し、鉄道建設と投資の駆け引きを楽しむゲームだった。これはこれでおもしろい。新作を遊びたいけれども、2006年の『シド・マイヤー レイルロード!』でシリーズが途絶えている。残念だ。
●列車の運行を極めると実際の鉄道に近づく
列車を効率よく運行し、都市を発展させ、沿線の需要に応えていく。それは実際の鉄道も、A列車で行こうシリーズも同じだ。適切なタイミングで、大量の列車を運行するにはどうしたらいいか。最新作のみんなのA列車で行こうPCで再現してみよう。
単線と複線の輸送力の違い
単線では2つの駅間に1本の列車しか入らない。これが複線になると双方向で続行運転が可能になり、列車を増発しやすくなる。ただし、実際の鉄道では複線にも閉塞という安全システムがあり、列車の運行間隔が保たれる。ゲームはそこまで再現していないから列車を詰め込める。
2つの駅を単線で結ぶ
駅間が長いほど列車の通行時間も長くなるため、列車の数は少なくなる。しかし、山の中など駅を設置できる場所ではない。そんなときは信号場を作り、列車のすれ違いのための停車を行う。これは特に北海道の幹線で見られる情景だ。
交差支障を解消する
複線の終端駅では、すべてのホームに列車を発着させて、発車時の進行方向を整理するために分岐器を置く。これを駅の手前に置くと、発車する列車と到着する列車が鉢合わせするため、スムーズに運行できない。この鉢合わせ状態を交差支障という。
鉢合わせを避けたダイヤを設定すると運行間隔が制限される。交差支障を解消する方法として、駅の後方に引き上げ線を用意する。駅の後方でも交差支障は起きるけれども、乗客を乗せた列車が駅の手前で待つ状態は減り、運行間隔を短くできる。
急行運転を活用する
大都市を結ぶ路線の中間に駅を作る場合、すべての列車を停めると、大都市間の乗客にとっては所要時間の増加になる。そこで、既存の列車は中間駅を通過させて輸送量を維持し、中間駅に停車する各駅停車を増発する。急行運転の始まりだ。中間駅を増やしていくと、各駅停車の後方で急行列車が詰まってしまうので、途中の駅で追い越しを行う。
A列車で行こうシリーズは乗客を遠くへ運ぶほど、キロメートルあたりの運賃が高くなる。これは実際の鉄道とは逆だ。鉄道運賃は遠距離低減型で、長距離きっぷになるほどキロメートルあたりの単価は安くなる。A列車で行こうでは乗客を遠くへ運んだほうが儲かる。実際の鉄道はどうかというと、長距離高速列車は特急料金をいただいて、旅客の単価を上げるわけだ。
長編成の列車がいいとは限らない
大量に旅客を運ぶためには長編成の列車がいい。しかし長編成列車にも欠点がある。列車が長くなるほど、分岐器の通過に時間がかかる。複線の終端駅で交差支障が発生する場合、長編成の列車同士だと交差支障の時間が長くなる。単線の駅のすれ違いも同様だ。成田線の空港支線の信号場や、川越線の単線区間のすれ違いは時間がかかる。列車が長く、分岐器の通過速度が遅いためだ。
単線に長編成の列車を走らせると効率が悪い。短い列車をたくさん走らせたほうがいい。しかし単線だから増発には限界がある。この場合は部分的に複線を作り、なるべく複線区間ですれ違うようにダイヤを設定する。ゲームでそこまでやると面倒だけど、実際の鉄道でも部分的複線の事例はいくつかある。
長編成と短編成
単線の場合は前述のように、列車の運行本数に制限があるから、輸送量を増加させるためには長編成化で対応する。しかし複線区間の場合は、10両編成を30分間隔で走らせた場合と、5両編成を15分間隔で走らせた場合の運行コストは同じ。そうなると、短編成で運行回数を増やしたほうが乗客の乗車機会は増える。
もっとも、これはゲームの場合で、実際の鉄道では運転士の人件費などがあるから、運行コストについては短い編成のほうがちょっと割高だ。それでも大きな差がないのであれば、あるいは乗務員の数に余裕があるのであれば、短編成で運行回数増の対応が正しい。これは国鉄時代に広島・岡山地区で行われた。その後大幅な減便も行われるなど試行錯誤が続いているようだ。東海道新幹線はすべて16両編成だけど、山陽新幹線は短い編成の列車も多い。これも、短編成で運行回数を増やす施策である。
通勤電車は満員のほうが嬉しい
どこかの大都市の首長が「満員電車ゼロ」などと公約したらしいけれど、とんでもない話だ。極悪非道な鉄道経営者の私は、通勤電車の乗車率が高いほど嬉しい。満員電車が最も儲かるからだ。ただし、満員電車を走らせた場合、ホームにお客さんを積み残しているかもしれない。そのお客さんが列車を諦めてしまうと機会損失になる。これは看過できないから、ほどほどの混み方になるように増発しておく。
ゲームでは痴漢は発生しないし、気分が悪くなる乗客もいない。スマホ歩きで線路に落ちる乗客もいない。これらは満員電車よりやっかいだ。やっぱり満員電車は利用客の幸せにならない。実際の鉄道会社にはこんな極悪な経営者はいないと信じたい。
赤字路線を生かすか殺すか
赤字路線がある場合、ゲームでは沿線に子会社を作り、住民増を狙う。それができなくても、会社全体で黒字であれば放置だ。廃線は簡単だけど列車や線路の撤去が面倒だ。実際の鉄道ではどうか。沿線の開発に期待できれば残したい。しかし、人口増の期待が薄く、会社全体の業績も思わしくなければ……。
こうした知識があれば、A列車で行こうシリーズで遊ぶときに役立つ。逆に、A列車で行こうシリーズで遊んで工夫していくと、実際の鉄道の仕組みに納得できるかもしれない。これは鉄道ゲームに限らず、他の分野でもあり得る。
私は飛行機関連ゲームの『ぼくは航空管制官』シリーズも好きだ。このゲームのおかげで「飛行機が発着する滑走路と風向きの関係」などを理解し、実際に飛行機に乗るときの楽しみが増えた。iPhoneのアプリでは『Air TYCOON ONLINE』という航空会社経営ゲームもあって、2年ほど飽きるほど遊んで飽きた(笑)。
経営シミュレーションなどの職業系ゲームは、実生活に関連した知識が身に付く場合も多く、それも楽しみの1つだ。もっとも、遊んでいて仕事をする気分になってもつまらない。ゲームメーカーの絶妙なバランス感覚が、おもしろくて役に立つ体験を作る。職業系ゲームは大人のためのキッザニア(職業体験テーマパーク)だ。
(杉山淳一)
――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト
***
2016年が終わりに近づく今、世界で最も価値ある企業7社のうち5社が――上位3社を含め――IT(情報技術)企業となっている。投資家の目から見た価値だけではない。アップル、グーグルの親会社アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックは日常生活にも大きな影響力を持っている。今やテクノロジーから逃れることはできないようだ。
それゆえ、2016年はこうした企業の多くにとって難しい年でもあった。IT企業は総じて世間の辛辣(しんらつ)な批判や前例のない厳しい監視の目にさらされるとともに、次期米大統領や世界各地の政府と衝突した。
例えば、2016年は米国のデジタル広告費がテレビ広告費を侵食すると見込まれていたが、その一方でフェイスブックは、政治に対する影響力や虚偽または曲解されたニュースの拡散に果たした役割を巡る懸念への対処を迫られた。この2つの出来事は偶然起こったことではなく、いわばコインの表と裏だ。つまり、フェイスブックの影響力の表れだ。
アマゾンの新たなレジ不要の店舗「アマゾン・ゴー」もそうだ。これは、たちまち自動化による雇用の「喪失」を象徴する出来事となった。アマゾンは一握りの実店舗しか持っておらず、アマゾン・ゴーの一般公開は来年以降とはいえ、オンライン小売りにおけるその支配力は国民の大きな懸念の種となっている。
グーグルにとっては売上高・収入共に好調な1年となったが、現実世界での影響力拡大に伴う代償もあった。その1つが、欧州連合(EU)規制当局に競争法(独占禁止法)違反で3つの容疑をかけられたことだ。EU当局はグーグルをネット上のいわば「植民地大国」とみなしている。4月に送付された違反を通知する「異議告知書」では、基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンのメーカーに対し、グーグル製品を規定の検索エンジンに設定するよう「要求していた」疑いが指摘された。
2016年の大統領選では、IT企業幹部が負けたヒラリー・クリントン氏を圧倒的に支持する一方で、勝ったドナルド・トランプ氏はIT企業幹部を公に、そして時には個人的に攻撃した。その関係者の多くが先週、トランプタワーで会談し、ひとまずは休戦に至ったようだ。しかし、IT企業の多くは自由貿易や移民に関するトランプ氏の見解を懸念し、依然、今後4年を慎重に見ている。
文化的・経済的に大きな力つけたIT企業
そもそも、こうした意見交換が行われたこと自体がIT企業の文化的・経済的支配力の大きさを物語っている。問題は単にiPhone(アイフォーン)がどこで製造されるのかということではなく、グローバル化が米国の中流階層にもたらすものは、経済的利益なのか苦境なのかということだ。IT企業は創造的破壊、すなわち大きな犠牲を払っても進化を優先させるという共通の文化を受け入れるようになっている。しかし、トランプ氏の大統領選出は、ある意味、そうしたイデオロギーに対する強い反発と言える。この争いの結果は、自動運転車などの創造的破壊を伴うテクノロジーから環境にやさしいエネルギーへの移行まで、あらゆる面で規制当局の姿勢に影響することになる。
IT企業の上場は低調が続いているが、今年もその状況はほとんど変わらなかった。このことは特筆に値する。今の時代、あらゆる新興企業がIT企業を自称している。にもかかわらず、IT企業によるIPOが低迷しているということは、IPO全体が低迷していることを意味するからだ。
一握りの法人向けIT企業は上場したが、配車サービスのウーバー・テクノロジーズや民泊仲介サイトのエアビーアンドビー(Airbnb)などの大物は静観したままだ。当初は筆者もご多分に漏れず、こうした企業がIPOに消極的なのは、そのビジネスモデルが一般投資家の批判的な目にさらされるのに向いていないと彼らが考えているためだとみていた。しかし、こうした企業について知れば知るほど、彼らが上場しようとしないのは、単にその必要がないからだということが分かってきた。
こうした企業は、実質ほぼ無限の資本を利用できる。その一因は、2008年の金融危機後に資本が世界中に流れたことにある。より良いリターンを求める機関投資家が、こうした企業の後期の資金調達ラウンドに押し寄せ、彼らの価値を押し上げている。2017年について1つ期待できそうなのが、メッセージアプリ「スナップチャット」を手掛ける米スナップが予定しているIPOだ。IPOに踏み切るのは、ベンチャーキャピタルの支援を受ける企業価値10億ドル以上の新興企業では例外で、注目に値する。
最も時価総額の高いアップルはどうか。同社は2015年10-12月期(16年度第1四半期)決算が過去最高となったが、2016年通期は2001年以来初の減収となった。今回はアップルもとうとう万策尽きたと指摘するアナリストもいる。しかし、腕時計型端末「アップルウオッチ」の売り上げは好調とみられ、ワイヤレスイヤホン「AirPods(エアポッド)」は新たなカテゴリーのウエアラブル端末になる可能性を秘めている。
このことは重要だ。なぜなら、中国企業が他社の受託生産から自社のブランド作りに事業を移行する中で、アップルは米国のイノベーション(技術革新)力と同義語になっているからだ。
時価総額世界一の企業として、アップルは米国の並外れたイノベーションを推進する旗手となっている。アップルがつまずけば、米国もつまずくことになる。
そして、それこそがまさに2016年のITのテーマだった。つまり、わずか20年前は負け組や強気の新興企業にすぎなかった多くの企業が今や既存勢力であり、新進の独占企業であり、支配者となっている。われわれは彼らを恐れる一方で、頼りにするようにもなっている。彼らの存在が至る所に感じられることに悩みながらも、彼らを自分たちの生活に広く入り込ませてもいる。そして、彼らの行動や発言をみると往々にして、彼らは自分たちの重要性を認める覚悟がまだできていないように見受けられた。
By CHRISTOPHER MIMS
【深セン(中国)】ドナルド・トランプ次期米大統領がアップルなどの米企業に対し、海外ではなく自国の工場で製造するよう圧力をかけている。この動きは世界屈指のハイテク産業集積地となっている中国の深センにとって、脅威となるはずだった。
一昔前まではのどかな漁村だった深センは今、中国最大の輸出品である家電製品の一大拠点だ。台湾の鴻海科技集団は同地で二つの工場を運営し、約23万人の従業員がアップルなど世界の大手メーカー向けに製品を作る。そのうちの1社、スマホメーカーとして世界3位の華為技術(ファーウェイ)も本社を深センに置く。
しかし現地企業の幹部の多くが、トランプ氏の発言を気にしていないと一蹴する。貧困にあえいでいた深センには今や、複数の高層ビルが建つ。各工場の製造工程は改善され続け、設計、製造、そして出荷まで効率化された。仮にトランプ氏が中国からの輸入品に関税をかけたとしても、へき地を大都市に変えた経済力はその程度のことに影響を受けないというのが彼らの考え方だ。深センに工場を持つある世界的なメーカーの上級幹部は、「騒音は気になる」としつつも「関税についてのことは心配していない」と話す。
トランプ氏の政策以上に深センの企業を不安にさせているのが、グローバルで進む製造業の進化競争に勝ち抜けるかどうかだ。深センはグローバリゼーションの果実を享受している方だが、米国でトランプ氏が反転させようとしているのと同種の競争圧力にさらされてもいる。
2010年から賃金上昇が続く中、一時は栄えていた衣料産業や玩具工場がより安い人件費を求めてベトナムなどへと移っていた。一部の家電メーカーにも後を追う動きが見られる。人権費を抑えるため、工場でロボットを導入する企業もある。
深セン・ワンダテック社のエミリー・ウー氏は、「あまりにも競争が激しい。アマゾンでも割安製品が多過ぎる」と嘆く。同社はアマゾンなどで売られるブランドのカメラを月に4万台製造するが、経営は厳しい。人件費の上昇に伴い、赤字覚悟で製造の注文を受けることもあるという。
トランプ氏は選挙期間中、アップルは米国内でコンピューターなどを製造するべきだと発言し、その後はアメとムチを使って製造業の米国回帰を実現しようとしている。これを受け、アップルのサプライヤーであるフォックスコンは米国内での製造を拡大する可能性に言及した。
しかし、こうした動きが実現したとしても、それがどの程度の雇用を生みだし、米国内で具体的に何が製造されるのかは不透明だ。フォックスコンが現在進めているのはロボットを使った工場の自動化だ。同社は具体的な顧客名や事業計画ついてはコメントはできないとしている。
「これらの雇用が米国に戻ったとしても、実際に雇われるのは自動化された工場で1000体のロボットを操作できるような人たちだ」と指摘するのは、北京大学で財政学を教えるクリストファー・ボールディング教授だ。「仕事を得ることになるのはトランプ氏に投票した層ではなく、コンピューターに詳しい人たちになる」
*この記事は後編に続きます(有料)>>
By JOHN LYONS
最新キャズム理論はデジタルテクノロジーを生かして、自社のビジネスを変革し、収益を生み出す上で、役立つ考え方だ。連載第2回まで、キャズム理論の概要と、その最新動向について紹介してきた。
【その他の画像】
ところでキャズム理論は、シリコンバレーにある多くのスタートアップ企業で磨き上げられ、発達してきた方法論だ。日本企業は老舗の大企業が多い。それもあって、「キャズム理論の考え方を日本企業でそのまま活用するのは難しいのではないか?」と思われがちだ。
実際にはキャズム理論は誕生から25年を経て、今や米国でもGEのような125年の歴史を持つ大企業で活用され始めている。日本企業は老舗の大企業が多いといっても、GEよりも大きなところはごくわずかだ。その米国を代表する老舗の大企業GEでも、デジタル変革を乗り越えるべくキャズム理論を活用しているのである。
そしてキャズム理論は、GEのような米国大企業で蓄積されている経験をフィードバックして着々と進化している。その経験は、日本企業にとっても参考になることが大きいはずだ。
デジタル変革は「やるべきかどうか?」という選択肢ではなく、いまや「いかにやるか?」という段階である。日本企業にとっても、対岸の火事ではない。
筆者はキャズム理論による企業変革を支援するキャズム・インスティチュートでマネージング・ディレクターを務めるマイケル・エックハート氏と意見交換する機会を得た。エックハート氏は、「キャズム理論を活用することにより、次の10年間、日本企業はより高い成長ができる」と断言する。
意見交換の後、筆者も同じ考えを持った。そこでこの意見交換で得られたことと筆者の考えを、皆さんと共有したい。
●老舗の大企業GEの取り組みから学べること
デジタル変革に対応するために、デジタル技術やデジタルマーケティングに詳しい人材を採用したり、技術特許を取得しようとする企業が多い。
しかしこれだけでは、キャズムを超えて収益を生み出すというデジタル変革の目的を達成することはできない。ビジネスモデルをつくりあげていくことが必要だからだ。経営陣だけが頑張っても、中間管理職や技術者だけで取り組んでも、成功しない。キャズムを超えるためにはチームをつくり、既存組織ではなく、別組織をつくって取り組むことが必要だ。
日本の伝統的な組織体制も見直す必要がある。例えばかつての大量生産・大量販売の時代は、日本企業の「系列モデル」は大きな力を発揮していた。系列モデルとは、大企業を頂点として、子会社・孫会社が下に連なるという垂直統合モデルだ。しかしこれは排他的な組織体制なので、デジタル変革では十分に機能しない。世の中で得意な分野を持つさまざまな企業が集まってきて、お互いに強みを生かし合って協業するような、オープンなモデルに変えていく必要がある。
ここで参考になるのがGEの変革だ。かつてはGEも、日本と同じ垂直統合の組織だった。しかし今、大きな変革の真っ最中である。
GEは企業向けに「PREDIX」という新しいサービスを立ち上げようとしている。これは数多くの産業用機器を展開している企業に、それらの産業用機器が生み出す膨大なデータを蓄積・分析して、機器の故障を予測したり、稼働率を高めたり、効率を最適化するサービスだ。GEはPREDIXを含む全体の取り組みを「インダストリアル・インターネット」と名付けている。
GEはこのPREDIXを、あたかもアマゾンのマーケットプレイスと同じような形で、企業がすぐに簡単に使えるように提供しようとしている。アマゾンが小売分野で消費者に深く入る込むために成功させたモデルを、GEは法人産業分野で企業の中に深く入り込むために実現しようとしているのである。ほんの10年前だったら、GEがアマゾンのモデルを真似るなんて考えられなかった。しかし現実に巨人GEが全社を挙げて実践しているのだ。
実際には、デジタル変革はまだ初期段階だ。GEのように先行している欧米企業も取り組んでいる最中である。そしてこのデジタル変革は3~5年かかる。日本企業でもソフトバンクのように取り組む企業が出てきている。多くの日本企業も、今から取り組むべきだが、とはいっても日本企業はなかなか取り組むのが難しいという現状がある。それらの課題を考えてみたい。
●課題1:コンセンサスによる意思決定の問題
1つ目の課題は、根回し・合議制による意思決定の問題だ。
キャズムを超えるには、「顧客の痛み」にフォーカスを絞り込むことが必要である。連載第2回で紹介したように、ドキュメンタムは75分野まで幅広く手を広げていたが伸び悩んでいた。そこで思い切って73分野を捨てて2分野に絞り込むことで、キャズムを超えて大きく成長した。
GEも全社を挙げて新たにインダストリアル・インターネットに取り組む際に、金融事業は収益性が高かったにもかかわらず、新たな取り組みではシナジー効果を生み出さないという理由で、他企業に売却した。
しかしトップダウンによる意思決定スタイルが主流の米国企業とは異なり、日本企業の意思決定スタイルは合議制によるコンセンサス重視だ。時間もかかるし、ともすると折衷案に陥りがちで「捨てる」という意思決定がなかなかできない。だから特定の「顧客の痛み」にフォーカスを絞り込めないのである。
この対応策は、まずは企業全体ではなく、事業部単位で、かつスモールチームでやっていくことだ。数万人の組織全体でやるのではなく、数人から100人程度の組織を切り出して、このチームが迅速な意思決定をしながら取り組む。場合によっては、オフィスも別の場所にする。残りの大多数の人たちは既存事業を継続する。そのような組織を社内にいくつもつくり、その中で成功した事業を主流ビジネスに育てていく。
将来的には、日本のコンセンサスと折衷案に基づく意思決定形態は変えていく必要があるだろう。変化が激しいデジタル時代では、遅れを取ってしまうし、折衷案ではフォーカスを絞り込めないからだ。
●課題2:投入する人材の問題
2つ目の課題は、新規ビジネスに投入する人材に関する問題だ。
エックハート氏は「経営トップから、『最高の経営人材を投入してプロジェクトを始めることにしたよ』と言われると、正直に言って不安に感じてしまう」と語っている。これは日本企業で新規事業を立ち上げる際にも起こりがちな問題だ。
実は成熟した既存の事業分野で優秀な管理をする経営人材は、新規ビジネスでは最悪の管理を行いがちだ。既存ビジネスに必要なスキルと、新規ビジネスでキャズムを超えるために必要なスキルは、異なるのだ。
営業人材も同様だ。成熟した既存事業の場合は、営業活動では個別取引をいかに数多く効率的にこなすかが重要だ。しかし新規ビジネスでキャズムを超えるためには、こなす数や効率よりも、むしろ個別に顧客の課題を深く理解した上で商品・サービスをカスタマイズしていくコンサルテーションが営業活動では必要になる。求められるスキルが異なるのだ。
メジャメント(業績などの評価方法)も異なる。既存ビジネスでは利益重視なのでコスト削減も必要だ。新規事業でも利益が重要だが、投資段階なので過度に利益を重視すべきではない。
既存ビジネスを維持し伸ばしていく人材と、新規事業に投入する人材は、わけて考えるべきなのだ。
●課題3:コアコンピタンスをいかに生かすかという問題
3つ目の課題は「企業の強み」、つまりコアコンピタンスの活用に関する問題だ。
キャズム理論はシリコンバレーのスタートアップ企業で生まれた方法論だ。スタートアップ企業では、過去のビジネスで企業の中に蓄積されたコアコンピタンスがほとんどない。強みはゼロからつくるという発想であり、買収という選択肢もある。一方で多くの日本の大企業は、過去の膨大な経験の蓄積に基づいたコアコンピタンスを持っている。キャズム理論ではコアコンピタンスをどのように考えればよいのだろうか?
最初に考えるべきは、「企業の強み」と「製品の強み」をわけて考えることだ。例えばかつてのコダックの写真フィルム、あるいはかつてのIBMの大型コンピュータといった製品は、新しい技術の登場で陳腐化してしまった。製品面の強みは陳腐化してしまうのだ。
既存ビジネスにおける製品の強みを分解・分析した上で、新規事業でいかに生かすかを考えるべきだ。参考になるのが、GEの事例だ。
GEは伝統的に産業用機器、例えば医療機器・ジェットエンジン・発電所のタービンなどに圧倒的な強みを持っていた。これらは高い競争力を持っていたが、今やハードウェア単体では強い競争力を維持できない時代になってしまった。一方でGEは、これらの産業用機器を効率よく稼働させたり、故障を予測するノウハウを持っていた。
今後、これらGEが得意な多くの産業用機器はインターネットに接続されていく。世の中でIoTと呼ばれている動きだ。産業用機器の経験が豊富に蓄積されており、稼働率を高め故障を予測できるというGEの強みは、IoT関連技術と組み合わせることで、大きな価値を発揮できるのだ。
しかし課題もある。既にデータやり取りの標準が確立されているPCやスマホとは違って、産業用機器のデータのやり取りはバラバラで標準化されていないのだ。
そこでGEは、世界中の産業基盤の運用に乗り出すべく、全社で「インダストリアル・インターネット」に取り組むことを宣言した。PREDIXはインダストリアル・インターネットを実現するためのサービスだ。
産業用機器のハードウェア単体では勝負に勝てないことを知っていたGEは、産業用機器の膨大な経験と最新デジタルテクノロジーを組み合わせ、「稼働率向上」「故障予測」という価値を顧客に提供することにしたのだ。産業用機器を数多く展開する法人顧客にとって、「稼働率向上」「故障予測」は売り上げに直結する重要課題だ。稼働率向上を実現できれば、お金は惜しまない。この取り組みを通じて、GEはデジタル変革をリードし、新規ビジネス創出を図っているのである。
125年の歴史を持つGEは、GEしか持たないコアコンピタンスに最新デジタルテクノロジーを組み合わせることで、まったく新しいインダストリアルインターネットという市場で覇権を握ろうとしているのだ。
自社の強みを考え、残すもの、捨てるもの、強化すべきものを見極め、それをしっかりと実行する。さらに、最新デジタルテクノロジーを生かして、強みをいかに増幅できるかを考える。多くの日本企業は、GEの取り組みから学べることがあるはずだ。
(永井孝尚)