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街中で気軽に借りて利用後に料金を支払って返却する自転車のシェア事業に、携帯電話大手が相次いで参入している。平成27年に子会社を設立したNTTドコモに続いて昨年11月にはソフトバンクもグループ会社と共同で参入した。自転車シェアは国土交通省も32(2020)年の東京五輪・パラリンピックに向けて普及を後押ししているが、現状ではまだまだといったところだ。記者は今回、初めて利用してみたが、ゲームなどスマートフォンの各種サービスに慣れている人なら、登録から利用まで、違和感なくできるのではないかと感じた。
ソフトバンクの自転車シェアシステム「HELLO CYCLING(ハローサイクリング)」は、スマートフォンやパソコンなどで、専用サイトにアクセスし、クレジットカード番号やメールアドレスなどを入力してあらかじめアカウントを登録しておく。自転車を利用する際には、駐輪場に行き、自転車の操作パネルに交通系ICカード、おサイフケータイや(米アップルのiPhoneなど向けの電子決済)アップルペイに対応したスマホ、マイナンバーカードなどをかざすと、自転車のカギとして利用できる。1度カードなどをカギとして登録すると、「ピッ」と操作パネルに当てるだけで、自転車の開錠ができる。
実際に、定期券として利用している交通系ICカードをカギとして登録してみたが、最初に登録する際には多少の手間を感じたものの、1度登録すると、普段財布などで持ち歩いているICカードで開錠できるため、カギの紛失の心配も少なく便利だと感じた。
利用料金の支払い方法も、現在は登録したクレジットカードのみだが、クレジットを持たない若い世代向けに、携帯電話料金支払いと一緒に利用料を支払えるようにする。料金自体は、自治体や事業者ごとに設定することができるため、まちまちだが、1日の利用で1000円程度が一般的という。
一方、自転車シェアを導入する自治体や事業者にとっては、ソフトバンクのシステムは、シェア事業者の保有する自転車や、自治体の保有する放置自転車などの既存の自転車に、データ通信に対応したSIMカードと衛星利用測位システム(GPS)を備えた「スマートロック」を取り付けるだけで事業を開始できる導入の手軽さが魅力だ。電動アシスト付き自転車以外でも、スマートロック用のバッテリーを積載すれば導入は可能という。
日本シェアサイクル協会によると、自転車シェアには、自転車1台ごとに通信機能を搭載する場合と、自転車の駐輪場に通信機能を備えた上で、自転車の返却や利用料の管理を行う場合の2パターンあり、同協会では「通信機能は利用状況の管理のために必要なので、大手通信事業者が一緒に自転車シェア事業を盛り上げるのはありがたい」と歓迎している。
ソフトバンクの自転車シェアシステムは、先に事業を始めたドコモの自転車シェアに比べて、10分の1以下の月額数千円から利用できるのが特徴。ドコモの場合は、1台数十万円の赤色の電動アシスト自転車などを用意する必要がある。ソフトバンクの自転車シェア事業子会社、オープンストリートの横井晃社長は「32年に全国で自転車1万台が利用できるようにしたい」と意気込んでいる。
東京五輪の際には公共交通機関の利用者の大幅な増加が見込まれることから、国交省はシェアサイクルの導入を強化する方針を示している。27年2月に策定した交通政策基本計画では、32年度までに100自治体での導入を目標としている。ソフトバンクはこうした方針を受けて参入を決めた。
今後は、自転車の利用者がどこの観光地を訪問したかなどのデータや分析結果を自治体に有料で提供するなど、通信事業者としてビッグデータの活用も含めたサービス展開を検討している。ただ、すでに300メートル間隔で駐輪場が設置されているパリなどと同様に、日本でも普及が進むかは未知数だ。(経済本部 大坪玲央)
引用:携帯大手が自転車事業に参入 ソフトバンクのシェアサイクルを利用してみた!東京五輪ではスイスイ
シリコンバレーで台頭しつつある新世代のモバイルやクラウド、データ技術を取り入れることで成長けん引を目指す企業が増えるなか、多くが昔ながらの問題に直面している。最新技術の導入が企業経営の形を変えつつあるのだ。非テクノロジー企業がテクノロジーやネット系のベンチャー企業の様相を強めている。
データに基づく新たな手法により、縦割りだった事業部門の間にある壁は崩れ、経営構造は平らになり、生産プロセスは簡素化しつつある。多くの企業が幹部の役割や責任を考え直すきっかけになっているとIT企業の幹部や業界アナリスト、経営コンサルタントは話す。
信用情報大手エクイファックスの世界情報責任者を務めるデーブ・ウェブ氏は「より従来型のビジネスモデルから、テクノロジーやIT周辺に構築されたビジネスモデルに移行する企業は、この進化を支えられる経営慣行を取り入れなくてはならない」と述べる。保険大手リバティ・ミューチュアル・インシュアランスや日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といった大企業はそうした変化を遂げつつある。
変わる組織の形
エクイファックスでは中核の信用調査報告サービスから新たな分野に事業を拡大するなか、テクノロジーがさまざまな面で経営の形を変えている。製品や事業部門の幹部の役職は、かつて部の最高情報責任者だった者が占めつつある。そうした幹部は、顧客データを利用した、より短期で頻繁な開発サイクルで知られる「アジャイル」管理技術をより広範に活用している。
アトランタを拠点とするエクイファックスは2015年にアラバマ州オーバーンに技術開発施設を開設した。従業員当たりのマネジャー数は他の拠点の半分ほどだ。
同施設では、エクイファックスの世界の事業向けにオートメーションサービスとプラットフォームサービスを開発している。マネジャー3人と従業員33人は、ビジネス担当とテクノロジー担当からなる小さな職能横断型チームに分かれている。マネジャーは、世界のプラットフォームエンジニアリングのバイスプレジデント、オートメーションの統括役、クラウドおよびシステムの統括役からなる。
ウェブ氏によると、これらのマネジャーはトップダウン型の指示を出す代わりに、自律型のチームがデジタルのデータソース、コラボレーションツール、シェアリングツール、強化されたフィードバックループを活用し、より迅速に結果を出す手助けをしている。
リバティ・ミューチュアルでは、個人と共有のクラウドで現在行われているオペレーションの約80%をオンラインのコラボレーションツールとシェアリングツールが占めている。ジェームズ・マクグレノン最高情報責任者(CIO)は、それらのツールによってビジネス、販売、IT部門がかつてないほどまとまったと話す。
そのため、これらの部門を統括するマネジャーの役割は「物事の進め方を指示すること」から離れ、複数の職能を備えた協力的なチームが自分たちだけで「仕事を終わらせる」ように導くコーチのような役割に移りつつあるという。
承認や書類作業の段階を省くことによって従業員は、仕事のペースを上げたり、より頻繁に新たな機能を取り入れたり、ユーザーの迅速なフィードバックに基づいて途中で軌道修正したり、失敗を早期に見つけてやり直したりする余地を得る。「それは、製品やソフトウエアの構築、全ての従業員の役割や責任に関する私たちの考え方を全面的に変える」とマクグレノン氏は話す。
フォレスター・リサーチのバイスプレジデント兼アナリスト、テッド・シェードラー氏は「デジタルが会社の一定の割合に達したら、再編が必要だ」と述べた。
世界全体で2兆ドル超
マッキンゼー・アンド・カンパニーでビジネステクノロジー慣行を担当するディレクター、ポール・ウィルモット氏は、これらの新たなモデルに共通するゴールが動きの加速であり、「中間管理の階層をいくつか取り除くこととデジタルアプリが相まって、それが可能になる」と話す。
調査会社インターナショナル・データ・コープ(IDC)によると、デジタルテクノロジー支出は年平均16%を超えるペースで拡大し、2019年には米企業だけで約7320億ドルに達する見通しだ。世界全体では2兆1000億ドルに上ると予想されている。
ガートナーのバイスプレジデント、マーク・ラスキーノ氏は、意思決定でウェブ発のデータに頼る割合が高い新たなデジタルベンチャーについて、可能な場合は常にタスクの自動化技術を使う傾向にあると話す。
ボストン大学のマーシャル ・ バン・アルスタイン教授らは昨年ハーバード・ビジネス・レビュー誌で、フェイスブック、グーグルの親会社アルファベットといった消費者向けインターネットの大手が巨大な規模を特徴とするのと同様に、非テクノロジー企業がデジタルプラットフォームの規模拡大にますます力を入れていると主張した。
幹部にもインスタントメッセージ
デブ・ヘンレッタ氏はP&Gでアジア地区を統括して数年たった頃、テクノロジーに詳しい若いデータアナリストを月次戦略会議に出席させると主張して、幹部チームの反感を買った。
ヘンレッタ氏は「彼の作ったアルゴリズムは、事業の問題を示唆し始めていた初期の傾向を調べるのに役だった」と述べ、最近導入されたデジタルツールを通して同社に入ってくるセルスルー(販売)、顧客情報、市場シェア、その他データを総合したリポートに言及した。
ヘンレッタ氏は、経営幹部の会議に下位のマネジャーを招き、会社のヒエラルキーを覆した自身のやり方に、部下が納得したわけではないと話す。同氏は12年に米国を拠点とするP&Gの電子商取引部門を引き継ぎ、15年半ばにP&Gを退社。現在は経営コンサルティング会社SSA & Co.のシニアアドバイザーを務めている。
アクセンチュアのCIOアンドリュー・ウィルソン氏は、自身が働き始めた若い頃には、「経営幹部にインスタントメッセージを送る」というのはばかげた考えだったと話す。それが「Microsoft Teams(マイクロソフト・チーム)」「Slack(スラック)」「Workplace by Facebook(ワークプレイス・バイ・フェイスブック)」といった新たなコラボレーションツールの登場で、マネジャーは「接続と接触を保つ」という新たな義務を課されているという。
By ANGUS LOTEN AND JOHN SIMONS
先日、米国のシアトル、サンフランシスコへ企業視察に行ってきました。両都市ともさまざまな繁盛店を見ることができて驚き連続だったのですが、今回はサンフランシスコで視察した店舗事例をご紹介します。
【商品が出てくるボックスのドアを開けたところ】
テクノロジーベンチャーが集まるシリコンバレーが近隣にあるため、サンフランシスコには最新のIT技術を活用した店舗や施設が多数存在していました。その中でも特に斬新な取り組みをしていたのが「Eatsa」(イーツァ)です。この店はサラダを売るファストフード店ですが、ただのファストフードではありません。何と無人なのです。現地の人々の間でも「ロボットレストラン」として話題になっている同店の実態に迫ります。
●ロボットレストランと呼ばれるわけ
サンフランシスコ滞在中に帯同していたある社長さんから「サンフランシスコにこんなおもしろい店があるらしいですよ」と教えていただいた店がありました。それがEatsaでした。
聞くところによると、店のフロント部分(接客部分)が完全に無人化されているというのです。レジのキャッシャーや接客をするスタッフがいないレストラン。一体どんなところなのかとワクワクしながら店に向かいました。
現在、Eatsaはサンフランシスコだけで4店舗展開していて、筆者が訪れたのはスピア通りの「リンカーンセンター」というオフィスビルの1Fにある店でした。平日朝7時から夕方5時までのオープンという、完全にオフィスランチ需要を狙った店です。
Eatsaに入って、改めて無人化の光景に驚きました。そこにはオーダー用のタッチパネルの受付機械が10台ほど並び、その右側に透明ボックスが20個ほどコインロッカーのように並んでいたのです。店内は顧客でにぎわっていますが、店員はいません。
接客する人がいないのでオーダーは当然セルフです。オーダー用のパネルからほしいメニューの写真をタッチして選んでいきます。現金のやり取りはなく、すべてクレジットカード決済です。そこで決済すると右側の「最新オーダー受注画面」に名前が出てきます。
料理ができ上がると「〇番 ××様」と名前が表示されるので、そのボックスの前に行って画面をタップ。扉が開いてオーダーした料理が出てくるという仕組みです。レジがないのでレシートはなく、後からメールで送られてくるという仕組みです。
注文から商品を受け取るまでの過程に、店のスタッフとのやり取りや会話はありませんし、そもそも店員の姿は見えません。そして提供方法がとても未来的であり、ロボット的だということで、現地ではロボットレストランや、無人ファストフード店などと呼ばれているのです。
一緒に視察した方々も全員初めてだったこともあり、こんな店が世の中にあったのかと一様に驚きました。
●人件費削減で質の良い商品を安く提供
Eatsaは2015年8月に開業したばかりです。共同創業者の1人はグーグルでプロダクトマネジャーを務めた人だということです。
どうしてもこの仕組みのおもしろさに目が行きがちですが、実際には同店で提供される商品の良さと価格、そして利便性という点で顧客の支持を得ているようです。
同店のコンセプトは「Better、Faster Food」(超速フード)。ファストフードよりも、もっと速い店とでも言えるでしょうか。最新のIT技術を組み合わせることによってこのコンセプトを実現しています。
しかし、人気なのは速さだけではありません。「ここのサラダが安くておいしい」と地元のビジネスマンには人気なのです。
米国は特に健康志向の強い国です。最近ではオーガニック食品を専門に扱う食品スーパーも続々と誕生するほか、ホールフーズのようなナチュラル系やオーガニック食材に強いスーパーも人気があり、出店の勢いを増しています。
「食のトレンドはサンフランシスコで始まり、ニューヨークで育つ」と言われるほど、同地は食に恵まれたエリアです。鮮魚や青果など農産物の調達がしやすい立地であるため、とてもおいしい素材を揃えることが可能です。従って、米国の他エリアよりもさらに健康志向が強いエリア特性になっているのです。
このような志向を持った顧客に合わせて、Eatsaの提供メニューはサラダが中心で、8種類すべてに穀物「キヌア」が入っています。キヌアとは、南米で栽培されている擬似穀物。モデルやセレブの間で栄養価が高くダイエット食にもなると人気になっているスーパーフードです。
BENTO BOWLと名付けられたテリヤキソースのかかったものや、カレー味、地中海料理風などさまざまなメニューがありますが、ベースになっている基本メニューから苦手な食材などをカットしたり、好きなものをトッピングしたりもできます。意外にボリュームがあり、ランチはこれ一品あれば十分です。各6.95ドル(約830円)が基本で、多くの人はトッピングなどで10ドルほどになりますが、満足度が高いランチとして認識されているようです。
全品500カロリー前後とダイエット中の人には嬉しい食事であるため、ターゲットは女性だけではなく、健康に気を遣うヒマのないビジネスマンからも人気なのは納得できます。
どこの国でも、有機野菜をはじめとする新鮮で健康的な食品は割高ですが、Eatsaはこの無人システムによって人件費を平均よりも30%近く削って、高品質なヘルシーフードを全品6.95ドルで提供しています。ローコストオペレーションで、誰もが気軽に利用しやすい低価格なヘルシーレストランを実現させている点がイノベーティブなのです。
現在、同店のバックヤードでは5人ほどのスタッフが調理をしているようですが、顧客からはその様子はまったく見えません。また、調理担当者は1人一台「iPad」を持って自分のタスク管理をしているとのことで、その現場のオペレーションもシステマチックに変えているようです。また、顧客も同社のアプリを入れるとスマホからプレオーダーできる便利な仕組みも導入していて、それを使えば店に着くとすぐに商品を受け取ることが可能です。「待ち時間0分」の究極のファストフード店といえるでしょう。
●日本の小売・サービス業のヒントに
米国はまだ人口が減少していませんが、人件費の急騰は日本と同様です。時給も非常に高いのが悩みの種です。その点、Eatsaのような仕組みであれば人件費を抑えた新しいオペレーションによって収益を高めることができます。
日本の場合は、今も有効求人倍率が1.38倍、新規有効求人倍率が2.09倍(いずれも2016年10月度厚生労働省発表数値)と上昇を続けています。特に外食業界は募集してもなかなか人が集まらない状況が続いています。
その意味では、店頭のスタッフをゼロにするという発想はこれからの日本の小売・サービス業において必要なのではないかと思います。もちろん、すべての業態で店頭に人が必要ないのではなく、なくしても成り立つ業態はあるはずです。
高い採用コストをかけて人を雇ってもすぐに辞めてしまう。採用はしたものの、店頭での接客サービス力が低くてクレームになる。こんな現場は意外と多いものです。
Eatsaのようなロボットレストランはこのような悩みを解決してくれるビジネスモデルでしょう。特に人手不足に悩む日本の小売・サービス業においてはかなりのインパクトになるのではないかと感じています。
消費不況に打ち勝つための経営のヒントをEatsaからぜひつかんでみてはいかがでしょうか。
(岩崎剛幸)
□バロックジャパンリミテッド・村井博之社長
「MOUSSY(マウジー)」などのファッションブランドを展開するバロックジャパンリミテッドは、渋谷109といったファッションビルに出店し、10代後半~20代の若い女性に支持されている。高い商品回転率と利益率を強みに、国内事業を強化するとともにグローバル戦略を加速させる。村井博之社長は「日本のファッションブランドとして世界へ飛躍させる」と話す。
--経営では何を重視しているのか
「売上高ではなく利益率を重視している。毎週新商品を投入して2~3週間で売り切っている。このための大きな戦力が『カリスマ店員』といわれる販売員だ。魅力的な接客でコーディネートを提案している。結果として業界最高水準の商品回転率と利益率を実現している。2017年1月期の経常利益率は8.8%を見込んでいるが、ZARAを展開するインデックスやH&Mといった欧米企業は同15%をたたき出している。まだまだ利益率には満足していない。当社も欧米並みの水準を目指す」
--電子商取引(EC)を強化している
「すでに導入しているが、春ごろには新しいECエンジンが本格始動する。このため新システムを活用して在庫をECと実店舗で一括管理して効率化する。新規顧客を開拓することで、現在の売上高に対する比率約10%をなるべく早く20%に引き上げる。他社のECとの差別化を図るため、VR(仮想現実)の導入も検討している」
--会員制交流サイト(SNS)を活用してPRに力を入れているが
「テレビCMのようなマス広告より重視している。カリスマ店員がSNSで情報を発信すると、大勢の閲覧者が情報を拡散してくれるので波及効果が大きい。とくに写真共有アプリのインスタグラムでは、数万人のフォロワーを獲得した当社社員が複数いる。自社の通販マガジンと合わせて効率的にPRしている」
--昨年11月に東証1部市場に上場した
「海外進出時の信頼度を上げ、幅広く人材採用をすることが目的だ。得た資金は新規出店とシステム更新などに充てている」
--海外展開に注力している
「日本は少子化で市場が縮小しているために積極的に出店している。とくに中国では靴製造小売り最大手のベル・インターナショナルと13年に合弁会社を設立した。以後出店は、それまでの8倍のスピードに加速させた。すでにマウジーの店舗数は中国の方が日本より多い。北米については現在ニューヨークに2店舗を構えた。家賃や人件費が高いので利益を出すのは難しいが、中国と米国のファッションアパレル市場はほぼ同じ規模なので数年かけて動向をつかみたい。20年頃には海外の売上高・店舗数ともに国内を上回る規模に成長するだろう」
引用:若い女性の支持得るアパレルブランド 業界最高水準の商品回転率支える「カリスマ店員」
大手オフィス家具メーカーが2017年向けの製品戦略として、働き方改革を加速するオフィス空間づくりに力を入れている。電通社員の過労死事件を契機として、長時間労働に対する批判が高まっている点も考慮。コミュニケーションの活性化や業務スピードの向上につながるような提案が目立つ。
◆国産木材で心地よく
内田洋行は、従業員が最適に働ける場所を共用スペースの中から探す「アクティブ・コモンズ」という考え方を提唱、自社オフィスでも取り入れている。効果は顕著で、会議時間は4年前に比べ2割減少し、顧客との対面時間は8割増加した。
こうした実績を踏まえ、推進しているのが国産木材を活用したオフィスづくりで、「WOOD INFILL(ウッドインフィル)」という空間構築システムの販売に注力。LED(発光ダイオード)照明やプロジェクターなどを簡単に取り付けられ、部屋の中にもう一つの部屋を創り出す。
国産材の活用を訴求する理由について、大久保昇社長は「自然と人が集まってくるような、心地よい空間を演出するため」と説明する。これにより組織間の連携強化やコミュニケーションの活性化、よりイノベーティブな発想など「経営者が最も求めているものを生み出す原動力となる」と強調する。結果として、仕事の効率化にもつながるとみている。
一方、「アシタのオフィス」を掲げるのはイトーキ。「ここで働く 私が選ぶ」をキーワードに、自律性、組織マインド、個人の気持ちという3つのコンセプトを踏まえオフィスの多様性を提案する。
例えば「リビング・ワークスペース」は、チーム運営で行き詰まったときを考えて設計。リビングルームのような居心地のよい空間とすることで、リフレッシュできるようにした。
沈思黙考という空間も用意。他者を自分の世界から完全に取り除き、自分やプロジェクトなどにきちんと向き合うことができるようにする。
◆新たな価値を「共創」
岡村製作所は、働き方や働く場をさまざまな関係者とともに考えていく活動「WORK MILL(ワークミル)」を立ち上げた。その一環として17年から春と秋にビジネス誌を発行する。ソリューション戦略部未来企画室の遅野井宏室長は「一人一人の生産性に着目しながら楽しい働き方を提唱していきたい」と語る。
また組織の壁を越えて多様な人材を集め、価値創造を目指すため、東京と大阪、名古屋の計4カ所で「共創」を切り口にした空間を運営。その過程で得た知見を発信していく。
政府は子育てと仕事の両立支援のほか、女性や高齢者、障害者の活躍推進、外国人など多様な人材の活用など雇用環境の整備を進めている。企業が競争力やブランド力を高めるためには、こうした動きに積極的に呼応する姿勢が求められる。20年に向けて大型オフィスビルの開発ラッシュも追い風となり、働き方改革に基づいたオフィスづくりは一段と加速するとみられる。(伊藤俊祐)
引用:大手オフィス家具メーカー、「働き方改革」加速させる空間づくり提案
ロボットやIoT(モノのインターネット化)、AI(人工知能)などの先端技術を活用して生産性向上や人手不足の解消を図る企業現場のイノベーション(革新)の動きが今年から本格化する。これに対応し、機械メーカーやIT大手が製品やサービスを相次ぎ投入。川崎重工業はさらなる自動化需要を狙い、格安の産業用ロボットを食品業界向けに売り込み始めた。NECはAIや画像認識の技術を製造業向けに展開し、部品管理に役立てようとしている。「第4次産業革命」とも呼ばれるこの革新の取り組みで日本はドイツや米国に後れをとってきたが、少子高齢化への危機感も背景に巻き返しが始まっている。
◇
◆電子部品から弁当へ
2つの腕を持つロボットが、生産ラインを流れる弁当の上にしょうゆの入ったプラスチック容器を次々と置いていく。単純な作業だけに、人手をかけず完全自動化する意味がある。しかもロボットは疲れを知らない。
川崎重工業は昨年12月、これまで電子基板の組み立てや金型の清掃に用いられてきた双腕ロボット「デュアロ」を食品業界にも売り始めた。弁当の盛りつけ以外にも、コンビニのおにぎりを「ばんじゅう」と呼ばれる容器に詰めるといった用途を想定している。
食品業界に目をつけたのは、電子部品工場と同様、人手確保に苦しみ、人からロボットへの置き換えが見込めると踏んだためだ。一般的な産業用ロボットが1000万円程度するのに対し、デュアロは280万円とかなり安い。半導体製造に使われている既存ロボットを応用するなどして、一般的なパートタイマーの人件費水準を超えないようにしたという。
発売から1年半で1000台以上を販売、産業用ロボットとしては異例のヒットとなっている。金花芳則社長は「自社では一番の期待」と語り、食品業界への普及に期待を寄せる。
NECは、独自の「物体指紋認証技術」を活用、生産ラインを流れるねじなどの部品を個別管理できるサービスを今年前半から提供する。
生産ラインの脇に置いたカメラで部品を撮影。一つ一つで異なる表面の微細な紋様(物体指紋)を識別し、AIで解析しながら不良品を見つけ出す。撮影データを保存しておけば、出荷後のトレーサビリティー(追跡管理)や真がんの判定も可能。同社では「最終的には省人化にもなる」と話す。
同社の物体指紋認証技術はこれまで、抱っこひもブランド「エルゴベビー」の偽造品を見つけるのに使われてきた。製造現場に定着すれば、今後5年で100億円程度のより大きなビジネスが見込めるとみている。
◆人手不足解消の助け
一方、建設作業の支援サービス「スマートコンストラクション」を展開するコマツが活用するのは、小型無人機のドローンや、通信機能を搭載した油圧ショベルだ。同サービスは15年2月に提供を始め、これまで2000カ所の現場で採用されている。
人間が行っていた測量をドローンに肩代わりさせ、2人で約2週間かかっていた作業期間を1日に短縮。実際の工事では、油圧ショベルのGPSデータとドローンの測量データを組み合わせることで、どの部分をどれだけ掘ればいいかがひと目で分かる。油圧ショベルには自動掘削機能も搭載され、大まかに掘った後なら熟練者の手を借りなくてもプラスマイナス3センチの誤差で掘ることができる。
日本建設業連合会によると、25年には350万人の労働需要に対し、130万人の不足が生じる見通し。コマツでは、スマートコンストラクションが、人手不足解消の大きな助けになるとみている。
もともとドイツが「インダストリー4.0」を打ち出し、第4次産業革命の先陣を切った背景には、製造に従事する人口の減少があった。ドイツ以上に深刻な人手不足に直面し、課題先進国といわれる日本でも、革命が起きる可能性は十分にある。
コマツの大橋徹二社長は「課題先進国といわれるなか、日本企業もIoT活用で競争力を高めようと本気になっている」と話し、サービスの普及に意欲をみせる。(井田通人)
引用:人口減「4次革命」で巻き返し ロボ・AI・IoT、現場力向上へ新製品続々
中小企業による海外展開が活発化している。世界ベースでの販売が好調な日系の自動車メーカーが生産体制を強化しているのに加え、中国や米国の越境電子商取引(EC)サイトで売り上げが伸びているのが主な原動力となっている。こうした動きを後押しする支援制度も相次いでおり、海外展開の動きはさらに加速しそうだ。
◆下がる参入障壁
日本政策金融公庫(日本公庫)は輸出に取り組む中小企業・小規模事業者に向けて、「海外展開・事業再編資金」という融資を行っている。2015年度の融資額は前年度比で11%増の265億円と堅調に推移したが、16年度に入ると伸び率が急上昇。上期の融資額が前年同期比28%増の231億円と昨年度の年間実績に迫る数字を残した。
企業規模別にみると、従業員がおよそ10人以下の小規模事業者の伸びが大きく、融資額は2.3倍の70億円に達した。「海外展開の参入障壁が下がってきた」(岡山武生・海外支援グループリーダー)というように、越境ECサイトを活用した輸出拡大に取り組む動きが顕著な形で広がっており、仕入れ代金などの運転資金を調達するケースが増えているのだ。
扱っている商品はフィルム対応の中古のカメラやフィギュア、文房具などのニッチな商品。専門性を生かすことができ小回りも効くので、小規模事業者の「伸びしろが広がっている」(岡山氏)。中国向けの越境EC市場はさらに拡大するとの見方が圧倒的なだけに、一連の構図はさらに鮮明になりそうだ。
比較的規模の大きい中小企業向け融資総額は41%増の160億円だった。最大の牽引(けんいん)役は自動車産業だ。金型や切削加工、樹脂成型といった部品の性能を左右する領域では、日本の中小企業の能力が圧倒的に高く、中国やタイ、インドネシアなどで構築されている一大ネットワークに組み込まれている。
また、日本と異なり海外の拠点では系列を超えた取引も積極的に行われており「海外でフィールドを広げようと意欲に満ちた顧客が増えている」(渋沢晃・国際業務総括グループ長)という。製造業に加えて飲食店をはじめとしたサービス産業の進出も、最近では目立っている。
◆信用保証にも注力
海外進出の支援態勢にも力を入れている。その一つが、債務の保証と同様の目的のために発行される信用状を示す「スタンドバイ・クレジット(SBLC)」制度の導入だ。中小企業の海外支店・現地法人が海外金融機関から現地流通通貨建ての融資を受ける際、日本公庫がSBLCを金融機関に発行するもので、11カ国・地域の金融機関と提携している。為替リスクの回避といった課題への対応だけではなく、地場銀行ならではのディープな情報に接することができる点も売り物だ。
プラスチック製容器のメーカー、新廣瀬商事(福岡県大刀洗町)はこの制度を活用して中国の平安銀行から資金を調達。現地の富裕層向けの食材に使われる、高品質容器の生産体制を増強する。
中小企業基盤整備機構(中小機構)も海外の進出支援に力を入れている。その一環として2月下旬に、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムの医療機器企業約40社の経営者を日本に招き、神戸と東京で、商談会を中心とするビジネスマッチングを実施する。医療機器分野では最大規模の商談会で、日本側は200社強の中小企業が参加する見通しだ。
進出支援地域も多岐にわたりつつある。みずほ情報総研(東京都千代田区)は東京都大田区との間で、区内企業によるアジア・アフリカ向けの製品開発や国際貢献などについて連携協定を結んだ。
みずほ情報総研は15年、国内の農林水産業の海外進出を支援する事業を開始。東アフリカのルワンダでは、日本人による農業ベンチャー「ブルーム・ヒルズ・ルワンダ」の立ち上がりを支援した。そのベンチャーは種のない観賞用のヒマワリを現地で生産。日本貿易振興機構が昨年8月にケニアで主催した展示会で、区内企業の製品とともにヒマワリを紹介した。生産に当たっては種をまく穴を地面に掘る農機具が必要で、大田区の企業と連携して開発した。
「その企業はわれわれの要望に応え、現地仕様にカスタマイズしてくれた。そこまでしてくれるケースはなかなかない」(佐々木誠夫・コンサルティング事業推進部事業開発チーム次長)といったように、大田区のものづくりに対する姿勢は関係各位に絶対的な信頼感を与えた。これが今回の提携まで発展した要因だ。
これまでは大企業が中心になって、日本のものづくり技術や品質に対する信頼感を世界に広げてきた。海外での需要開拓を後押しする各種支援制度の拡充を背景に、今度は中小企業がその役割を担おうとしている。
引用:越境ECサイト活用 支援制度を拡充 日本公庫・中小機構
世界最大のヘッジファンド会社、ブリッジウォーター・アソシエーツの内部では、ソフトウエアエンジニアが極秘プロジェクトを進めている。同社の創業者レイ・ダリオ氏はこのプロジェクトを「ザ・ブック・オブ・ザ・フューチャー(未来の書)」と呼ぶこともある。
プロジェクトが目指すのは経営のほとんどを自動化する技術だ。この技術は同社を徹底した公開性が確保される場とし、そしてダリオ氏が去っても存続しうる企業に育てるという同氏のライフワークの集大成となるはずだ。
ブリッジウォーターでは、ほとんどの会議が録音され、社員は常に互いの問題を指摘することが求められる。社員の欠点は頻繁に調査され、個人の業績は多くの資料に基づいて評価される。ダリオ氏はその全てを見守っている。
創業者の頭脳をコンピューターに移植
新たな技術が実現すれば、ダリオ氏の型破りな経営手法は1つのソフトウエアシステムに収められる。社員がある特定の電話を掛けるべきかどうかに至るまで、このソフトは社員のあらゆる行動について、GPS(衛星利用測位システム)並みに詳細な指示を与えることになるかもしれない。
ソフトは現在開発中で、その運用の詳細については今も社内で議論されている。このプロジェクトに詳しいある社員は、「レイの頭脳をコンピューターにしようとするようなものだ」と語った。
ブリッジウォーターはヘッジファンドとしては最大の1600億ドル(約18兆円)の資産を運用している。顧客の資金をヘッジファンドに投資するLCHインベストメンツによると、ブリッジウォーターは同業他社の2倍もの総利益を顧客にもたらしている。調査会社インスティチューショナル・インベスターズ・アルファによると、ダリオ氏の昨年の個人としての報酬は14億ドルだった。
ところが今年は同社の旗艦ファンドの運用成績が一時、前年同期比で約12%減となり、社内に危機感が募った。このファンドはその後持ち直し、今月中旬には3.9%増となったが、これより手数料の安いファンドは8.1%増だった。
「戦いを選ぶな。全ての戦いに挑め」
ブリッジウォーターの社員が従うべき規則は「プリンシプルズ(原則)」という名称で知られる123ページの公開マニフェストの中に収められている。社員は全員、この原則を身につけ、実行するよう求められている。原則には、「長期的に見れば、人間は概して自分にふさわしいものを手にすることになる」などという格言と共に、「戦いを選ぶな。全ての戦いに挑め」といったダリオ氏からのアドバイスがずらりと並んでいる。
ブリッジウォーターによると、新入社員のおよそ5分の1が1年目を終えることなく退社するという。現役社員と元社員の5人に話を聞いたところ、プレッシャーが非常に大きいため、会社に残った社員がトイレで泣いていることもあるそうだ。本稿はこの5人に加え、10人を超える現役社員と元社員、さらに、同社に近い人達の話に基づいて執筆した。
ダリオ氏は6年前にメンター(助言者)役に退いたが、今年になって経営の指揮を執るべく復帰した。それから数週間もたたないうちに、ダリオ氏はマネージャーを招集し、会社の肥大化と効率の低下を指摘した。これを解決するには「リノベーション」、つまり能力が劣る社員の解雇が必要だと述べた。
人員削減と「徹底した透明性」の見直し
その直後から人員削減が始まった。ダリオ氏の復帰以降、社員数は約150人、割合で言えば10%減少した。今後さらに数百人が削減される可能性があるが、最終的には一部のポジションについては新規採用で穴埋めされるとみられる。同社はかつて、年末のパーティーのためにクリスマスツリーを天井から逆さづりにするなど凝った飾りつけをしたこともあったが、今年は予算を20%削減した。
今年、社内の混乱が外に漏れたことで傷ついたダリオ氏は、上層部が行った議論や決定の全てを全社員に知らせるという何十年も前からの制度を改め、約10%の社員だけに「徹底した透明性」(ダリオ氏)を確保することにした。
ダリオ氏は新たな原則を書き留めた。「徹底した透明性は責任をもって応じる人間に授けなければならない。それができない人間に与えてはならない」というものだ。この原則はまだ公表されていない。
この新たな原則が情報漏えいに見合ったものかどうかについての公開会議の場で、ある社員がダリオ氏に反論すると、ダリオ氏は同社の経営システムを作った人間として適切な対応と判断したと回答した。
2006年の段階で金融危機を予見
ダリオ氏は1975年にマンハッタンの寝室2つのアパートに調査会社ブリッジウォーターを設立、マクロ経済動向予測で注目を集めた。
ダリオ氏がよく言うのは、市場は経済という誤解された機械の働きを映し出しているという考え方が自分の成功を支えているということだ。その機械の仕組みを読み解くには、考え抜いた末に意見を戦わせながら、つらくても徹底的に真実に迫ろうとする姿勢が欠かせないと語る。だからこそ社員は繰り返し、率直に互いに意見を戦わせることが求められている。
ダリオ氏は、経済とは「無数の単純なことが同時に動いているだけ」と書いたことがある。コンピューター主導の取引が流行する何十年も前に、ブリッジウォーターは国際金利や小売売上高などさまざまなデータの関係性を追い、投資アルゴリズムを構築し始めた。今では参照するデータは1億種類に上る。
こうしたアルゴリズムを具体化した旗艦ヘッジファンド「ピュア・アルファ」は株式や債券、通貨などの資産の売買にデータを活用している。ブリッジウォーターの投資家への説明によると、同ファンドは2006年の段階で金融危機を予見するなど以前から世界中の好況、不況を予測してきた。
ダリオ氏は人間も機械のように動くと考えている。機械という言葉は「原則」の中に84回も登場する。ダリオ氏によると、問題は人間が感情に邪魔されて最高の成果を挙げることができないという。この問題は組織だった訓練によって克服できるとダリオ氏は考えている。
経営を自動化するための「未来の書」
ダリオ氏は経営についても同じように考えている。成功を収めているマネージャーは「自分が望むものを手に入れるために正しいことをする正しい人々で構成する『機械』を設計する」。ダリオ氏は原則にそう記している。
経営を自動化するためのソフト「未来の書」――ダリオ氏は「ジ・ワン・シング」と呼ぶこともある――にはのちに「プリンシプルズ・オペレーティング・システム」(PriOS)というより改まった名称が与えられた。このシステムは同社の投資プロセスと同様に経営も組織的に行うことを目指している。
システムにはダリオ氏が社員に要求するいくつもの性格検査のデータが組み込まれている。ある検査では、マネージャーが筆記試験を受け、それぞれの「階層」が判定される。階層とは、カナダ生まれの精神分析学者、故エリオット・ジャック氏が開発した概念に関する技能の得点を指す。
マネージャーはこの検査で、「ブリッジウォーターが今、直面している最大の問題は何か」などの設問に答える。長期的な傾向を見極める先天的な能力があることが分かったマネージャーには高い得点が与えられる。
ダリオ氏は社内で最も高い階層の得点を保持している。同社は社員に対し、ダリオ氏の得点が世界最高レベルであることを明らかにしている。
同じように、ブリッジウォーターのソフトはダリオ氏を、投資やリーダーシップといった点において社内で最も「信用できる」社員だと判断している。つまり、ダリオ氏の意見はより大きな影響力があるということになる。
*この記事は後編に続きます(有料)>>
By ROB COPELAND and BRADLEY HOPE
世界各国の高速鉄道計画で、日本の新幹線技術の採用が相次いでいる。安全性や定時運行、快適性を高次元で融合した総合力が、新興国を中心に高い品質を求める需要と合致。台湾を皮切りに米国、インドでも導入が決まったほか、昨年はタイでも閣僚間での覚書が交わされた。高速鉄道計画は今後もアジアを中心に大規模プロジェクトがめじろ押し。日本の高度経済成長を支えた「夢の超特急」は半世紀を経て、世界経済を牽引(けんいん)し始めている。(佐久間修志)
◆正確・安全性を評価
「高速鉄道は夢のようなものだったが、それを日本が現実にしている」
京都市で昨年11月、世界の主要な高速鉄道関係者約280人が出席したフォーラムで、マレーシア陸上公共交通委員会のサイド・ハミド・アルバ議長は日本の新幹線技術を手放しで褒めちぎった。主催した国際高速鉄道協会の宿利正史理事長は「議論は日本の新幹線の利点から、(新幹線の優位性を前提に)日本の経験を世界の変化にどう生かすかに移っていた」と隔世の感を口にする。
新幹線に対する高い評価は、海外の高速鉄道計画で次々と採用が決まっていることからもうかがえる。2007年に台湾での初採用を皮切りに一昨年は米テキサス州(ダラス-ヒューストン)、インド(ムンバイ-アーメダバード)での導入が決まった。昨年8月には、石井啓一国土交通相とタイのアーコム運輸相が同国の首都バンコクと北部チェンマイを結ぶ路線で、新幹線導入へ協力する覚書を交わした。
時刻表通りに運行するなど高い正確性に加え、運行による乗客の死亡事故はゼロ。東日本大震災の際も脱線しなかった。折り紙付きの技術だけでなく、高品質ゆえに不利に働きがちだった初期費用の高さも、最近では運営や保守まで含めた中長期的コストを重視する流れで「必要な投資」との認識に転換しつつある。
◆中国の“敵失”で有利
接触や衝突事故に備え、頑強な車体基準が必要とされた米国でも、新幹線導入を見据え、新たな基準作りに向けた検討が進みつつある。加えて鉄道インフラ輸出で最大のライバルと目される中国受注の高速鉄道事業が、各地で計画の遅延やトラブルで暗礁に乗り上げるという“敵失”も続発し、新幹線に有利な流れが生まれている。
今後も新幹線システムの浸透は進みそうだ。直近ではマレーシアの首都クアラルンプールとシンガポールの2国間を結ぶ高速鉄道計画について、両国が26年の開業を目指し、今年後半に国際入札を行うことを決めた。東南アジア経済の要所に位置する総延長約350キロの受注競争は日本と中国の一騎打ちとみられる。マレーシアの政府関係者は「コスト面でもシステム面でも最良のものを選びたい」と話す。
2011~13年平均で20兆6000億円とされる世界の鉄道需要は17~19年には2割増の24兆2000億円まで膨らむとされる。少子高齢化で国内市場が縮小する中、政府は鉄道をはじめとするインフラ輸出を成長戦略の柱と位置付けており、政府の後押しも追い風に、世界を股に掛けた新幹線の快走は今後も続きそうだ。
引用:夢の超特急、世界に売り込め 日本の新幹線技術、各国で採用相次ぐ
2016年も残すところわずかである。おかげさまで今年は「ITmedia ビジネスオンライン」に49本もの連載記事を執筆した。自分でもよくぞ毎週毎週書くことがあるものだとちょっと呆れるのだが、読んでくださる方がいるからこそ書き続けることができるわけで、深く御礼申し上げる次第である。
【トヨタ切ってのスポーツモデルである86にもウィング付きのモデルが】
この1年、いったいどんな記事が読者の皆さんの興味をひいたのかを編集部に調べてもらった。結果、記事アクセスランキングのベスト5は以下のようになった。
1位:ついに「10速オートマ」の時代が始まる
2位:一周して最先端、オートマにはないMT車の“超”可能性
3位:クルマは本当に高くなったのか?
4位:スポーツカーにウイングは必要か?
5位:ホンダNSX 技術者の本気と経営の空回り
何と、1位、2位は具体的なクルマの話でなく、トランスミッションの話。それと、ビジネスニュースとしては今後の20年の自動車産業を占う重要な「トヨタの提携戦略」など、ビジネスパーソンの読者が気になるような記事もあったのだが、それはベスト5には入らなかった。けっこう工学的な話が読まれているのも意外な結果だった。おもしろいものである。
さて、こうした人気記事を振り返ろうとするが、どれもそれなりに複雑な話で簡単にはまとまらない。詳細は各記事のリンクで読んでいただくにしても、概要くらいはまとめ直さなくてならないだろう。
●ついに「10速オートマ」の時代が始まる
これはトランスミッションの多段化とは本質的にどんな意味があるのかという話だ。
近年、欧州で主流になっている小排気量ターボは決して万能ユニットではなく、高回転で使うとエコ性能がガタ落ちする。これを低燃費ユニットたらしめているのは低回転で過給して低速トルクを上げ、トランスミッションを駆使してそうした低回転を徹底的に使うという手法である。
だから、ドライバーがアクセルを極端に踏み込むような操作がない限り、ずっと低回転だけを使っていたい。トップギヤで低い回転数にするためにはトップギヤのギヤ比を小さくしなくてはならない。一方でローギヤが高いと発進が辛くなる。両方を解決するには、トランスミッションの一番低いギヤと高いギヤの比率を大きくとる必要がある。ローからトップまでのギヤ比差(レシオカバレッジ)が大きくなるので、ギヤの段を増やさないと一段あたりの段差が大きくなり過ぎてレシオをスムーズにつなぐことができなくなる。そのための多段化だ。
ホンダが10速オートマを出してきたのは、従来のハイブリッドだけでなく小排気量ターボもラインアップに加える戦略に変わったからで、実際、ステップワゴン用に小排気量ターボユニットを搭載し始めた。ただし、これはまだ10速オートマではない。
恐らく、欧州など巡航スピードの高い国への対応として10速オートマは採用されるはずだ。日本の制限速度100キロだと、レシオカバレッジで10倍を目指す10速オートマは少々オーバースペックだからだ。ただし、それも第二東名高速の120キロでこれから変わっていくかもしれない。最高速度の変化はクルマのエンジニアリングにも影響を与えるのである。
●一周して最先端、オートマにはないMT車の“超”可能性
マニュアルトランスミッション(MT)は消え去るかもしれないという空気が消えつつある。一昔前と違って、ここ数年MTを搭載したというクルマが少しずつではあるが増えている。やはり駆動力制御のダイレクト感や、意図していない操作は決して行われないということがMTの大きな利点である。
といった普遍的なMTの価値と違う、超可能性を唱え始めたのはマツダである。マツダは高齢化社会に対してMTがボケ防止につながるというテーマで、何と東京大学に投資して講座を設けて真剣に研究している。基本となるのは米国の心理学者、ミハイ・チクセントミハイが提唱する「フロー体験」である。ゲームを想像してもらうと分かりやすいが、簡単過ぎるゲームはすぐに飽きてしまうし、あまりに難しいゲームは戦意を喪失してしまう。ちょうど良い挑戦的な状態は人を活性化させる。日本で古来から言う「没我の境地」のようなもの。それをチクセントミハイはフロー体験と言うわけだ。
マツダは「MTをうまく運転しよう」ということは、このフロー体験になるのではないかと考えた。ただしである。自動車の運転は公共の安全を考えても、そう簡単にチャレンジングなことをしてもらっては困る。実際、高齢者の事故が大きな問題となっているご時世でもある。
そこで、マツダは自動運転の技術を使って、エラーを回避するシステムを作り上げようと考えた。あたかもシークレットサービスのようにドライバーの影に潜み、いざというとき、ドライバーに代わって危機を回避するというのである。自動運転と言うと人が何もしないことを考えがちだが、人こそが主役で、システムはそのサポートをするという考え方も成立する。そう考えると、目的は安楽ではないので、MTの自動運転という考え方も成立するのである。そういう技術がいつできるのかという質問にマツダは「10年ではかかり過ぎ」だと答えていたので、遠からず何らかの技術が出てくるだろう。
●クルマは本当に高くなったのか?
結論から言ってしまえば、クルマが高くなったのではなく、日本人の所得がどんどんダウンしているので、クルマを割高に感じるようになっているのである。1995年の名目賃金を100としたときに、2012年の米国の賃金は180.8。ユーロ圏の賃金は149.3。ところが、日本だけ87.0へと目減りしている。
1995年を基準に言えば、米国の賃金は日本の倍になっている。この間日本国内は深刻なデフレが進行しているので、ドメスティックな商品はどんどん値下がりしている。牛丼が370円などと言うのはOECD(経済協力開発機構)加盟国の中では最貧国レベルであり、明らかに不当に安い。日本人は日本人の労働を不当に低く評価することでどんどんデフレを加速させてきたのである。
良質なサービスを安い賃金で提供される状況にすっかり慣れてしまっているのだ。企業は適正な賃金を支払わず、消費者は適正な対価を支払わない。製品やサービス、労働のクオリティを正しく評価し、対価を支払える人が減ったことがその原因であることはほぼ間違いない。
そんな中でグローバル商品である自動車は否応なく世界の価格に合わせて開発されていく。だから日本のデフレ慣れの分だけ高く感じられるのである。
●スポーツカーにウイングは必要か?
これは「Yahoo! ニュース」のコメントを見てとてもがっかりした原稿だった。スポーツドライブと言えば危険運転、ウィングと言えば、猛烈な駆動力を掛けられたタイヤのグリップ最大値を上げるために路面に押し付ける役割だと思い込んでしまっている人が多すぎる。
ハンドリングというのは時速20キロで走っていても成立するし、60キロで真っ直ぐ走っていても成立する。むしろ本来はそういうときのハンドリングが大事なのだ。この記事の主題は、サスペンションの機械的ジオメトリーでのセッティングは万能ではなく、速度域別の性格を作り出すことができないこと、そしてその補正こそが空力パーツの役割であることを書いた。
つづら折りの山道には、数十メートルでほとんど180度向きを変えるような低速の急コーナーがある。こういうところをしっかり曲がるには、サスペンションは曲がりやすく仕立てるしかない。しかし良く曲がるように仕立てられたサスペンションは、高速道路を時速80キロで流しているときにも曲がりやすい。路面のうねりで進路が変わるのだ。速度域が上がると敏感なことは神経質なことに直結する。空力パーツはこれを補正する役割を持っているのだ。
この連載で繰り返し書いているように、前輪は機動性、後輪は直進安定性を担う役割がある。だから前輪を押し付けると曲がりやすくなり、後輪を押し付けると真っ直ぐ走りやすくなる。市販車のリヤウィングは、後輪を押し付けてクルマの直進安定性を高くすることを目的に装着されている。
裏返せば、リヤウィングで高速安定性を確保できるからこそ、低速で良く曲がるサスペンションセッティングができるのである。
●ホンダNSX 技術者の本気と経営の空回り
NSXはホンダの経営に何をもたらすのかよく分からないクルマだし、もっと言えば、それを長期にわたって続けていく事業継続性について何もプランがない。ホンダの経営的問題点を象徴するようなクルマである。しかし一方で、技術的には従来のクルマの常識を超える大変挑戦的な意欲作でもある。
まずは駆動装置だ。エンジンはV6 3.5リッター・ツインターボで、エンジンとトランスミッションの合わせ目にモーターが挟み込まれる。さらに、前輪にも左右独立した2つのモーターを装備。つまり動力はエンジンと3つのモーターということになる。しかも4輪それぞれに駆動力を配分し、駆動力で旋回させる。クルマの前2輪だけを取り出して見たとき、右タイヤを駆動し、左タイヤを止めれば左に曲がる。運動会の行進で内側の人は足踏みし、外側の人は大股で早歩きをするのと同じだ。内外輪の軌道長の差を駆動力で意図的に作り出してやることでクルマを曲げる。これは自動車の歴史を覆す新手法だ。
しかし、これをやるにはシャシーの強度が問題になる。一輪だけブレーキを掛けたり駆動力を掛けたりすれば、シャシーがキツくなるのは当然だ。しかもスポーツ性能を考えればシャシー重量は増やしたくない。ハイブリッドと四駆システムでただでさえ重量は増えているのだ。
NSXでは、高価なアルミ押し出し資材を大量に投入するとともに、アブレーション鋳造という特殊な手法を用いた。砂型に溶けたアルミを流し込み、アルミが冷える前に砂型をジェット水流で吹き飛ばす。急冷による素材の熱変化を利用して部材をより硬化させる特殊な鋳造法だ。これにより複雑な形状で、粘り強く、破断強度の高い部材が作れる。この部材でサスペンションマウント部鋳造して、アルミ押し出し材の間に接ぎ木のように挟むことで、フレームに直接サスペンションを組み付けることに成功した。衝突安全性とサスペンションの位置決め問題を同時に解決する素晴らしいアイディアだ。
素晴らしいエンジニアリングと、それを継続していく戦略の無策。NSXにはそれが両方存在している。
さて、今年のベスト5記事はいかがだったろうか。引き続き2017年も、自動車産業が盛り上がり、日本経済が少しでも良くなるために記事を書き続けていこうと思う。自動車ユーザーと、自動車メーカーがともに幸せになれるように、良いものは良い、ダメなものはダメ。是々非々を貫いていきたいと思う。
(池田直渡)