経済・金融のホットな話題を提供。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
カキの旬、真っただ中である。
昨今、日本でもオイスターバーなどが増えていて、新鮮な生ガキなどを手軽に口にする機会は多いが、ちょっと思い浮かべてほしい。店で提供されるカキの多くは大ぶりで肉厚なものではないだろうか。
【干潟養殖で使用されているオーストラリア式のカゴ】
元々、カキフライや鍋物の具材など、加熱して食べる文化が日本では根付いているので、多くはむき身で流通していて、食べ応えのある大きいものが好まれる傾向にあった。一方、欧米でカキと言えば生食が主流。しかもサイドメニューとして食べることが多いので、殻付きで小ぶりのタイプが一般的である。
そうした背景から、日本のカキ生産者の多くは、できるだけカキが大きくなるように生育してきた。その結果、たとえ品質に優れていても小さなカキは業者などからほとんど見向きされないという状況が生まれてしまった。「大きくなければカキは売れない」と話す生産者もいるほどだ。
そうした中、あえて小ぶりでフレッシュな味わいの生食向けカキを生産して、日本の食文化に新風を吹き込もうと力を入れているのがヤンマーだ。
「ヤンマーがカキ作り?」と驚いた人もいるだろう。ヤンマーは農業機械や船用エンジンなどを手掛ける産業機器メーカーとして知られるが、実は数年前からカキの養殖に取り組んでいて、2015年末から東京都内のオイスターバーやレストランを中心に本格的な出荷を始めているのだ。現在の出荷量は週に5000~1万個に上る。
●ヤンマーがカキ養殖を始めた理由
大分県国東(くにさき)市――。
県北東部に位置する国東半島のほぼ半分を占めるこの地域では、以前から太刀魚(たちうお)やタコなどの漁業が盛んだ。ただし近年は漁獲量が減少、2013年は1784トン(出典:農林水産省統計部)と、この20年間で半分以下に落ち込んだほか、後継者不足などもあいまって漁業全体は年々低迷を続けている。市としても地域活性化のための産業育成が喫緊の課題だった。
そうした中、これまで生産実績のなかった国東でカキの養殖を始めるとともに、カキの産地としてのブランド化にも乗り出した男がいる。ヤンマーの水産研究開発施設「マリンファーム」で所長を務める加藤元一氏だ。カキに携わることおよそ30年、自らを“カキばか”と呼ぶほど、カキを愛してやまない人物である。
マリンファームは1988年に国東市に開設。長らくカキの養殖技術や種苗技術の研究開発などを行っていた。そんな折、北海道で20年以上もカキの養殖技術開発などに打ち込んでいた加藤氏が縁あってマリンファームに入社してきた。2004年6月のことである。
そこからマリンファームでのカキに対する取り組みが一気に加速する。2006年にカキやアサリなど二枚貝の種苗生産に必要な餌料(じりょう)を商品化、2012年には生物餌料を活用して陸上生産した二枚貝種苗の販売事業を開始した。
時を同じくして2012年、漁業の低迷に悩む国東市役所から市内のくるまえび養殖場跡地の活用方法についてヤンマーに相談が寄せられた。即座に加藤氏はカキの生産を提案。これまでヤンマーはカキ養殖の経験はなく、生産者に種苗を販売したり、海水ろ過システムを提供したりと、あくまで支援パートナーの立場だった。しかし、同社自身も従来のモノ売りからソリューション売りへとビジネスモデルを変革する最中にあって、生産者の立場で考えることが不可欠だと感じていたことや、漁業そのものの発展が自社のビジネス成長にもつながるといった考えから、実証実験を兼ねてカキ養殖に着手したのである。
ただし、その実現には地元の漁業者の協力が不可欠だった。それまでマリンファームは地元との接点はほとんどなく、しかもカキという国東にとって前例のない魚介類に挑戦するということで、漁業者を巻き込むハードルは高かったが、幸いなことに市役所がその橋渡しを積極的に買って出た。最終的にはカキ作りに専任で取り組んでくれる漁業者も見つかったのである。
●従来のカキ養殖とは異なるアプローチ
いよいよ国東での新たなカキ作りが始まった。ヤンマーが目指すカキとは一体どのようなものだろうか。「くにさきOYSTER(オイスター)」というブランド名を付けたこのカキには、ほかとは大きく異なる特徴があるのだ。
その前に、日本で一般的なカキの養殖方法について説明しておこう。カキの幼生が活発な夏場、ロープひもや針金などにホタテガイの貝殻を固定し、それを海中に吊るすと、幼生が貝殻にどんどん付着する。その後はプランクトンなど餌が豊富な場所に放置しておけばカキが成長するので、それを収穫するというやり方だ。大きくてごつごつの殻がついた大量のカキをクレーンで海中から引き揚げるシーンを目にした人もいるだろう。
これに対して、くにさきOYSTERは人工種苗生産である。陸上の設備で人工授精を行い、幼生を飼育する。さまざまな成長段階を経て、3ミリメートル程度の稚貝となったところで中間育成装置に移す。その後、20ミリメートルほどの大きさにして本格的に海で育てるという流れだ。
さて、くにさきOYSTERは、上述したように、国内で一般的に流通するカキと比べて小ぶりのサイズである。それには生育期間がかかわっている。通常カキは6~9月に養殖を開始して出荷は翌年の冬と、少なくても約1年半かかる。一方で、くにさきOYSTERは、2~5月に養殖を始めて、12月から翌年4月には出荷できるようにしている。生育期間は単にサイズだけでなく、味わいにも大きく影響する。カキは産まれてからの期間が短いほど雑味の少ない、すっきりした味になるからだ。
では、なぜ通常よりも短期間で出荷できるレベルのカキを生育することができるのだろうか。その理由の1つが、中間育成装置の活用に加え、干潟の漁場と海面(沖合)の漁場を組み合わせて生産しているからだ。干潟での養殖はカキの身を成長させる効果が、海面は殻を成長させる効果が強いため、組み合わせることで短い期間でバランスの取れた身入りのカキが作られる。くにさきOYSTERは、干潟で6センチメートルほどの大きさに育てたら海面にカキを移す。そしてある程度殻が大きくなったところで、出荷前に再び干潟に戻すというやり方を採用している。
くにさきOYSTERは、殻が深いおわん型になっているのも特徴である。これにも秘密がある。干潟で養殖する際にオーストラリア式の技術を使った特殊なカゴを使っており、満潮時と干潮時の水面の変化でカキの殻がぶつかり合い、丸くきれいに成型されていくのである。また、産まれてから収穫するまで一粒一粒バラバラに動ける状態で育ったシングルシードのカキの種苗を用いているからこそ、1つ1つの形を整えることができるのだ。
くにさきOYSTERのブランド価値を高めるためには、味わいだけでなく、見た目の美しさも重要だと加藤氏は考える。
●精密ろ過海水の活用
カキに関しては安全面を気にする人も多いだろう。冬の季節にはノロウイルス、夏場には腸炎ビブリオと、細菌やウイルスを体内に蓄積したカキを食べてしまった消費者が食中毒を起こすケースがしばしば見られる。安全・安心の確保は生産者にとって絶対的な条件なのだ。
くにさきOYSTERは、2週間に1度、養殖海域の水質とカキを検査。その後、水揚げされたカキはノロウイルスの大きさよりも細かい膜でろ過した海水(精密ろ過海水)を使って20時間浄化する。これによって体内に残る細菌などが除去できるという。さらに出荷前にもロット単位で細菌やウイルスの検査を行い、検査結果が出るまでは精密ろ過海水でカキを保持する徹底ぶりだ。そうした検査によって細菌やウイルスが検出されなかったカキを商品として出荷しているのである。
なお、くにさきOYSTERでは、種苗生産からすべての工程で精密ろ過海水を使用している。こうしたことが可能なのは、種苗からカキの生育、出荷までを一気通貫で取り組んでいるからこそである。
●小さいカキでも売れるように
このように、くにさきOYSTERの生産においては、一般的なカキ養殖では見られないような工夫が随所になされている。当然、そのための手間やコストも大きいはずだ。なぜここまでするのだろうか。そこには小ぶりでおいしいカキを作ることで世の中の価値観を変えるという加藤氏の並々ならぬ決意が込められている。
「日本では大きい殻、大きい身のカキでないと高い値段ではなかなか売れません。そのためにわざわざもう1年寝かして、大きくしてから収穫する漁師もいるほどです。結局、1つのカキに費やす時間が余計にかかってしまい非効率です。小さなカキもおいしいぞという認知が広まり、商品価値が高まれば、参入する漁師も増えるし、もっと短いサイクルでカキの養殖ができるようになるでしょう」(加藤氏)
さらに、小ぶりのカキを取り扱うレストランなどが増えれば、消費者もカキの選択肢が広がる。調理方法も、例えば、大ぶりのカキはメインに、小ぶりのカキは肉料理の添え物にとバリエーションができ、それが日本の食文化を変えることにつながるという。
「くにさきOYSTERの意義は、国東という地域の特産ブランドとして確立し、この場所に新たな産業を育むことが一義的なポイントですが、その次の広がりとして、日本のカキに対する価値観や食文化を変えることで、生産者や産地にも多様性が生まれ、漁業が発展することではないかと考えています」(加藤氏)
そのためには、小ぶりで売れるカキを作り、是が非でもくにさきOYSTERのビジネスを成功させねばらない。そうした強い気持ちを加藤氏は抱いている。
この加藤氏の思いに共鳴する関係者は少なくない。その一人が、東京・銀座のオイスターバー「牡蠣Bar」のオーナー、泉祥子さんだ。泉さんは以前から店のお客向けにカキの勉強会を開いたり、産地の生産者との意見交換を行ったりと、カキの啓蒙活動に取り組んできた。数年前、あるイベントで加藤氏と出会ってから、加藤氏の考え方や取り組み、くにさきOYSTERそのものに魅せられた。すぐさま店での取り扱いを始めるとともに、くにさきOYSTERをはじめ、小ぶりのカキの普及にも力を注いでいる。
「生産者に話を聞くと、小さなカキは売れないから、今までは自分たちで食べるか、場合によっては廃棄していたそうです。そうしたムダをなくすために、カキ1つ1つの価値を評価して、小さくてもきちんとした値付けをするようにしています」(泉さん)
国内のカキ類の収穫量は下降の一途をたどっており、2015年は16万4380トンと、この10年で5万トン以上も減少した(出典:農林水産省、種苗養殖を除く)。こうした厳しい環境の中で、くにさきOYSTERの取り組みが花開き、日本のカキ産業全体が活性化することに大きな期待が集まっているのだ。
(伏見学)
企業の労働生産性を見る指標の一つである「1人当たり売上高」。米航空業界では、この指標でヴァージン・アメリカの右に出る企業はない。なぜなら、同社で荷物の配送や機材の整備、予約、ケータリングを含む数多くの業務を行うのは正社員ではなく、委託を受けた外部業者だからだ。
「顧客と対面しない業務のすべてを外注するつもりだ」。昨年3月、デービッド・カッシュ最高経営責任者(CEO、当時)は株主に向けてそう話した。4月にはカッシュ氏が立役者となり、26億ドル(現在の為替レートで約3000億円)で同社をアラスカ航空に売却することで合意。この価格は2014年11月に実施した新規株式公開(IPO)時の2倍以上だ。カッシュ氏は昨年12月、売却が完了した時点で退任した。
米国企業が従業員数の縮小にこれほど注力したことはかつてない。アウトソーシング(業務外部委託)の波は衣料メーカーの縫製部門を中国に、コールセンター業務をインドに移すなどしてきたが、いまや全米各地のほとんど全ての業種に波及しているようだ。
米小売り大手ウォルマート・ストアーズの倉庫で荷物を下ろしている男女は米トラック輸送シュナイダー・ナショナルの物流部門が人材派遣業者から手当てした人々だ。米製薬大手ファイザーは昨年、臨床試験の大部分を外注した。
米経済誌フォーチュンが毎年発表している「最も働きがいのある会社」ランキングで過去10年のうち7回トップに輝いたグーグルの親会社アルファベットは、関係者によると、正規社員と非正規社員がほぼ同数だという。
同社で働く約7万人の派遣・臨時・契約社員は自動運転車の試験や、製品の改良、マーケティング、データ関連プロジェクトなど数多くの業務を担当している。正社員は白いバッジをつけているが、非正規社員は赤いバッジをつけている。
様変わりする働き方や企業のあり方
こうした傾向は企業や社員のあり方を劇的に様変わりさせつつある。企業にとっては雇用規模や人件費、福利厚生面で融通が利くようになる一方、従業員にとっては雇用の保障が弱まることを意味する。かつては郵便物の仕分け係から昇進を繰り返し、最後には幹部として眺めの良い角部屋のオフィスに出世するコースもあったが、今ではそれが難しくなった。外部に委託される仕事はもはや、将来のスター社員を輩出する出世コースには入っていないからだ。
企業にとって、従業員を外注業者に置き換える最大の魅力は経費コントロールだ。外部委託しておけば、新たなアイデアや必要な変化への対応に足りるだけの正社員を抱えるだけで済む。
一方、労働者にとって、この変化は賃金の低下につながることが多い。また、「勤め先はどこ?」という単純な質問に答えるのが驚くほど難しくなることを意味する。外部委託によって作り出された労働力のこうした二層構造が、同一業務を担う労働者間の所得格差を広げていると指摘するエコノミストもいる。
政府機関が統計対象とする雇用カテゴリーにぴたりと当てはまるものがないため、こうした雇用形態で働いている人が具体的にどれほどいるのかは不明だ。エコノミストの推計は、全米労働力の3%から14%と幅広く、最大で2000万人と見積もられている。
昨年発表された学術研究によると、アウトソーシングを最も狭い意味でとらえた統計の一つは、単一顧客での常駐業務に従事する間接雇用による労働者としており、米国の労働者全体に占める比率は2005年の0.6%から15年には2%に上昇している。
企業は社外従業員について詳細をほとんど公開しないが、外部委託向け業務の種類や数を急速に増やしている。人材会社の幹部によると、大手企業の場合は全従業員の20~50%をアウトソースしていることが多い。
独SAP傘下の米SAPフィールドグラスで戦略・顧客部門を率いるアルン・スリニバサン氏は、石油、ガス、製薬業界では、外部従業員の数が少なくとも2対1の割合で正社員を上回る企業もあると指摘する。
ホワイトカラーにもアウトソーシングの波
清掃やビル管理業務、社員食堂の運営などは外部委託されて久しいが、給料が比較的高いホワイトカラー職、例えば科学研究や採用、運用管理、融資審査といった職種にも同じような変化が起きている。
米労働統計局(BLS)の2015年のデータによると、医師や看護師による口述の診療記録を文書に起こす医学記録転写士の25%は同局が業務補助サービスと呼ぶ業種の雇用者に分類されている。この比率は2009年以降で8ポイント余りも急増している。
大手企業の中には最終的に、最も重要な社員以外をすべて外部委託で賄うところも出てくるかもしれない。コンサルティング会社のアクセンチュアは昨年、今後10年以内に世界中の2000社に1社は、「最高責任者の肩書きがつく職種以外はすべて非正規社員」になると予測した。
ただ、中には外部委託を試みた後で翻意した大手企業もある。米小売りチェーン大手ターゲットでは、2015年にマイク・マクナマラ氏が最高情報責任者(CIO)に就任した際、IT(情報技術)関連業務の約70%が外部委託に移された。ところが現在は外部委託された業務の約70%を正規社員が担当している。
マクナマラ氏は「競争上の優位性をどこから得るかといえば、それは社内からだと強く確信している」とし、同社は「(競争相手が)実際に問題にならないくらい優秀なサプライチェーンのアルゴリズムを持っている」と述べた。
ハリウッド型の雇用形態を想定
しかし外部委託の潮流が反転すると考える企業やコンサルティング会社、エコノミストはほとんどいない。中核業務以外の仕事を外部へ委託すれば、その分の時間とエネルギーを企業が最も得意な分野に割くことができる。労務管理を外部に任せておけば、企業は最終製品のことだけ心配していればいいことになる。
ハリウッドの映画制作会社のように、制作する作品が決まってから監督を雇い、俳優や編集者、特殊効果チーム、マーケティング会社を決めていく雇用形態にこれをなぞらえるエコノミストもいる。集められたスタッフは特定の映画を制作するためだけに働き、制作会社は映画公開後の長期的な雇用義務を持たないという形態だ。
ジェットエンジンメーカーの米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)は2015年、3つの新工場の稼働に合わせ、それまで工場ごとに部品メーカーが直接納入していた方法をやめることにした。サプライヤーからの納入を1カ所に集中させ、そこから全5工場へ向けてまとめて再配送する一元管理を導入し、配送業務をユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)に委託することを決めた。
UPSはフットボール場10個分に相当するプラット専用の巨大な集荷・配送施設を新設。プラットの既存2工場で働いていた約150人の部品配送スタッフには再研修の機会が与えられた。離職した従業員もいたが、多くは再研修を受けた。UPSは時間給制の労働者を約200人雇用した。
UPSの従業員の大半はこの分野の未経験者で、当初は部品の損壊や不備が出た。プラットによると、同社とUPSのコンピューターシステムを同期させるのにも苦労し、その結果、2015年第3四半期にエンジンの納入が33%減少し、売上高が約5億ドル(約563億円)減った。
だが次の四半期には生産がスケジュール通りに戻り、現在はうまく機能しているという。以前はプラットの社員150人が2工場で仕事をしていたが、今はUPSの200人が5工場分の仕事を処理している。プラットの従業員は労働組合に入っているが、UPSの時給労働者は入っていない。
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)は2015年、決算発表後の投資家向け電話会議で、一人当たりの収入が他行より低い理由を聞かれたことがある。
トッド・ギボンズ副会長兼最高財務責任者(CFO)は、投資家は別の要素にも注目すべきだと指摘。「正社員か契約社員かなどを考慮に入れて、従業員の頭数と競争力の関係を正しく計算するのは困難を極める」と述べた。
ジェラルド・ハッセル会長兼最高経営責任者(CEO)は、現在は人が行っている業務をテクノロジーで置き換え、人件費を抑えると約束した。より多くの業務が自動化されるまでの一時しのぎとして契約社員をとらえている企業もある。
BNYは1月、アナリストや投資家に向けて、同行では今、「150以上のボット(人の代わりに業務を行うソフトウエア・ロボット)が稼働中だ」と話した。
By Lauren Weber
2016年上期のイオン、イトーヨーカ堂、ユニーなどの大手GMS(総合スーパー)の業績は軒並み減収、赤字決算となり、すこぶる振るわない状況にある。
【ファーストリテイリングが運営する「GU」はロードサイド店舗でも繁盛】
各社は、不採算店の閉鎖、店舗改装、テナントミックスの変更などの施策を発表しているが、あくまでも対症療法の感はぬぐえない。抜本的な解決策を見つけられていないGMS各社の苦悩は当分続くことになるだろう。ただ、企業ごとに見た場合、各社の置かれた状況は一律ではない。実は、起死回生の一手となるカードを保有している企業がある。それがイトーヨーカ堂である。その理由は、他のGMSとの店舗配置を見れば一目瞭然だ(編集部注:以下、運営企業を「イトーヨーカ堂」、店舗を「イトーヨーカドー」とします)。
●立地戦略が異なるイトーヨーカ堂
現在の大手GMSの顔ぶれは、今世紀初頭の金融危機を乗り切った勝ち組と言えるが、その店舗立地を見てみると興味深いことが分かる。いち早くクルマ社会の到来に適用して郊外のロードサイドに大型店を展開したイオンおよびユニーと、東日本、特に首都圏に集中した店舗配置を構築したイトーヨーカ堂の立地戦略はまったく異なるのだ。
特にイトーヨーカ堂は唯一の東京出身企業という歴史的な背景から、首都圏の主要駅前を見事に押さえている。例えば、大井町や武蔵小杉など、なぜこんな駅前の一等地にあるのだろうと思っている人も多いはずだろう。
クルマ社会の到来以降も駅前立地の「イトーヨーカドー」がロードサイド立地のイオンやユニーとともに生き残ったのかと言えば、答えは単純で、関東、それも首都圏主要部はクルマ社会にならなかったからだ。
高度経済成長期以降、急速に進行した日本のモータリゼーションによって、公共交通の充実していない地方の買い物来店手段はクルマにシフトした。加えて、2000年代以降には買い物の主役である女性の免許保有率の上昇とパーソナルカーとしての軽自動車の普及が進んだことで、地方での買い物はクルマを使うことが一般的となった。この結果、ほとんどの地方都市の中心市街地は交通の結節点としての重要性を失い、急激に商業立地としての価値を失ってしまった。
しかし、公共交通が充実している首都圏や京阪神では、クルマは移動手段の選択肢の1つでしかない。あくまでもメインの移動手段は、公共交通であり、鉄道駅前の商業立地の価値は揺るがなかった。特に世界一とも言われる首都圏鉄道網は、新線、延伸、乗り入れによって利便性を向上させ続けている。首都圏における若者のクルマ離れも公共交通の必要性をいっそう際立たせている。
●レールサイド型の優位性
こうした経緯から、日本国内の商業立地はロードサイド立地とレールサイド立地に分化した。大まかに言えば、イオンとユニーはロードサイド型、イトーヨーカドーはレールサイド型である。そしてイトーヨーカドーがレールサイド型であることこそが他社とは異なる中長期的な優位性を秘めている。その理由は(1)人口動態(2)高齢化(3)競合環境の3点から説明できる。
まずは人口動態だ。ご存じの通り、首都圏の人口はまだ増加傾向を維持しており、将来的に減少に転じるものの、その減少率は他の地域に比べれば緩やかである。中でもその鉄道沿線に人口は集中する傾向にあり、これまで以上に首都圏駅前の商業立地価値は高まると見ていいであろう。
次に高齢化である。昨今の高齢者ドライバーによる事故の社会問題化がますます深刻になれば、今後クルマに乗れなくなる高齢者が増え、クルマで買物に行けない人も増えてくる。子どもによる買い物扶助の動きもあろうが、公共交通に依存する人の割合はさらに上昇する。現在でも、公共交通の利便性が極めて高い首都圏においては、代替手段の乏しい地方エリアより免許返納率が高いという統計的事実もある。その結果、公共交通に依存する高齢者が今以上に増加し、駅前の商業立地価値はさらに高まるだろう。
最後の競合環境が最も重要なポイントである。首都圏の優良な駅前立地は数が限られている上に、その周辺部にはほとんど空き地はない。この立地に新たな商業施設を作るとすれば、事実上再開発という手段しかないのである。ここまで見ればイトーヨーカドーの駅前既存店の価値がいかなるものかは、考えるまでもないだろう。この点でイトーヨーカ堂と比肩し得る企業は鉄道各社の商業施設くらいしかなく、流通企業では断トツの優位性を持っていることは間違いない。
●イトーヨーカ堂が不振の理由
ではなぜイトーヨーカ堂が今、ロードサイド型GMSと同様に業績不振に苦しんでいるのか。その理由は、首都圏駅前の好立地に甘え、店舗改装投資を先送りしてきたからだと考えられる。
イトーヨーカドーの首都圏駅前店はほとんどが昭和の開店以降、好立地に守られ大規模な改装をせずともある程度の集客を維持できた。しかし、店舗の老朽化が進み、駅から離れた周辺地域に少しずつ出店する競合、例えば、カジュアル衣料品チェーン「ユニクロ」のような専門店や、食品スーパーを中心とした中規模複合施設、大型ショッピングセンターなどに顧客を奪われつつある。首都圏でも駅から2キロメートル以上離れたエリアでは、クルマを使って買い物することが多いというデータがある。ロードサイドより緩やかではあるが、何十年も投資を狭小化してきた駅前の老朽店舗は、その魅力を失ってしまったのである。
こうした背景がイトーヨーカ堂の不振の大きな要因だとすれば、老朽店舗をスクラップし、新たな駅前立体型ショッピングセンターとして、再構築すればその魅力を取り戻すことが可能であろう。なぜ今までこうした再構築が行われなかったかといえば、彼らがGMS業態の抜本的改善の可能性を捨てきれなかったからである。
盤石の財務体質と収益力を兼ね備えたセブン&アイグループとしては、祖業であるGMSの構造改革をそう簡単にあきらめることはできなかった。しかし、改善の糸口を見つけられないまま今に至り、ステークホルダーからの批判を無視できなくなっている状況であろう。今度こそ彼らはGMSに固執しない総合的な商業施設として、GMS店舗の再構築に向けて、起死回生の一手を打つ時期が来たのである。それはセブン&アイグループの中期経営計画を見れば一目瞭然だ。
セブン&アイグループの10年中期経営計画のGMSに関する項には、そのことが明記されている。この計画がなりふり構わず実行されるのであれば、イトーヨーカ堂は首都圏で並ぶもののない複合商業施設運営会社として再構築されるだろう。
さらに蛇足を加えれば、イトーヨーカ堂には商業施設の核売場として食品部門を強化できる経営資源も保有している。全国有数の食品スーパー(SM)で、福島県を中心に宮城県、山形県、栃木県、茨城県の5県で店舗展開するヨークベニマルである。現場トレーナーやバイヤーの技術力育成など、同社の食品売場運営ノウハウは全国の同業が仰ぎ見る存在であり、イトーヨーカ堂が過去を否定することができれば、食品売場の吸引力が劇的に改善することは確実であろう。
●イトーヨーカ堂の反撃は始まっている
2016年11月の日本経済新聞に、セブン&アイグループが不動産再開発子会社を再編したという記事が載った。そんなに大きく取り上げられなかったこの記事こそ、これからのイトーヨーカ堂の反撃に向けたグループとしての取り組みが始まったことを示している。
小さく報道されたこの記事の本質は、セブン&アイグループが、ついに本格的な構造改革に踏み出した号砲であると思いたい。彼らがこの改革を完遂できたなら、イトーヨーカ堂は首都圏の駅前大型商業施設の運営会社として復活するであろう。しかし、こうした変革は大きな痛みを伴うものであり、短期的に経営陣が受ける関係者からの圧力は相当なものとなるだろう。今後の経営陣がこの圧力に耐え、持続できるかどうかによって、このシナリオの結末は変わってくるだろう。
中途半端な改装や潜在的好立地を手放す、ということに終始した場合、イトーヨーカ堂は滅亡した恐竜のごとき存在として、20年後の流通史に記されることになる。その次はもうないのである。
(中井彰人)
LINEとワークスモバイルは2月2日、法人向けコミュニケーションサービス「LINE WORKS」の提供を始めた。チャットでやり取りできるメッセージング機能を備え、一般向けの「LINE」と相互接続できるのが特徴。顧客のLINEとチャットでリアルタイムにやり取りするなど、スムーズなビジネスコミュニケーションが可能になるとしている。
【メールサービスの画面を見る】
ビジネスチャット機能では、社内コミュニケーションに加え、顧客のLINEとメッセージやスタンプのやり取りを行うことができる。スマートフォン、PCの両方で同じフル機能を備え、LINE WORKSユーザー同士は音声通話とビデオ通話が可能だ。使用する機能に応じて、1ユーザー当たり月額300円の「ライトプラン」、月額500円の「ベーシックプラン」、月額1000円の「プレミアムプラン」の3種類から選択できる(全て税別・年間契約の場合)。
LINEの兄弟会社・ワークスモバイルが開発・運営してきた「Works Mobile」がベース。新たにLINEとの相互接続機能を加えて提供する。
開発の背景について、LINEの出澤剛社長は「LINEは一般的なコミュニケーションツールとして定着してきたが、ビジネスでのコミュニケーションは電話とメールが依然として多く、進出の余地があると考えた」と説明する。LINEとは別個の新サービスとして展開するのは、「ユーザーから『LINEはプライベートで使うケースが多いので、仕事とは区別したい』との声が多かったため」という。
現在、社内コミュニケーションツールは「Slack」など他社サービスが人気を集めているが、出澤社長は「ユーザーからの要望が多かった『既読』機能のほか、予定表をメンバー間で共有できる機能、社用のアドレスが使えるメール機能の導入によって差別化をはかった。ビジネスでの有用性には自信をもっており、あえて無料プランを設けていない」と話す。
LINEが展開してきた既存の顧客対応サービスと異なる点については、「『LINE@』は、多数の顧客への情報配信や問い合わせ対応に適した、企業の代表窓口として使用するサービス。『LINEビジネスコネクト』は、“企業として”顧客とやりとりできるもの。『LINE WORKS』は、担当者が“個人として”顧客と1対1の会話ができる点が特長」(出澤社長)と説明する。
既に、転職サービス「TYPE」を手掛けるキャリアデザインセンターや、不動産のオープンハウスが導入を決めた。コンサルタントと転職希望者、営業担当者と住宅購入希望者のやりとりで使用するという。
引用:ビジネス用チャット「LINE WORKS」 何が違う?
「ピンポンは、アイホン」というキャッチコピーを聞いたことはないだろうか。一般的な知名度は低いかもしれないが、アイホンという会社は業界トップシェアを争うインターホン一筋の専門メーカーだ。
【アイホンの売り上げ、営業利益の推移】
愛知県名古屋市に本社を置き、創業約70年。皆さんが普段、何気なく玄関の呼び鈴に使っているインターホンの多くはアイホン製のはずだ。約900億円といわれる国内インターホン市場の大半をアイホンとパナソニックが分け合う。ちなみに、冒頭のキャッチコピーはラジオのオリジナルCMソングの最後に流れている。
同社のビジネスの特徴は、インターホンという特定の商品カテゴリーに集中していることと、自社製品とそのブランドへのこだわりの強さにある。それは同社の歴史と、商標を巡るあのグローバル企業との攻防に表出している。
●Appleとも争ったブランドへのこだわり
アイホンは1948年、先代社長の市川利夫氏が名古屋に東海音響電気研究所を創業したところから始まる。当初はラジオや拡声器の組み立て、修理を行っていた。その後、下請けから脱却し、最終製品メーカーとして生き残る道を模索した。しかし、自社でラジオ製造の準備をスタートした直後に、三洋電機からプラスチックラジオ1号機が発売され、その完成度の高さにアイホンはラジオの製造を断念した。
「大手が手を出さない商品は何か」――。考え抜いた結果が、当時国内メーカーが未参入だったインターホンだったという。1951年にインターホンの生産開始。1952年には愛興高声電話機合資会社に社名変更した(高声電話機とはインターホンのことである)。好景気の波に乗り、旅館や病院などでの引き合いが急増して、飛躍的に業績が拡大していく。1954年、製品名を「アイホン」(社名の一文字“愛”とインターホンのホンを組み合わせた)と改称し、同時に「アイホン」を商標登録している。1956年にナースコールインターホンを納入、1959年には社名もアイホンとした。
既に世に知られている、商標にかかわるエピソードがある。2008年3月、アイホンから「商標に関するお知らせ」というニュースリリースが出た。
「アイホン株式会社は、Apple Inc. と同社の携帯電話「iPhone」(アイフォーン)の商標に関し、弊社が保有する国内および海外の商標権について交渉を行ってきました。このたび、両社は、日本国内においては弊社がApple 社に使用許諾を、日本以外の地域においては両社の商標が共存することで友好的な合意に至りました」
あのAppleのスマートフォン「iPhone」がカタカナ表記で「アイフォーン」になっている所以である。
Appleが米国で初代iPhoneを報道発表したのが2007年1月、発売が2007年6月、日本市場には2008年7月に「iPhone 3G」で参入した。2006年9月には日本で「iPhone」の商標登録を申請したが、既にあったアイホンの登録商標に類似しているとの理由で特許庁が取り下げた。そのためAppleは自社による商標登録をあきらめ、アイホンから独占的使用権を得るために交渉したと推測される。前出のリリースにあるように、AppleのiPhoneのカタカナ表記を「アイフォーン」とすることと、アイホンが「iPhone」の商標をAppleにライセンスすることに合意する。
以来、アイホンはAppleからロイヤリティ収入を得ているようだ。実際、AppleのリリースやiPhoneの外箱の裏には、「商標『iPhone』は、アイホン株式会社の許諾を得て使用しています」と明記されている。
アイホンは海外での事業展開にも積極的で、早くも1970年には米国でAIPHONE U.S.A.、INC.を設立。海外では「AIPHONE」の商標権を得て(日本国内では1966年に英文商標「AIPHONE」登録済)、現在70カ国で製品を販売している。米国においては「ピンポン」というアイホンの呼出音を「音」の商標として登録した。日本でも2014年の商標法改正で、「音商標」が2015年4月から登録できるようになり、「ピンポンはアイホン」の音商標が出願され、現在審査中である。
アイホンは、一貫して大手との差別化を図り、「アイホン」ブランドによってインターホンを一般家庭に普及させた。トップメーカーとして約70年かけて市場を作り上げてきたと言える。しかし、数年前から大手メーカーが本格参入し、その地位が揺らいでいる。
●生き残り戦略
先述したように、国内のインターホンの市場規模は約900億円で、用途別には、住宅向けが89%、そのうちテレビ付インターホンが79%、一般用ドアホンが10%、病院・施設等の業務用が11%となっている(下図)。
2016年度上期は新設住宅着工件数が増加して、主力であるテレビ付インターホン市場は2015年に引き続き増加傾向で推移している。当面は首都圏を中心に大都市圏における集合住宅の増加と、防犯意識の高まりによって、緩やかな市場成長が期待できそうだ。
競合は、総合エレクトロニクスメーカーのパナソニックだ。アイホンと2社で9割以上のシェアを持つと推定される。アイホンの2016年3月期の売り上げは427億円(下図)だが、ここ1~2年で両社の競争が激化、特に戸建新築市場ではパナソニックが優位に立っている。
アイホンの2015年度の売り上げ構成は国内が74%で、そのうち戸建住宅市場が12%、集合住宅市場が40%(図表3)。戸建住宅では同期間に販売台数は増加したものの、価格競争により売上高は対前年96%と苦戦している。一方、集合住宅市場では103%増とし、住宅市場全体では101.4%と、何とか増収を果たした。
国内集合住宅について、新築では大手ハウスメーカーへの密着営業により、小規模マンションやアパート向けシステム販売が好調。リニューアルでは、既設配線が利用でき、かつ施工性を高めた新しい集合住宅システムの販売が増加。ハウスメーカーや設計事務所、工務店の現場ニーズをくみ取ったシステム型の商品と提案営業による成果と言える。
かたや、同社の戸建市場での苦戦は、「価格.com」サイトを見ると、その一端を垣間見ることができる。ライバルのパナソニックの圧倒的な品揃えと価格帯の広さ、加えて低価格化である。そこではアイホンの存在感は小さい。住宅のニーズが新築からリニューアルにシフトし、個人主導でインターホンが設置されるようになると、アイホンの強みだったハウスメーカーや設計事務所向けの営業は生きず、消費者対応が求められる。家電流通における消耗戦を少しでも回避するには、ネット対応と最終消費者向けのブランド再構築が必要だろう。
そのほか、成長市場として期待されるケア市場(病院、高齢者施設や高齢者住宅)でも、着工件数の減少、高齢者施設での競争の激化により売り上げは減少している。成長をけん引しているのは、海外市場、特に北米での伸長である。1970年の米国進出を皮切りに、現在は約70か国以上で販売され、海外比率が約3割までに拡大している。中でも北米市場は115%と2桁成長である。
●国内市場でビジネスを再構築
今後の方針として、2016年度スタートの中期経営計画でも示されているように、北米市場中心に海外拠点の拡大に積極的に取り組んでいくのは当然と言える。一方で、売り上げの7割を超える日本市場で再度強みを再構築することが最大の課題である。
重点とすべきは、アイホンの強みを生かす集合住宅でのシステム型商品によるハウスメーカーとの取り組み、セキュリティ関連サービスとしてのプラットフォームビジネスへ挑戦することだ。
「アイホン」ブランドはアイホンのコアとなっている。しかし、そのブランド認知はまだまだ業界関係者と名古屋都市圏居住者に止まっている。今後、国内市場においてアイホンが生き残るためには、なおのこと消費者にとって商品サービスを選ぶ際の「選択の手掛かり」となるブランドとして、あらゆる接点を通じて、新しいメッセージを届けることが求められているのだ。
(大場美子)
■最終益予想340億円減
電機大手に保有資産の減損処理を実施する動きが相次いでいる。ソニーは2017年3月期に映画事業で1121億円の減損損失を計上し、連結最終利益を従来予想に比べて340億円少ない260億円(前期比82.4%減)に下方修正すると発表。日立製作所も米国の原発事業で700億円の減損を計上する。会計上の処理であるため、現金流出は伴わないが、損失額が膨らむケースが目立っており、各社の業績改善に横やりを入れられる格好だ。
◆財務の規律見直し
「経営として大変重く受け止めている」
ソニーの吉田憲一郎副社長は2日の決算会見で減損についてこう述べた。
ソニーの映画事業は収益性の改善が課題だ。有望なコンテンツの売却などで低迷するエレクトロニクス事業を支えてきたことで収益力が弱体化しており、動画配信などIP(知的財産)事業の強化などでてこ入れする方針。減損で財務の規律を見直すのも事業立て直しの一環だ。
損失は主に、米ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが持つ過去に製作した映像作品の営業権の価値をゼロに引き下げることで発生する。動画配信の普及で映画のDVD市場が今後、従来想定より2割以上落ち込む見通しとなったためだ。
17年3月期の売上高は、為替レートの前提を円安方向に見直し、7兆6000億円(同6.2%減)と従来予想から2000億円上方修正。映画事業での損失は営業損失として計上するため、営業利益は2400億円(同18.4%減)と300億円の下方修正になった。
映画分野の低迷は、過去に業績が不振だった時期、人気映画「スパイダーマン」関連の商品の権利を手放すなど「短期業績のために長期的な利益を犠牲にした」(吉田氏)ことが一因になったという。今後は平井一夫社長が米国での映画事業にも携わり、関連する知的財産を活用したり、中国など米国以外で市場を広げたりして立て直す考えだ。
減益は、昨年4月の熊本地震で半導体工場が被災したことも響いたが、影響の度合いは縮小しているという。
◆市場急変で陳腐化
一方、日立は米合弁会社で原発の燃料に使うウランを濃縮する新技術を開発していたが、想定より原子力の需要が伸びないと判断。開発からの撤退に伴い、事業価値が目減りする分の損失を出す。
減損処理は保有する資産の価値が想定を大きく下回った場合に計上する。ソニーや日立の場合、市場の急速な変化に追いつけずに資産が陳腐化したことが損失の原因になった。「市場環境に対する見通しの甘さは否めない」(アナリスト)との指摘もある。
東芝のように、海外の買収先で想定外のリスクに直面して損失を迫られる事例も増えており、海外事業のガバナンスも大きな課題になっている。
引用:電機大手で相次ぐ減損、業績横やり ソニーは1121億円損失、DVD市場で誤算
ドン・キホーテは2月2日、書店街として知られる東京・神保町に新店「神保町靖国通り店」を17日にオープンすると発表した。
新店(千代田区神田小川町3-3)は地下鉄「神保町」駅出口(A7)から徒歩7分の靖国通り沿い。地上8階建てのうち1~6階で営業する。
周辺に集まる大学や企業向けに、弁当や総菜、スキンケアやオーラルケアなどエチケットグッズを充実させ、神保町に通勤・通学する人のニーズに応える利便性の高い店を目指す。店内は本をモチーフにした演出を施すという。
コカ・コーラシステムは、特定保健用食品(トクホ)の新商品「コカ・コーラ プラス」(税別158円)を3月27日から販売する。「コカ・コーラ」シリーズからトクホ商品を販売するのは初めて。健康志向が高まる国内の40代以上をターゲットに市場拡大を狙う。
【商品の狙いについて語るティム・ブレット社長】
新商品は「食事から摂取した脂肪の吸収を抑え、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」(同社)という関与成分、難消化性デキストリン(食物繊維)を配合。コカ・コーラの甘みをそのままに、糖質ゼロ、カロリーゼロを実現し、トクホの機能性を加えた。
国内のトクホ飲料市場は2011年から拡大。カテゴリー別で販売金額(2016年)が最も高かったのは茶系飲料、次いでコーラ炭酸飲料だった。
しかし、2013年まで拡大して以降、コーラ炭酸飲料のシェアは縮小傾向にある。その要因ついて日本コカ・コーラの小林香予コカコーラグループ ディレクターは「ユーザーは既存のトクホのコーラ炭酸飲料の味に満足できていない」と分析している。
「当社の調査で、食事のときにトクホのコーラ炭酸飲料を飲みたいというユーザーは増えてきているが、同時に『おいしいさ』も強く求めていることが分かった。コカ・コーラの味を変えることなくトクホ商品を出すことで、既存ユーザーだけでなく、新規のユーザーも獲得できると考えている」(小林さん)
日本コカ・コーラのティム・ブレット社長は「具体的な数値目標は非公表だが、大成功を確信している」と意気込む。
「日本のユーザーは機能性を求めている。そして、ブランドに対するこだわりも強い。新商品はこの日本特有のニーズに注目した。コカ・コーラの味を保ちながら、機能性を加えるのは簡単ではなかったが、日本コカ・コーラ創立60周年の節目の年にふさわしい画期的な商品を完成させることができたと思う」(ブレット社長)
ハウステンボスは1月30日、ロボット関連会社「hapi-robo st」(以下、ハピロボ)の事業を今年から本格的に展開すると発表した。テーマパーク「ハウステンボス」内での実証実験を通じて、ロボットの開発、販売、導入支援などを展開する。「5~10年をめどに世界有数のロボット企業に成長させ、最終的には数兆円規模のビジネスに育てる」(ハピロボ・澤田秀雄会長)計画だ。
【会場では、ハウステンボス内で公開する予定のロボホン(20体)による合奏を披露した】
ハピロボは2016年7月にロボット事業を展開するための準備会社として設立。10月ごろからシャープの「ロボホン」元開発メンバーや実業家など14人が参加し、事業展開の準備が整ったとして今年から本格的に始動する。
テーマパーク「ハウステンボス」内を実証実験の場として活用することで、各メーカーのロボット開発や販売を支援する。ロボットの活用を考えている企業に対しては導入・運用のコンサルティングを行う。
ハピロボの富田直美社長は「2016年7月にオープンした新エリア『ロボットの王国』では既に300台以上のロボットを見て、触って、購入することができる。国の規制があるために実用化できないロボットは多いが、広大な私有地であるハウステンボスなら自由に活用(試す)ことができる」と話す。
「日本は少子高齢化社会で人手不足が深刻な課題になっている。人を幸せにするサービスロボットを世の中に増やしていきたい」(富田社長)
「ロボットの王国」エリアでは今後、受け付け・案内ロボットや、掃除ロボットを中心に導入し、実用化を進めていく。また、「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス世界記録に認定された「変なホテル」については、海外でも出店を加速させ、100棟以上を展開する計画だ。
ハピロボの澤田会長は「5~10年かけて世界有数のロボットカンパニーを作っていく。期待していてほしい」と意気込む。
「できるだけ早く収益を上げていきたい。最終的には数兆円規模のビジネスに育てていく」(澤田会長)
野菜や花の品種開発を手掛けるタキイ種苗(京都市下京区)は、栄養価が豊富で食味に優れた野菜の品種「ファイトリッチ」シリーズの販売を強化する。飲食店などで栄養価の高さをアピールするイベントを展開することで消費者への認知度を向上させ、農家の生産意欲も高める。現在同シリーズの商品数は30、出荷量は1000トンだが、2020年には商品数を3倍の100に、出荷量を10倍の1万トンにそれぞれ伸ばす。
イベント第1弾として、食事を通して健康を維持することをコンセプトとしている「丸の内タニタ食堂」(東京・丸の内)で、30日から2月4日までの期間限定で特別メニュー「ファイトリッチ八宝菜定食」が1100円で提供される。
ファイトリッチは10年から販売を始めた。毎年1割ずつ出荷量を増やしてきたが、農家は栽培実績のない新品種導入に慎重なため、思うように生産が伸びなかった。しかし、健康に対する関心の高まりとともに高い栄養価に注目した消費者から「どこで買えるのか」「どこで食べられるのか」といった問い合わせが増えたことから、本格的なブランド展開に乗り出した。
同シリーズのニンジン「京くれない」は従来の西洋ニンジンの10倍以上のリコピンを含むほか、ミズナ「紅法師」はアントシアニンが従来品種の10倍以上となっている。またミニトマト「オレンジ千果(ちか)」はきれいなオレンジ色でつやがあり、糖度が8~10度と高く、赤ミニトマトに比べて約3倍のカロテンを含有している。
タキイ種苗では近い将来、高齢者の増加に伴い、野菜などの食材分野で量より質へのシフトが進むと予測し、約20年前からファイトリッチの研究に着手した。今後、食品メーカーに働きかけてジュースなどの加工食品を展開するほか、飲食店と提携してメニューを提供することを通して、認知度を高め消費量を増やしていく戦略だ。
同社開発部の富永直樹氏は「ファイトリッチを通じて野菜を見直し、健康づくりに役立ててもらいたい」と話している。
引用:タキイ種苗、野菜「ファイトリッチ」販促 栄養・味に自信 タニタと協業も