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経営再建中の東芝が、主力のフラッシュメモリーを含む半導体事業を分社化して他社からの出資の受け入れを検討している。
東芝にとって半導体事業は「稼ぎ頭」で、原子力発電などのエネルギー事業とともに、白物家電事業や医療事業の売却後のコア事業としてグループを支えるはずだった。経営再建に、なりふり構わず「売れるものは売る」かのようにもみえる。
■狙いは財務への懸念払しょくと半導体事業への投資余力の確保
東芝が半導体事業の分社化を検討している背景には、米国の原子力発電事業での巨額損失の発生がある。同社は2016年12月27日、米国の原子力発電事業で17年3月期に数十億ドル(数千億円)の減損損失が発生する可能性があると発表。17年1~3月期決算で減損処理を行う可能性があるとした。
東芝は主力の半導体事業が好調で業績も上向いていたが、それに水を差すことになる。それどころか、損失の規模によっては自己資本に影響が及びかねない。経営再建に、再び黄色信号が灯る可能性も出てくる。
そのため、収益を支える屋台骨の一つである半導体事業を分社化し、そこに他の企業からの出資を受け入れ、財務基盤を強化する検討に入った。
分社化によって株式を売却すれば手元資金のほか、年間で数千億円に及ぶ、主力のNAND型フラッシュメモリー事業への設備投資や研究開発に充てる資金も融通しやすくなる。つまり、脆弱化した財務基盤への懸念を払しょくし、成長の見込める半導体事業への投資余力を確保する狙いがあるわけだ。
東芝は、「NAND型フラッシュメモリー(スマートフォンなどの記憶媒体として使われる半導体)は、IOT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など大きな需要が見込める半面、開発競争がし烈で、大規模な投資が必要な分野で、継続的な資金供給が必要になります。円滑な資金調達のため、また(原発事業での損失で)自己資本の薄さが懸念されていることから、(資金確保に)スピードアップが求められています」と説明する。
東芝の半導体事業、なかでも主力のNAND型フラッシュメモリーは、韓国のサムスン電子に次いで世界第2位。NAND型フラッシュメモリーは、スマートフォン向けだけでなく、いまや世界中で増強投資の進むデータセンターのサーバー向けの需要が急増するなど、絶好調だ。
東芝によると、半導体事業(HDDを含む)の2016年3月期の売上高は1兆5759億円。このうちメモリー事業が半分以上を占めている。同社は、「半導体事業には、まだまだ伸長を期待していますし、当社のコア事業であることにかわりはありません」と話す。
引用:東芝、今度は「半導体」の分社化検討 残る事業は...えっ!コレだけ?
アマゾンジャパンは1月18日、スタートアップ支援のプログラム「Amazon Launchpad」を日本でもスタートした。既に世界8カ国で展開され、1200社4000点以上の製品を取り扱っているプラットフォームに、日本のスタートアップも参加できるようになる。
【画像】Amazon Launchpadで利用できる支援ツール
Launchpadは、ビジネスの成長を加速させるマーケティング、セールスサポート、配送サービスをスタートアップを対象に行うプログラム。特設ストア上に製品を公開し、国内外の消費者に向けて製品への思いやブランドストーリーを伝えられる。
スタートアップの大きな課題は「販路の構築、拡大」だが、Launchpadでは、「Amazonマーケットプレイス」の仕組みを使い、配送をアマゾンに委託することができる。スタートアップ側のメリットは、煩雑な発送作業や在庫管理などをする必要がなくなるため、迅速な配送と開発への集中ができることや、海外販売が視野に入れられることだ。また、レビューを通じ、世界の消費者から直接意見をもらうこともできる。
さらに、出品ノウハウや、ブランド構築のためのマーケティングなど、さまざまなツールを提供する。また、運転資金融資も行うという。
アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は、「日本のスタートアップをより発展させるためには、さらなるIT投資やサポート体制が必要。その一環となるのがLaunchpad。スタートアップが生み出した革新的で個性豊かな製品を、プラットフォームを通じて、世界中のアマゾンのユーザーに知らせることができる。日本のイノベーション文化を発展させ、1人でも多くの起業家をサポートしたい」と意気込む。
既に15社以上の日本のスタートアップが参加。“なくしもの”を減らすIoTデバイス「MAMORIO」、キックスターターで17万5000ドルを集めた“耳が痛くならない”ヘッドホン「VIE SHAIR」、音楽を流せる家具「SOUND TABLE」などが並ぶ。
●世界に後れを取る日本のスタートアップ
Launchpadは15年7月に米国で立ち上がり、16年にヨーロッパ(イギリス、ドイツ、フランス)、中国、インド、メキシコ、カナダでローンチした。日本は9か国目だ。
近年、グローバル企業によるサービスの日本展開が遅れることが多くなっている。独自の商慣習や言語対応などが障壁になることが多いが、今回の場合、日本のスタートアップ市場が成熟してはいないことが大きな原因だろう。
2015年の米アムウェイの調査によると、日本人の起業意識は世界38カ国で最下位だった。「メルカリ」「SmartNews」「NewsPicks」などのスマホアプリが成功したり、ベンチャーキャピタルや大手企業のベンチャー投資も増えたりと、少しずつ変化はしているものの、いまだに世界からは出遅れている。
例えば先にローンチしているメキシコは、スタートアップが急速に発展している国の1つだ。政府の支援も厚く、14年には6億2800万ドルを62万人の起業家に配分している。また、アメリカとスペイン語圏をつなぐポイントであることから、シリコンバレーなどのベンチャーキャピタルや投資家が注目し、資金やノウハウを投入している。
日本政府も起業化支援制度をつくってはいるが、効果的に使われているとは言い切れない。また、現在活躍しているスタートアップの多くはデジタルベンチャーであり、モノづくりの分野においては非常に弱いのが現状だ。Launchpadのローンチは、日本のスタートアップ市場に大きな影響を与えるはずだ。
引用:「Amazon Launchpad」は出遅れた日本のスタートアップの救世主になるか
携帯電話事業者(キャリア)各社が、若年層の顧客獲得を競っている。格安スマートフォンを手掛けるMVNO(仮想移動体事業者)が台頭する中、若者のスマホの使用状況に応じた柔軟な料金プランや充実した特典を提供。携帯市場が成熟する中、新規契約が見込める若者の取り込みに躍起だ。
【画像:ソフトバンクの「学割モンスター」の内容】
●KDDIの「auの学割天国」
KDDIは1月11日、「auの学割天国」と呼ぶ施策を発表。18歳以下を対象とする「学割天国U18」と、25歳以下を対象とする「学割天国U25」の2種類を用意している。
学割天国U18は、データ通信の使用量に応じて月額料金が変動するプラン。月々のデータ使用量が3GB以下の場合は通話料込みで月額2980円(税別)、上限の20GBまでデータを使用した場合は月額5090円(同)と、格安スマホと同等の価格帯を設定する。学割天国U25では、大容量のデータ通信を定額で利用できるプラン「スーパーデジラ(20GB:月額6590円、30GB:月額8000円)」から毎月500円を割り引く。
KDDIの田中孝司社長は、「若者のスマホの利用状況を調査したところ、スマホ使用歴や、学期中と休暇中などの時期によってデータの使用量に大きな差があることが分かった。そこで画一的な学割プランを廃し、使い方に応じて料金が変わる段階的なプランに変更した。価格帯は、格安スマホと同じレベルにチャレンジした」と語る。
若年層の取り込みを図るため、KDDIは割り引き以外のサービスにも注力する。同社は11日、同社の顧客サポートサービス「auスマートパス」の拡充版である「auスマートパスプレミアム」を発表。スマホの破損時の修理やデータ復旧などの各種補償に加え、日替わりで娯楽施設やレストランが優待価格で利用できるもので、学生は無料となる。田中社長は「究極の学割を提案できたと考えている」と自信を見せる。
●ソフトバンクの「学割モンスター」
「KDDIへの対抗策として、学割を導入する」――。ソフトバンクの菅野圭吾 モバイル事業推進本部長は、16日に開かれた発表会でこう明言した。
ソフトバンクが同日に発表した「学割モンスター」の内容は、18歳以下が対象の「学割モンスターU18」と、25歳以下が対象の「学割モンスターU25」の2種類。前者はデータ使用料に応じた割引プランで、月額料金は2980円~4980円(税別)。後者は、ヘビーユーザー向け定額プラン「ギガモンスター(20GB:月額6000円、30GB:月額8000円)」から年間1000円を割引する。KDDIとほぼ同じ料金プランを設け、顧客獲得に向けて正面から競争する考えだ。
料金プラン以外では、昨年好評だった、契約者に牛丼などの無料クーポンを配布する「SUPER FRIDAY」を25歳以下の学生向けに3~4月にかけて再度実施。コンビニチェーンなどで使用できる無料クーポンを毎週金曜日に配信するという。
一方、年齢を問わず、契約者全体を対象にした特典も用意。グループ企業のヤフーが手掛けるオンラインストア「Yahoo!ショッピング」と「LOHACO(ロハコ)」で買い物をすると、通常の10倍のポイントが付与されるキャンペーンを2月1日にスタートする。
菅野氏は、「料金を抑えつつ、それ以外の価値も追加する施策を用意した。経済的な価値だけでなく、体験としての価値を提供できるブランド作りに向け、顧客との接点を増やしたい」と説明する。
最大手のNTTドコモは昨年、毎月のデータ量を5GB増量する「ドコモの学割」キャンペーンを実施。KDDI、ソフトバンクの施策に対抗して今年も何らかのキャンペーンを展開するとみられる。
食事やおやつ、休憩のお供として定番となっているキリン「午後の紅茶」。発売30周年の2016年は、過去最高の販売を達成。キリンの看板商品として、さらなる飛躍を遂げた。マーケティング施策でその飛躍を支えたのが、キリンビバレッジマーケティング部商品担当部長代理の星島義明さん。躍進につながった取り組みやその狙いについて聞いた。
【「午後の紅茶」のマーケティングチームを率いるキリンビバレッジの星島さん】
紅茶飲料市場の拡大をけん引してきた午後の紅茶シリーズ。16年の販売数量は初めて5000万ケースを突破し、節目の年を彩った。
30年の歴史を振り返ると、常に成長を続けてきたわけではない。日本初のペットボトル容器の本格紅茶として販売を開始したのは1986年。同年に発売された「写ルンです」や「ドラゴンクエスト」などのヒット商品とともに、「午後ティー」の愛称でブームを巻き起こした。しかし、2000年代に入ると緑茶やブレンド茶などの無糖茶が台頭し、低迷。「甘い」「高カロリー」といったイメージを変える必要に迫られた。
そこで、新商品「エスプレッソティー」や「おいしい無糖」を投入し、新たな飲用スタイルを提案。それらがヒットして再成長した。10年以降、7年連続で前年を上回る販売を続けている。
●初めてのマーケティング
星島さんは1999年に入社。以来、営業畑を歩み、コンビニ営業などを担当してキャリアを積んできた。ところが2016年4月、マーケティング部に配属。午後の紅茶のマーケティングチームを率いることになった。30周年を迎える重要なタイミングでマーケティングを任されることになり、「最初はびっくり。務まるだろうかと思った」そうだ。
午後の紅茶はキリンビバレッジの売り上げの半分程度を占める主力商品であり、社員にとっても特別なブランド。星島さんも「営業時代もずっと深く携わってきた商品。核となるブランド」という認識を持つ。マーケティングの仕事は初めてだったが、社内からの期待に応えるべく取り組むことになった。
マーケティングの仕事は、商品コンセプトの設定から販促まで多岐にわたる。「売れること」を目指し、開発段階から店頭に並ぶまで、全ての仕掛けに携わらなければならない。午後の紅茶は毎月新商品が出るブランドであることに加え、16年は30周年記念の企画もあった。必死に走りながら、盛りだくさんの取り組みに挑んできた。
●紅茶市場の拡大を目指す
節目を迎えた16年は、30年の歴史の中であまり取り組んでこなかったことに挑戦した。それは、季節を意識したキャンペーンだ。特に冬は、もともとコンビニのホット飲料として売り上げが伸びる季節でもあるため、積極的な販促活動を仕掛けてこなかった。そこに目を付けて、「冬に午後の紅茶を思い出してもらう」ことを目標に掲げた。
キャンペーンの狙いはもう1つある。「紅茶飲料の市場拡大」という課題に取り組むことだ。清涼飲料の紅茶カテゴリーでは、午後の紅茶が50%に近いシェアを誇る。しかし、清涼飲料の市場全体から見ると、紅茶カテゴリーの割合はわずか5%程度。市場を拡大できれば、まだまだ販売を増やすことが可能だ。「新しい仕掛けで午後の紅茶に触れてもらうきっかけを増やし、市場を広げたい」と星島さんは意気込む。
販促の目玉の1つが、7年ぶりに制作した冬限定のテレビCM。現役高校生で女優の上白石萌歌さんがCharaさんの代表曲「やさしい気持ち」を歌う「あいたいって、あたためたいだ。」編を12月から放映した。印象的な歌声に対する反響は大きく、「『泣いてしまった』という声もあった」(星島さん)。動画サイトの急上昇ランキングでも大きな話題となり、午後の紅茶のブランドイメージをあらためて定着させた。星島さんは「『紅茶っていいな』『キリンっていいな』と思ってもらうことを目指した。来年以降も冬のCMを継続できれば」と振り返る。
また、紅茶市場の枠を広げる取り組みの一環として、30周年記念商品「エスプレッソティーラテ」を10月に発売した。コーヒーのエスプレッソのように高温・高圧で紅茶を抽出することで引き出した、茶葉のしっかりとした香りと飲み応えが特徴。コーヒーに替わる飲み物として提案し、紅茶ユーザー層の拡大を狙った。香り高く濃厚な味わいが受け入れられ、ブランド全体の好調を後押ししたという。
7月と12月に開催した、季節の飲み方を提案するイベントも好評だった。「1年を通じてなんとなく飲まれる」だけでは市場は広がらない。季節ごとのイメージ強化や他の飲料に替わる飲み方の提案によって、その存在感をさらに強めた年になった。
●意識のギャップをなくす
イベントやキャンペーン、新商品など、他の部署や外部の会社を巻き込みながら取り組む仕事が多い星島さん。社内外における意思疎通の難しさを痛感したという。
広告代理店など、外部とのやりとりが多いCM制作では、ナレーションの文言などについて、「細かい機微が伝わらない」と感じることがあった。細かい表現の1つ1つがブランドイメージを左右するため、正確な意思疎通は欠かせない。お互いに「良くしよう」と思っているのにもかかわらず、その思いが一致しないこともあったという。制作チームの認識を合わせていくことに苦労した。
それは、社内のマーケティングチーム内の課題でもある。星島さんがまとめるチームでは、メンバー8人がそれぞれ担当のプロジェクトを抱えているため、全員で集まる場をなかなかつくれないのが現状だ。メールで各プロジェクトの進行状況を共有することはもちろん、実際に顔を見てコミュニケーションをとるように心掛けているそうだ。
チームとしてうまく機能するためには、どの仕事をしていても、午後の紅茶ブランドとしての方向性を全員が認識していることが重要だという。「意識のズレやギャップが生まれないように、積極的に声掛けをしていかなければならない」と星島さんは話す。
「優秀なチームメンバーをはじめ、社内外の人たちに支えられて飛躍できた」と16年を振り返る星島さん。しかし、過去最高の販売を達成した喜びもつかの間。17年はさらなる成長が求められる。紅茶市場の活性化を目指して、「日常生活のさまざまなシーンで、紅茶の出番を増やすことにチャレンジしたい」と前を向く。
■3年後めど 地方の空き店舗活用
シャープOBらが設立したベンチャー企業が、書店を再現した仮想現実(VR)空間の中で、好きな本が探せる「VR書店」の企画・開発に乗りだした。今年前半にも実証実験を開始し、平成32年前後に地方の商店街の空き店舗などのスペースで開設する計画だ。斬新な発想でヒット商品を連発してきたシャープのDNAを生かし、過疎化が進む地方の活性化につなげ、本との出会いの場や新たな読書の楽しみ方の提供を目指す。
◇
企画・開発を行うのは、シャープの企業理念である「誠意と創意」を引き継ぎ、革新的な製品の創出を目的に結集したシャープOBの高嶋晃社長らが昨年11月4日に設立したベンチャー「team S」(チームエス、東京都)。
シャープ創業者の早川徳次氏の誕生日の11月3日の設立を望んだが、祝日で法務省の会社設立の登記受付窓口が閉まっていたため、翌日に設立。高嶋氏のほか、シャープOB7人が分担して企画・設計・販売を手掛ける。
VR書店は、実際には本がないが、店舗内で来客がウエアラブル端末を頭部に装着すると、目の前に本棚が並ぶ書店を模したVR空間が広がる仕組み。歩いて本を探したり、「立ち読み」したりすることができる。
課題は本の閲覧方法だ。コントローラーを操作して行う手法のほか、手を空中で動かし、本を棚から取りだしてページをめくる一連の行為を疑似体験できる技術の開発も検討する。気に入った本があれば、インターネットなどを通じて注文・購入できる。
構想の背景にあるのは、全国で相次ぐ書店の閉店だ。出版業界関係者によると、書店が1軒もない地方の市町村は増加傾向にあるという。過疎化に加え、出版不況や電子書店の台頭なども要因とみられる。
高嶋社長はシャープで大きなモニターがついたビデオカメラ「液晶ビューカム」などの商品企画に携わり、12年に退社後は、電子書籍配信大手イーブックイニシアティブジャパンを共同創業した。
電子書籍の普及に努めてきた立場だが、「電子書店は本の検索購入には便利だが、まちの書店で体験できる本とのわくわくする出会い、店員とのコミュニケーションを求めるのは難しい」と指摘。
VR書店の将来像について「人が集まり、交流をしながら読書が楽しめるスペースにしたい」と語る。まずは地方自治体と連携し、今年前半にも商店街の空き店舗を活用し、図書館を再現した原型モデル「VR図書館」の実証実験を実施。課題を探り、運営方法などを詰める。高嶋社長は「VRの先駆者になりたい」と意気込んでいる。
スペインのある経営大学院の教室では、学生の一人が授業に興味を失うと、コンピューターが教授に警告する。
ここは普通の講義ホールではない。スペインの首都マドリードのIEビジネススクール(以下IE)のWOW(ウィンドー・オン・ザ・ワールド)ルームだ。同校はこれがMBA(経営学修士)プログラムの未来の形だと考えている。
このWOWルームは実在の空間で、教員は壁に映し出されたたくさんの学生たちに向かって講義をする。学生はビデオカメラを通じて講義を見つめている。講義中はソフトウエアが学生のストリーミング動画をスキャンし、感情分析を行って、学生の反応を調べる。ソフトウエアは、例えば誰かが興味を失ったり、腹を立てたりしていると、教員に知らせることができる。
学生の反応が少ないことから講義内容に魅力がないことがうかがえる場合もある。IEの学習イノベーション担当責任者を務めるヨランタ・ゴラノフスカ氏はそれが「相当に有益なフィードバックだ」と話す。同氏は教員がこのデータを利用して自分の講義を微調整することができると指摘する。
IEは昨年10月にWOWルームを設置した。これはバーチャル空間で教室の体験を再現しようとする試みだ。教員はこれにより、たとえ実際にはそこにいなくても、学生たちのエネルギーを感じ取ることができる。
MBAプログラムは最近数十年にわたってあまり変化がなく、特に伝統的な全日制のプログラムでその傾向が強い。しかし、ビジネススクールを評価する国際的な認証組織「AACSBインターナショナル」の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるトム・ロビンソン氏によると、ビジネススクールはここ5年にわたり、オンラインの要素とフェイス・トゥ・フェイス(対面式)の授業の要素を融合したプログラムを増やしている。
こうした融合プログラムは、生の講義で見受けられるような高いレベルの学生との対話および関与(これを「ハイタッチ」と呼ぶ)の提供を目指す。ロビンソン氏は、企業と学生がオンラインMBAプログラムと伝統的なキャンパス主体のプログラムの融合を求めていると考えている。「将来、全てのプログラムは融合されるだろう。違いは、融合がどれほど進んでいるかという度合いの問題だけになる」
ロビンソン氏によると、融合プログラムは過去数年間で、技術面でかなりの進化をみせ始めている。同氏はその先駆者として、ロンドンのインペリアル・カレッジ・ビジネススクールとIEを挙げる。「両校は素晴らしい技術を持ち、長期にわたってそれに取り組んでいる」
同氏によれば、米国では、メリーランド大学とノースカロライナ大学のビジネススクールのオンラインMBAプログラムが「ハイタッチ」の好例だという。
ビジネススクールと教育関連技術プロバイダーのグループが先月、インペリアル・カレッジ・ビジネススクールで会合を開き、デジタル・ディスラプション(デジタル化による創造的破壊)とビジネス教育の未来に関する考えを意見交換した。
2年前に開設されたインペリアルの「グローバル・オンラインMBA」プログラムは、ほぼ全てがインターネット上で提供される。学生が2年間のプログラムで実際にキャンパスを訪れるのは、たったの2回だ。つまり「チーム・メンタリティー」を育むコースの開始時に1週間と2年目の開始時に2週間のみ。ただし、学生はどの段階においても、キャンパスで行われる講義に出席することができる。
同校エドテック・ラボの所長を務めるデービッド・レフィブレ教授は、伝統的なMBAプログラムの特徴である「個々の学生に合わせた中身の濃い体験」を再現しようと努力していると話す。
同プログラムの「ハブ(Hub)」というバーチャル空間では、生徒たちが教材にアクセスしたり、講義を視聴したり、教員や他の学生と交流したり、バーチャルな個別指導を受けたりする。レフィブレ氏によると、自身が教えるコースのおよそ23%は、携帯端末からのアクセスだという。
同校では、グループの大きさを小規模に維持している。また、伝統的なキャンパス主体のコースを教えているのと同じ教員がプログラムを提供するようにしている。レフィブレ氏は、これがこれまでの伝統的なオンラインプログラムや遠隔学習プログラムとの相違点だと指摘している。
だが、このプログラムにもいくつかの限界があるとレフィブレ氏は述べる。「ケーススタディー・アプローチでは、体験を重視するため、教授がクラスを仕切っていて、質問責めにして学生を困らせるほどだ。この特有のダイナミズムを、教室で感じるのと同じようにオンラインで再現できるだろうか。それは無理だ」
By PARMINDER BAHRA
12月某日、午前9時。場所、東京。眠い目をこすりながら「朝イチの取材は久しぶりだなあ」と思っていたら、その人はバイクを押しながらやって来た。スマートフォンやカメラなどを手掛けるベンチャー「UPQ」の中澤優子CEOである。
【中澤CEOは取材現場までバイクを持ってきてくれた】
バイクの乗り心地を聞いたところ「チャリ(自転車)とあまり変わらないですね。クルマよりも寒くて、チャリよりも楽といった感じ。ちょっとした買い物に行くときに、よく乗っていますよ」(中澤さん)とのこと。そのバイク名は「UPQ BIKE me01」。「ん? なに、それ? 聞いたことがないなあ」と思われた人もいると思うので、簡単にご紹介しよう。
「BIKE me01」はUPQが発売した電動ミニバイクで、原動機付自転車免許を持っていれば公道を走行することができる。最大の特徴は、なんといっても「折り畳める」こと。この日の取材時のように、部屋の中に持ち込んで、片隅に置いておくこともできるし、クルマのトランクなどに収納することもできる。車体にUSBポートを備えていて、スマホなどを充電することも可能。また、カギを持った状態でバイクに近づくとロックが解除され、逆にカギを持ったままバイクから離れると自動的にロックされる。1回の充電で35キロメートルほど走行することができ、価格は12万7000円(税別)。
「ささっと取り出して、ちょっと乗りたいときに便利そう。でも、今の時代、バイクなんて売れないでしょ」と想像されたかもしれない。その通りである。「バイクは1000台売れればヒット」と言われている中で、このBIKE me01は予約開始初日に100台以上の注文が殺到。好調なのは初速だけでなく、その後も順調に売り上げを伸ばしているという。
「モノが売れない」と言われている中で、なぜこのバイクは消費者の心をつかんだのか。UPQの中澤さんに、その秘密を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
●バイクを開発した理由
土肥: UPQは2015年に創業して、これまでスマートフォンやカメラなどをつくってきました。そして、2016年にバイクを発売されるわけですが、いきなり予約が殺到。その後も順調に売れているそうですが、そもそも「電動バイクをつくりたい」という思いがあったのでしょうか?
中澤: いえ、まったく。「原付をつくりたいなあ」という思いはありませんでしたし、「便利な乗り物をつくりたいなあ」という思いもありませんでした。では、なにをつくりたかったかというと「面白い、乗りたいな」と感じられるような電気の乗り物をつくりたかったんですよね。例えば、セグウェイ。電動立ち乗り二輪車って面白いなあと思うのですが、日本の公道で走行することはできません。道路交通法上の関係で、利用は私有地内に限られているんですよね。法律によって面白そうな乗り物を身近に感じることができないことがものすごくもったいない。「じゃあ、法律を変えればいいのでは?」といった声をいただくのですが、スタートアップの私たちが法律を変えるのは難しい。
このような状況の中で、どういったことができるのか。法律に反しない中で、どうすれば面白そうな乗り物をつくることができるのか。電動アシスト自転車に乗るのに免許はいりませんが、ちょっと面白さに欠けるかなあと。じゃあ、原付のバイクはどうかと考えました。原付のバイクに必要なものはなにか。調べると、シートがなければいけない、ミラーがなければいけない、ウインカーは何センチ離れていなければいけない、といった具合にいろいろな条件があるんですよ。ただ、その条件をきちんと守れば、従来の原付の形でなくてもいいことが分かってきました。
土肥: 新商品を開発するにあたって、特に「バイク」にはこだわりはなかったということですが、そもそも乗り物はお好きなのでしょうか?
中澤: いえ、特に。自転車はカッコイイものがいいなあということで、「ビーチクルーザー」という自転車に乗っています。ただ、原付は所有したことがありません。原付に乗ったことがない、所有したこともない、そもそも興味もない、といった人たちでも「乗りたいな」と感じられるようなモノをつくることにしました。
もちろん、お客さんの中に「電動の原付バイクが欲しい!」とどんぴしゃの人もいらっしゃるはず。「オレ、折り畳みの原付、ちょー欲しかった」とか「電動バイクコレクターなんだよね」といった感じで。ただ、こうした人たちだけではなく、バイクに興味がない人の琴線に触れるようなモノをつくることがポイントなのかなあと。
いまの時代、モノはなかなか売れません。けれど、バイクにそれほど興味がない私でも「面白そうだなあ」と感じることができるモノであれば、「オレもオレも」「ワタシもワタシも」という人が購入していただけるかもしれない、と思っています。
●パッと見て、想像してもらうことがポイント
土肥: 「琴線に触れるようなモノをつくる」という言葉が出てきましたが、それを実現するのは簡単ではないですよね。普段からバイクに乗っている人であれば、なんとなく「こーやれば売れるかもしれない」といった感覚があるかもしれませんが、中澤さんはそうではない。そもそもバイクを所有したことがないのに、どのような点を意識してつくったのでしょうか?
中澤: 実物を見ていただけますか?
土肥: (じーっ、とバイクを見る)
中澤: 「これバイクなんです」と言われても、びっくりされる人が多いのではないでしょうか。「え、バイク? 掃除機に見えた」という人がいらっしゃるかもしれません。掃除機とよく似たフレームですしね。でも、よーく見ると、違う。サドルが付いていて、ハンドルも付いているので、バイクを乗らない人でも「これって、バイク?」と想像できるのではないでしょうか。また、ガソリンタンクがないので、「これって電動バイク?」と推測できるのではないでしょうか。さらに、折り畳み自転車のようなので「これって折り畳むことができる電動バイク?」と当てることができるのではないでしょうか。
土肥: ふむ、なるほど。バイクに興味がない人でも、パッと見て「面白そうだなあ」と感じてもらって、いろいろと想像してもらうことがポイントだと。それにしても、なぜそのように考えるのですか?
中澤: 私は大学を卒業して、カシオ計算機に就職しました。そこで携帯電話の事業に携わることになるのですが、当時、たくさん説明していました。
土肥: たくさん説明していた? どういう意味でしょうか?
中澤: 「今回の新商品は、このような機能を追加しました」「このようによくなりました」「さらによくなりました」といった感じで、競合他社との競争に勝ち抜くために説明が欠かせなかったんですよ。でも「新機能を説明する」ことは競争をさらに激化させているんですよね。じゃあ、そうした競争に巻き込まれないためにはどうすればいいのか。パッと見て、「これはこういった商品だ」と感じられるモノをつくったほうがいいと思いました。
いまの世の中、なんでも詰め込んでしまえといった風潮がありますが、そうではなくて、そぎ落としたモノを求めている人もいるのではないでしょうか。もちろん、「詰め込むことが悪い」といっているわけではありません。例えば、テレビ。家電メーカーはテレビを売るために「さらにきれいに見れるように」「さらに価格を安く」といった競争をされていますが、多くの関係者は分かっているはず。「こんな機能、本当に必要なのかな」「お客さんはそこを求めているのかなあ」と。でも、開発を止めることは難しいんですよね。なぜか。スペック競争をしなければ、ライバルに離されるから。自分たちの駒を進める競争から抜け出すことができなくなっているんですよね。
●他社とは違う方向に駒を進めていく
土肥: その一方で、駒を逆に進める方法がある。UPQはその方法を選んだわけですね。
中澤: 当社は2015年に創業したので、2年前の市場シェアはゼロなわけです。そんなときに、このようなことをよく聞かれました。「どんどん新商品を開発して、シェアを伸ばしていくつもりですか?」「既存の家電メーカーを潰しにかかるのですか?」と。数字を追い求めるつもりはありませんし、他社を潰そうなんて考えたこともありません。
土肥: では、どういった考えなのでしょうか?
中澤: 携帯電話の事業に携わっていたとき、「この事業はずーーーっと続く」と思っていたんですよね。形は変わるかもしれませんが、携帯電話の事業がこの世からなくなると思っていませんでした。なぜ、このように感じていたのか。2007年に入社した当時、一緒に働いていた人たちは、自分たちがつくっていたモノを使っていたんですよね。会社から無料で提供されたモノではなくて、自分の財布からお金を出して購入していました。なぜ使っていたのかというと、自分たちでつくっていた製品に愛着があったからだと思うんですよね。そうした光景を見たとき「いい会社だなあ」と感じました。
しかし、iPhoneが登場したことによって、状況は大きく変わりました。多くの人がiPhoneを持つようになったんですよね。Androidでいえば、XperiaやGALAXYを使っている人が多かった。以前は自分たちがつくったモノを使っていたのに、やがて使う人がほとんどいなくなった。つまり、自分たちがつくっているモノに愛着が薄れていたんですよ。そんな気持ちでつくっても、商品はなかなか売れません。
そして、会社が解散することになりました。メーカーで働いているのに、自分たちがつくってきたモノを捨てることはとても辛かったですね。部品を分解して、分別して、焼却炉に持っていく。資料も燃やして、データも削除する。このときこのように感じました。「自分は一体何をしているんだろう」「なぜ、こうしたことになってしまったんだろう」と。そして「面白いと感じられるモノをつくることが、なぜできなかったのか」といった後悔の気持ちがありました。
土肥: 自分たちがつくったモノを捨てる――といった経験は二度とゴメンだ。そうした考えが礎にあるので、他社とは違う方向に駒を進めているわけですね。
●「面白そうだな、買いたいな」という人
土肥: 「折り畳みの電動バイクをつくる」と言ったとき、周囲からはどのような反応がありましたか?
中澤: 商品開発をしているとき、関東運輸局に話を聞きにいきました。すると、担当者はこのように言っていました。「いまの時代、バイクは売れないよ。1000台売れたら、大ヒットだよ」と。また、ウチのバイクはどのくらい売れると思いますか? と聞いたところ「100~200台くらいかな」と言っていました。
「スマートフォンや携帯電話が売れにくくなった」とはいえ、数万台は売れているので、担当者の話を聞いて「厳しい市場だなあ。もう少し売れてくれないかな」「100台じゃあ、割に合わないなあ」と思いました。「若者の間でクルマ離れが進んでいる」と言われて久しいですが、バイク離れはもっと進んでいました。じゃあ、既存のバイクメーカーはどうしているのかというと、海外で売ってなんとかしているんですよね。
では、当社の場合はどうしたのか。実物がまだできていなかったころに、家電量販店さんに「こうこうこういう感じのバイクで……」とお伝えしたところ、「ぜひ、ウチで」といった声をたくさんいただきました。2016年8月に予約の受け付けを始めるわけですが、家電量販店の担当者さんに「何台くらい売れそうですかね?」と聞いたところ、「ウチは1カ月で30台売る!」と言っていただけました。別の家電量販店に聞いたところ「あそこが30台と言うんだったら、ウチは31台売る!」と言っていました(笑)。
運輸局の人は「100~200台」と言っていたのに、いきなり半分くらいの数字が出てきたので、「本当に大丈夫かな」とこちらのほうが心配になりました。予約を開始したところ、数時間で30台を超えていました。そして、初日だけで100台を超えたんですよね。
土肥: いい意味で、運輸局の人の予想を上回った。
中澤: バイクを見て「面白そうだな、以上終わり」ではなくて「面白そうだな、買いたいな」という人がたくさんいたことがうれしいですね。当社は大手メーカーではないので、多くの人は「安全面は大丈夫なのか」と思うのではないでしょうか。しかも、価格は13万円ほどする。決して安くはない買い物なのに、買っていただけたということは、やはり商品を見て「面白そう、乗ってみたい」という感じていただけたからではないでしょうか。
●自分のような人間でも欲しいか、欲しくないか
中澤: 「昔はよかった。モノがたくさん売れて」といったことを言う人がいますよね。
土肥: よく耳にします。
中澤: でも「いまでも、やり方次第では売れる」のではないでしょうか。そうしたことを少しでも示すことができればなあと。
ちなみに、私はカフェを経営しているんです。甘いモノが苦手なのですが、ケーキをつくっています。
土肥: え、甘いモノが苦手なのに、どんなケーキが好まれるのかって分からないのでは?
中澤: 甘いモノは苦手ですが、そんな私でも食べたくなるようなケーキをつくっているんです。
土肥: あ、バイクづくりと考え方は同じですね。
中澤: ですね。私は生クリームを食べることも苦手。でも、そんな私でも食べることができるパンケーキをつくることはできないか。カフェででてくるメニューって手の込んだモノが多いんですよね。でも、私はそういう味が苦手。そんな私でも食べることができるモノをつくってきました。
ご指摘のとおり、考え方はカフェも家電も同じ。誰かを見本にしているわけではないので、新しい商品を開発する際、いわゆるマーケティング調査は行っていません。自分のような人間でも欲しいか、欲しくないか――基準はこれだけですね。
(終わり)
大手ゼネコンが建設現場の省力化を加速させている。鹿島は11日、大分市でのダム工事に日本で初めて自動ダンプカーを導入すると発表した。ブルドーザーや振動ローラーも自動化し、複数の重機を1人で操れるようにする。建設業に従事する技能労働者は、高齢化に伴う離職で8年後に約100万人減るとみられ、各社の憂慮は深い。国土交通省もIT化を促す施策を打ち出し、建設業界の生産性向上を後押しする。
◆1人で複数作業操作
「ロボットやAI(人工知能)などで効率化しなければ、建設業界はいずれ成り立たなくなる」
鹿島の押味至一社長は、「担い手不足」への懸念を強調する。若手や女性の入職者を増やす手立ての一方で、強い期待をかけるのが施工の自動化だ。
同社が大分川ダム(大分市)の建設現場に導入する自動の重機は計8台。ダンプで運んだ土砂を下ろしてブルドーザーでならし、振動ローラーで圧縮する-という一連の作業を、作業員1人がタブレット端末で行うことができる。建機大手のコマツと共同開発した。
リモコンによる遠隔操作とは異なり、一度指示した作業を各重機が連携しながら自律的に繰り返す点が大きな特長だ。GPSなどを積めば既存の重機を自動化できる仕組みで、改造費は1台当たり約500万円。鹿島は今後、搭載可能な機種を広げていく。
◆政府も3億円予算
同業他社も取り組みを急ぐ。大成建設は、ビルの柱に使う鉄骨を現場で溶接するロボットを開発。熟練工と同じペースで長時間の作業が可能といい、現場に4月以降投入する。大林組は、堤防工事などで盛り土した地盤の沈下量を、測量士がいなくてもリアルタイムに自動計測できるシステムを実用化した。
清水建設は今月から米シリコンバレーに社員を駐在させる。建設業に活用できそうな有望技術を持つITベンチャーの情報を集め、出資や提携の糸口を作るのが任務。「そうした“目利き”ができる人材を積極的に育てていきたい」(井上和幸社長)考えだ。
業界団体の日本建設業連合会が2015年に行った試算によると、14年に343万人いた技能労働者の数は25年に216万人まで減る見通し。建設業の就業者は全産業平均と比べて高齢化が著しく、新規入職者を集めるだけでは大量離職の穴を埋めることは難しい。
この事態を政府も重視。石井啓一国交相は、昨年を「生産性革命元年」と位置付けた。大型公共工事への入札には施工のIT化を義務付けるなど、「担い手不足」を解決する取り組みを加速するよう発注者の立場から促していく。産学官が連携する協議会の運営費として17年度当初予算に3億円を盛り込んだ。
引用:建設担い手不足「無人化」で解消 自動ダンプや溶接ロボ ゼネコン各社、IT化急ぐ
人口減少で需要が減少するはずのアパートの建設が急増する異変が起きている。一昨年の相続税増税に伴い、節税策として建設業者が地主らにアパート経営を持ちかけているためだ。長期の家賃保証をうたい、銀行から融資を受ける手伝いもするなど、あの手この手でアパート建設を提案している。だが、少子高齢化を背景に全国規模で空き家が急増する中で、郊外にアパートを建設しても経営が長期に成り立つとは思えない。事業としてのリスクを冷静に見極めたい。
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東京郊外で農業を営むAさん(70)は一昨年春、自宅近くの土地に2階建て総戸数8戸のアパートを建設した。大手の建設請負会社から熱心に建設を勧められたからだ。「このまま土地を遊ばせておくと、お子さんに相続税で負担がかかるといわれた」という。
アパートを長期一括で借り上げるサブリース(転貸)という手法を提案した営業マンは、向こう30年の家賃を保証し、地元銀行から融資を受ける手続きもほぼ代行してくれた。「契約の際には都内の本社ビルに呼ばれ、大きな会議室で役員と契約書を取り交わした。その後、ホテルで昼食もごちそうになった」とうれしそうに語る。
しかし、契約に盛り込まれた家賃保証は現在の家賃収入を将来にわたって保証するものではない。その額は空室率によって最低保証額まで引き下げられる可能性がある。このほかに定期的な修繕費も必要になる。アパート経営の素人であるAさんには、こうした注意点について業者側から知らされなかったようだ。
税制改正により、相続した財産から控除できる金額が縮小した。それまで相続税を支払うのは全体の4%程度だったが、改正で8%前後に増えると見込まれている。とくに都市部などでは多くの納税者が発生するとみられる。
この動きに合わせて全国でアパート建設が急増している。アパートを建てると、相続した土地の評価額が下がり、相続税が安くなるためだ。国土交通省によると、賃貸住宅着工は、昨年1~10月までの累計で前年同期に比べて10%以上増え、34万5000戸となったという。これは住宅着工全体の4割超を占める水準だ。昨年10月単月をみると前年比22%増という高い伸びをみせた。まさに賃貸住宅が住宅市場の牽引(けんいん)役となっている構図が鮮明だ。
建設費用を賄うアパート向けローンも増加している。日銀によると、昨年9月末現在の国内銀行におけるローン残高は約22兆円と前年同月より4%増えた。マイナス金利政策で金利が低下し、大家が借りやすくなったほか、金融機関も積極的な融資の開拓に乗り出している。
なかでも熱心なのが地方銀行だ。設備投資を手控える地元企業には資金需要が少なく、比較的高い金利を設定できるアパートローンが融資を増やすための有望市場と位置づけられているからだ。地銀の中には地元の地主らにアパート建設を提案するため、専門チームを設ける動きもある。
節税を望む個人と利ざやを稼ぎたい金融機関の思惑が一致した格好だが、そこには罠(わな)がある。需要が増えない限り、供給が増えれば価格は落ち込むのが経済原則だ。実際、アパート建設が増えた一昨年夏以降、首都圏におけるアパートの空室率は上昇傾向にある。
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2013年時点の全国の空き家は約850万戸に達し、このうち半分は賃貸住宅が占めるという。それでも続々と新しいアパートの建設が続いており、専門家は「すでにバブルの様相を呈している」と警告する。
地方都市の中心市街地では、閉鎖した店舗や老朽化した低層ビルをアパートに建て替える動きも広がっている。無秩序に進むアパートの建設が今後のまちづくりの支障になる恐れも指摘されている。
思いがけず空室が発生し、当初見込んだ家賃収入が得られなくなった大家と、家賃保証をした事業者との間でトラブルも起きている。政府による取引の監視も検討すべきだろう。全国で広がる住宅市場の歪(ゆが)みから目を離してはならない。(産経新聞論説委員・井伊重之)
引用:アパート建設の過熱に潜む“罠” 専門家は「すでにバブルの様相」と警告
メキシコに新たな工場の建設を計画しているとして、米国のドナルド・トランプ次期大統領に「標的」にされたトヨタ自動車の豊田章男社長が2017年1月9日(日本時間10日)、米国で今後5年間に100億ドル(1兆円超)を投資する計画を明らかにした。
米デトロイトで開かれている「2017北米国際自動車ショー」で語った。トランプ氏は自国の利益を最大限に追求する「米国ファースト」を打ち出しており、雇用拡大などを理由に、メキシコに新工場建設を計画していたフォード・モーターや、すでに生産しているゼネラル・モーターズ(GM)とともに、トヨタを名指しで「批判」していた。
■メキシコの新工場は計画どおり進める
2017年1月9日(日本時間10日)、米デトロイトで「2017北米国際自動車ショー」が開幕。同日昼、トヨタ自動車の豊田章男社長は、米国で生産する主力セダンで8代目となる「新型カムリ」の発表イベントに登場した。
豊田社長が、トランプ氏のツイッターでの批判後に記者らの前に姿を見せたのは、この日が初めて。発表イベントで、豊田社長はトヨタが米国で13万6000人を雇用していることや、これまでの60年間で220億ドル(2兆5000億円超)を投資してきたことを強調したうえで、「今後わずか5年間でさらに100億ドル(1兆円超)を投じる」計画を明らかにした。「1兆円超」の投資を公言したのは初めて。
ただ、具体的な雇用計画などにはふれていない。また、トランプ氏が1月5日付のツイッターで批判した、メキシコ・Baja(バハ)に建設予定の米国向け「カローラ」を製造する新工場については、計画どおり進める意向を示している。
トヨタは今回の計画とトランプ氏のツイッターとの関係については明らかにしていないが、タイミング的にはトランプ氏の発言にトヨタ側が反応したと受け止められている。豊田社長の発言を受けて、10日のトヨタ株は、午前こそ6日終値と比べてやや上向いて推移したものの、終値は69円安の6861円に引けた。
「カムリ」は、1982年に日本で発売して以来、「トヨタのグローバルミッドサイズセダン」として、10か所の工場で生産。100以上の国・地域で販売されていて、累計販売台数は1800万台を越える。トヨタによると、米国では自動車ウェブサイト「Cars.com」で、「あらゆるメーカーが生産するあらゆるクルマの中で『最もアメリカンなクルマ』」と評価されているクルマで、米ケンタッキー州の工場で年間40万台近く、「約1分に1台を生産している」(豊田社長)という。
新たに米国で投資する「1兆円超」は、この新型カムリなどに導入されるトヨタの新しい開発・設計手法で、「もっといいクルマづくり」に向けた「Toyota New Global Architecture」(TNGA)による構造改革を推し進めるために役立てるほか、現行の生産ラインの競争力強化を図る。
さらに現在、米国・西海岸、中部、東海岸の3か所に分かれている北米の本部機能を、テキサスの新本社に集約するためのコストや、人工知能(AI)と自動運転などの研究開発への投資に充てる。
引用:トヨタはトランプに屈したのか 米国に5年で1兆円投資の異例