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【マールボロ(ニュージーランド)】米国やその他の国々で今までよりも高価なワインが好まれるようになっているのを背景に、世界の大手ワインメーカーはニュージーランドの牧羊地などをブドウ畑に変える動きを加速している。
国際ブドウ・ワイン機構(OIV)によると、世界のワイン輸出国の中でニュージーランド産はフランス産に次いで高額なワインとなっている。ニュージーランドの冷涼な気候は、他の産地よりも高品質なブドウの少量生産に適しているのだ。
2009年以降、ニュージーランドから米国へのワイン輸出は約3倍に増えた。米国の飲料輸入業者団体によると、昨年には同国の産地別ワイン輸入額でニュージーランドはオーストラリアを抜き、イタリアとフランスに次ぐ3位となった。
急速な成長ペースだが、ワインメーカーはニュージーランドにはまだ大きな伸びしろが残されているとみている。米コンステレーション・ブランズや豪トレジャリー・ワイン・エステーツなど大手は、高品質なワインを作る世界的戦略の一環として、ニュージーランドで数千エーカーもの農地を買い続けている。
上場ワインメーカーとして世界最大の生産量を誇るコンステレーションは、2014年から16年の間にニュージーランドで新たに1800エーカー(約728万平方キロメートル)の土地を手に入れた。それまでに比べて約50%の拡大だ。同社はまた、ニュージーランド南島の北端に位置するワインの産地マールボローの主要拠点に5000万NZドル(約39億円)を投じている。これにより、年間4000万リットルの生産が可能になるという。米ニューヨーク州ビクターを拠点とする同社のニュージーランド産ワインには「ノビロ」や「キム・クロフォード」などがある。
一方、生産量で豪州2位のワインメーカーであるトレジャリー・ワインも最近、マールボローで1400エーカーの土地を購入した。欧州の高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン傘下のワイン醸造会社クラウディーベイもまた、同地で52エーカーの土地を入手する許可を昨年11月に規制当局から得た。
OIVによれば、2015年時点では米国は世界最大のワイン消費国。消費者の高級ワイン志向は強まっており、ニールセンの調査では、2016年に1本7.99ドル(約890円)未満のワインの売り上げが落ち込んだ一方、より高価格帯のワインの売り上げは伸びた。英国でも同様の傾向が見られるという。
20年ほど前には、米国でニュージーランド産ワインはほとんど存在感がなかった。ニュージーランドのワイン生産者協会によると、米国への輸出量は2000年には約250万リットルだったが、2016年には6100万リットルにまで急増した。
マールボローは白ワインの一種ソービニヨン・ブランで有名な土地だ。ソービニヨン・ブランは昨年、ニュージーランドのワイン輸出全体の85%を占めた。
現地の農家フィリップ・ニール氏は、かつて約2000頭の羊を飼育していた。現在、その数は700頭に減っている。クラウディーベイとの契約の下、自身の農地のほとんどをブドウ畑に転換していけば飼育頭数はさらに減ることになるという。
コンステレーションのニュージーランド現地法人責任者を務めるサイモン・タウンズ氏は「2桁成長が続いているが、ニュージーランド産ワインはまだ米国市場に十分浸透していない」と語る。「助走路はかなり長いと我々は考えている」
By MIKE CHERNEY
今、日本のファミリーレストラン業界が変化の兆しを見せている。最近も、ファミレスで深夜営業をやめる動きが広がっていると報じられて話題になったばかりだ。
【米国でファストカジュアルが人気】
かつて深夜のファミレスと言えば、若者が同級生や友人などと会話をする人気のスポットだった。それが今では、インターネットや携帯電話が普及したことにより利用客のライフスタイルが変化し、わざわざ深夜に外で会う必要もなくなった。結果的に、深夜のファミレスはガラガラになり、深夜まで営業を続ける意味がなくなった。
ファミレスが深夜営業をやめる理由は、客の減少だけではない。従業員を確保することも、困難だからだ。社員を使えば長時間労働の問題に直面し、アルバイトを確保するのにも深夜手当などの人件費がかさむ。客が少ない深夜に営業するビジネスモデルそのものが限界に来ている。
そんな日本のファミレス事情だが、実は、米国でもレストラン業界は厳しい状況に喘(あえ)いでいる。ファミレスタイプ・レストランの2016年第4四半期の売上高が2.4%も落ち込み、近年まれに見る最悪な年となった。
米国でも、若者のファミレス離れは深刻になっている。日本とは事情が異なるが、3つの要因が重なって業界を苦しませている。米国のファミレス業界で、いったい何が起きているのだろうか? そこから日本の業界が学べることはあるのか。
●ファミレスから客足が遠ざかっている最大の原因
まず、ファミレスから客足が遠ざかっている最大の原因として考えられるのが、「ファストカジュアル」の台頭だ。
以前、本コラムでも取り上げたが、「ファストカジュアル」とはファストフードとファミレスの間のような位置付けで、トレンドに敏感な若い客層に支持をされている。
ファストカジュアルは、ファストフードのフォーマットで料理を提供するため、レストランのように料理が運ばれるまでほとんど待たされることはない。そして、店内はファストフード店より清潔で高級感があって、ゆっくりと食事ができる居心地のいい空間になっている。
ファストカジュアルの商品単価は、ファストフードよりも高めだが、レストランと比べるとリーズナブルだ。だが、レストランのように、チップを置く必要がないため、割安感がある。チップ文化が浸透している米国では、レストランでのテーブルサービスに対して払うチップは、意外にばかにならない額になる。
また、ファストカジュアルは、食材にこだわったメニューをウリにしているため、ヘルシー志向でグルメな若者に絶大な人気を誇っている。
そこまで高くない値段で、おいしい食事が手軽に食べられるファストカジュアルは、これまでは、ファストフード業界のビジネスを脅かす存在だった。しかし今度は、ファミレス業界にも影響を及ぼし始めている。
ファストカジュアルの売り上げは、1999年から2014年までの15年間で550%増という驚異的な成長を遂げている。しかも、この傾向はまだ続くとみられており、ファミレス業界にとっては今後さらに恐ろしい存在になっていくことになる。
●ファミレスが苦戦しているもうひとつの理由
ファミレスが苦戦している2つめの理由は、人々の外食する機会そのものが減っていることだ。というのも、自宅で食事をとるほうが断然安上がりだからだ。
スーパーでは、激しい価格競争で食料品の値段が下がり、消費者は割高な外食をやめて、食材を購入して自宅で料理する傾向が高まっている。米政府のデータによると、2016年は食料品の価格が過去50年で初めて1.3%も減少している。
激化する価格競争のせいもあるが、食料品の価格がこれだけ下がれば、消費者の選択にもかなり影響するだろう。また、惣菜や調理済みの料理を充実させるスーパーが増えていることも、外食よりも自宅で食事を済ませる傾向を後押ししている。
その他にも、ネットスーパーやミールキットデリバリーなど、便利な配送サービスを利用すれば、食材をそろえたり自宅で料理をすることがそれほど面倒ではなくなってきている。
特に、急成長中のミールキットデリバリーは、レストランで提供されるような手の込んだメニューが自宅でつくれるとあって、利用者が増えている。そのため、有名シェフやブランドが続々とビジネスに参入しており、ますます盛り上がりをみせている。
3つめの理由は、ショッピングモールの衰退が関係している。というのも、ファミレスはショッピングモールに併設または隣接されているケースが多い。これまでなら、お腹を空かせた買い物帰りの客がファミレスに流れることでビジネスが潤っていた。
ところが、ショッピングモールを訪れる客が激減しているため、ファミレス業界もその余波で痛手を負っている。また外食をするためだけに出かけるなら、ファミレスではなく別の店を選ぶ傾向がある。
このように、ファミレスを取り巻く環境は非常に厳しくなっている。消費者のライフスタイルが変わり、さらに選択肢が増えているため、これといって特別感のないファミレスにわざわざ行くことが減ってしまうのも当然だ。
ただこうした状況に、さすがのファミレスも打開策を練っている。店舗に足を運んでもらえるように、サービスの向上や店舗の改装など基本的なことから始まり、やれることはすべて行っている。競合との違いをだすために、食材をアップグレードしたり、メニューを改善したり、テイクアウトやデリバリー用のメニューを開発したりしている。
●新しいテクノロジーを導入して売上増
さらに、新しいテクノロジーを導入して売り上げを伸ばそうとしているファミレスもある。
例えば、全米で約2000店舗を展開する大手チェーンレストランの「Applebee's(アップルビーズ)」は、業界でもいち早くタブレット端末を導入した。各テーブルに設置されたタブレット端末を使って、追加オーダーや支払いが直接できるようになり、客の評判も上々だという。
またApplebee'sは、一押しのメニューでも薪(まき)を使ったグリルを全店舗に導入するなど、絶対に店でしか味わえない料理を提供する試みを始めている。グリルに使用されるステーキ肉などは、各店舗内でわざわざハンドカットする「こだわり」を売りにし、従業員に特別なトレーニングをしてクオリティーで違いを出そうとしている。
現在、Applebee'sは、4000万ドル(約44億円)をかけ店舗の大改装を行い、コンテンポラリーでシックなイメージに店舗を一新している。また同社にとって過去最高となる1億2000万ドル(約133億円)の巨額をつぎ込んで、マーケティング・キャンペーンを行い、ブランドの再構築にも取り組んでいる。ただ巨額投資に見合うだけの効果がまだ出ておらず、トップが退任に追い込まれている。
もっとも、レストラン側はどれだけ必死に改革に取り組んでも、残念なことにファミレスそのものが消費者に飽きられているという事実がある。そのイメージを変えるのは、そう簡単なことではない。
それでも、レストラン不況から抜け出すことに成功したファミレスもある。シーフードが有名なチェーンレストランのレッドロブスターだ。
レッドロブスターはまず、客がどのようなシチュエーションでシーフードを食べに来店するのかを分析した。その結果、多くの客がお祝い事などの特別なイベントで訪れることが分かった。
そこで、客のニーズに応えるべく、普段スーパーなどでは手に入らない高品質の食材をメニューに加え、「特別感」を演出。さらに、食材の調理方法を改善することで、品質と味の向上に成功している。
レッドロブスターは、他社同様にメニューを改善したに過ぎない。だが、シーフードという本来のスペシャリティを見直し、特化することで客のツボをがっつりつかむことができたようだ。
●価格に見合ったモノを手際よく提供する
レッドロブスターの例は、やはり壁に直面している日本のファミレス業界にもヒントになるかもしれない。
日本より一足先に衰退に直面している米国のファミレス業界だが、若者をいかに取り組むかが復活のカギになっている。この層は外食にかける金額が食費全体の44%を占め、世代別で見ると利用頻度が一番多いからだ。
選択肢がどんどん広がる現在では、価格に見合ったものをいかに手際よく提供できるかは重要だ。若者がファストカジュアルを利用したり、テイクアウトやデリバリーを好む傾向があるのも理解できる。
一方で、レストラン業界は、そこでしか味わえない経験を提供することが必要になっている。この先、深夜営業をやめる日本のファミレス業界が、生き残りをかけて、どんなアイデアを見せてくれるのか興味深い。米国の現状は、参考になるかもしれない。
(藤井薫)
野村ホールディングス(HD)は、ベンチャー企業の育成・支援体制を強化するため、製造業をはじめとした異業種の大企業との連携に乗り出す。ベンチャーに参加を呼びかけ、共同で事業化を目指す支援プログラムを野村HDが一体となって運営。知名度の向上につなげ、潜在力が大きいベンチャーや起業家が集いやすい環境を整えていく。
大企業の間では技術や人材の取り込みを図るため、ベンチャーに対する買収や出資の動きが活発化しているが、野村HDは大手とベンチャーのマッチングの場を提供することで、積極的に新規株式公開(IPO)を行える企業を育成していく。
同社は、実用化を前提にベンチャーからアイデアを募集した上で有望案件を絞り込み、実現させるアクセラレータープログラム「VOYAGER(ボイジャー)」を今年からスタート。第1期は野村総合研究所、野村不動産ホールディングスという野村HDのグループ会社と連携して計画を進めている。
ボイジャーは当面、年1回のペースで開催する予定。第2期以降はグループ外の企業と連携することで、より多岐にわたるベンチャーが参加できる機会を設ける。
八木忠三郎・金融イノベーション推進支援室長は「ベンチャーが自由に集える環境を構築し、大企業と協業できる場として位置づけられるようにしたい」と話している。
人工知能(AI)などの新技術が急速に進化し、企業間競争が激化する中、ベンチャーの技術を自社に取り込んで新製品を生み出す「オープンイノベーション」の適用事例が大企業で増えている。
ボイジャーもその一環。「社内だけだとスピード感が遅い」(八木室長)という理由で実現し、今回は100を超えるベンチャーが応募した。その中から「生活習慣病を抱える人への健康づくりの最適化支援」というアイデアを提案した名古屋大学医学部発ベンチャーのPREVENTなど、5社が参加企業に選ばれた。
この5社はイノベーション研究所の西岡郁夫社長や、セレスの都木聡社長ら起業を体験した社外のメンター、アドバイザーからの協力を得ながら応募アイデアの具現化を目指し、7月中旬にその成果を発表。事業化の判断を下す。また、提携や出資の検討も進めていく。
引用:野村HD、VBと異業種の大企業マッチング 「健康支援」など第1期5社選定
世界最大級のスタートアップの祭典「スラッシュ(SLUSH)」の東京版、スラッシュTOKYOが29日、大型コンベンションセンター、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した。光や音で華々しく演出された会場で、起業家たちが開発した技術や、練り上げた事業構想を展示、発表し、投資家、起業家、社会人が評価、鑑賞する。日本での開催は3回目で、過去最大となる500組のスタートアップが参加する。来場者は5000人を超える見込みで、日本のスタートアップムーブメントを後押しする。
祭典の目玉である事業構想発表会、ピッチングコンテストには、80組のスタートアップが登壇する。日本からもドローン技術の応用で社会課題の解決を図るアイ・ロボティクス(東京)が、次世代バッテリーの搭載で、24時間飛行可能なドローンの活用を発表して喝采を浴びるなど、力のある企業が登壇した。
また著名経営者がスピーチをするメーンステージでは、自動車配車サービスアプリ、ウーバーを提供している米ウーバー・テクノロジーズの創業者、ガレット・キャンプ氏、ウーバーなど将来有望な企業に資金を提供してきたエンジェル投資家兼起業家、スティーブ・ジャング氏らが登壇し、注目された。30日には、今月いっぱいで社長を退任する日産自動車のカルロス・ゴーン氏らが登壇する。
スラッシュは、2008年にフィンランドでスタート。評判を聞いた日本人経営者ら有志が日本への誘致を働きかけ、2015年4月に「スラッシュアジア」として、東京で仮説ドームを設置して、フィンランド以外では初めて開催された。
2016年に幕張メッセで第2回を、学生主体の運営で開催。その後上海、シンガポールでも開催を拡大したことから、今回「スラッシュTOKYO」に名称を変更して開催。登壇者、来場者は年々増えている。
特徴は、いわゆるロックフェスのような高揚感あふれる演出のステージで行われる事業構想発表で、経営者や登壇者はスターのような喝采を浴びる。登壇者は世界各国の希望者から選ばれ、発表はすべて英語。会場内の公用語も英語だ。運営の主体が500人の学生ボランティアであることも特徴で、スラッシュの運営に関わることを学生に推奨する大学の教員もいる。
運営スタッフとしてボランティアに加わった早大2年の後藤真歩さんは「今回が初参加。メディア担当として多くの取材調整などをこなし、開幕直前まで不安だらけでした。始まってみたら結構うまくいっていて、今は『大丈夫です』と自信を持ってと言えます。これまでチャレンジしたことといえば、留学と受験ぐらい。でも今回は、日を追う事に不安が募るこれまでにない挑戦でした。今回、それを乗り越えられたので、自分の自信にもつながりました」と話す。
後藤さんの妹で中学3年の紀歩さんも今回が初参加。「今まで触れたことのない世界を知ることができて、会うことができない人と会えてとても楽しい。出展しているスタートアップの中には大学生の方もいて、自分のやりたいことを考え直す機会にもなりました」と目を輝かせた。
スラッシュTOKYOは30日まで。
引用:「スラッシュTOKYO」開幕 世界のスタートアップ500社が共演
ソフトバンクが平成29年度から、孫正義ソフトバンクグループ社長流プレゼンテーションのノウハウを外部企業に販売することが27日、分かった。同社のプレゼンは、大きな文字で強調してシンプルなメッセージで伝えることなどが特徴。社内研修で講師役を務める同社社員が、外部企業に出向いてプレゼン手法などを伝授し、ビジネス化を目指す。
「『シンギュラリティー』の意味を知っている人はどのぐらいいますか」
シンギュラリティーは、人工知能(AI)が人間の能力を超える現象だが、一般的にはそれほど知られていない。孫社長のプレゼンは、こうした専門用語の意味を知らない人にも理解してもらえるよう、知識レベルの差を問わないシンプルな説明▽見やすい大きなグラフ▽文字-が特徴だ。
外販するプレゼンもこれらのノウハウを意識し、プレゼン資料1枚に1メッセージ▽なるべく大きな文字になるよう、1文字でも少なく▽色使いは2~3色以内に-といった資料作成の具体的手法を伝授。また、「相手に自分を売り込むのでなく、どうすれば動いてもらえるか」を意識して、目的・内容・順序の3要素で構成するなどきめ細かく指導する。
ソフトバンクは、プレゼン手法や表計算ソフトの使い方、ビジネス統計などを社員同士で教え合う「研修の内製化」に21年から取り組んでいる。
外販するのは、社内研修で培ったさまざまなノウハウ。28年度には「ソフトバンクの研修を知りたい」という要望を受けて外部企業に試験的に実施。29年度は年間の売り上げ目標を設定し、教材も一新してビジネス化を目指す。社内研修の講師の能力を磨く狙いもある。今後、料金など事業の詳細を詰める。
引用:シンプルな説明、大きな文字 ソフトバンク、孫流プレゼンを外販へ
キユーピーがサラダ・惣菜事業を強化することが27日、分かった。同社の主力商品はマヨネーズやドレッシングなど調味料だが、国内では共働きや単身世帯の増加で弁当や惣菜、外食需要が高まっている。このため、国内のサラダ・惣菜事業の売上高を伸ばし、5年以内に調味料事業の売上高より多くする方針だ。
キユーピーの平成28年度の売上高は5523億円。このうち、主力の調味料事業は1441億円で、全体に占める割合は26.1%。サラダ・惣菜事業は1118億円で20.2%となっている。
今後、国内では少子高齢化が進み、共働きや単身世帯がさらに増加する見通しで、家庭の中で食事をする機会が減り、マヨネーズやドレッシングの販売は鈍化するとみられる。
その一方、弁当や惣菜、外食需要は高まるとみられており、「(マヨネーズなど)食卓の名脇役から、カット野菜や惣菜、卵加工で主役を目指す」(長南収社長)方針だ。
キユーピーは今後、サラダ・惣菜事業の販売を拡大する方針だが、調味料事業よりも利益率が低いのが弱点。このため、市場でのブランド価値を高めるとともに、工場の自動化を進めてコスト削減に取り組み、利益率を高める考えだ。
一方、キユーピーは海外売上高比率が7%と低いのが経営課題となっている。今後、中国や東南アジアでの販売を伸ばし、将来的には海外比率を全体の20%程度に引き上げる。
引用:キユーピー、マヨ・ドレからサラダ・惣菜へ 食生活の変化に対応
「地方銀行の再編・淘汰は最終局面を迎えているのではないか―」こんな衝撃的な見方をしているのは、首都圏の有力地銀の役員だ。
2017年に入りまだ3カ月だというのに、年明け早々から地銀の再編が目白押しの状態だ。1月には、三重県の三重銀行(四日市市)と第三銀行(松坂市)が経営統合に向けて交渉をしていると報道され、2月28日には両行は経営統合で基本合意を発表、2018年4月2日をメドに共同持ち株会社を設立し、両行は傘下に入る。
■マイナス金利と地域経済の二重苦
3月に入ると、三井住友フィナンシャルグループとりそなホールディングスが各々の傘下にある関西の地銀3行が2018年4月頃をメドに経営統合することで基本合意したと発表。三井住友傘下の関西アーバン銀行(大阪市)とみなと銀行(神戸市)、りそな傘下の近畿大阪銀行(大阪市)は系列の枠を超えて経営統合することになる。
3月半ばには、新潟県で総資産首位の第四銀行(新潟市)と第2位の北越銀行(長岡市)が経営統合を検討していると報道された。両行は、3月16日に「経営統合に関して検討しているのは事実だが、現時点で決定している事実はない」とのコメントを発表。経営統合に向かっていること自体は認めている。
冒頭の地銀役員は
「この3件の経営統合には、明らかな共通点がある。それは、地元を同じくする地銀同士が統合するということだ。これまでのほとんどの地銀の経営統合は、隣接した他県の地銀が相手だった。それがもっとも簡単にシナジー効果を生む方法だったからだ。しかし、今や地元を重視した守備型の経営統合が中心になっている」
と解説する。
そして、こうした背景には3つの要因があると分析する。第1は、2016年2月からスタートした日本銀行によるマイナス金利政策によって、収益力が低下し経営環境が厳しくなっている点がある。加えて、少子高齢化に伴う人口減少が地銀の経営環境の悪化に拍車を掛けていること。特に地方における人口減少のペースは速く、各地銀とも依って立つ地元経済の活性化が急務になっている。そして、地元重視の経営姿勢を金融庁が強力に後押ししていることだ。
健康や防災などへの意識が高まり、ミネラルウオーター市場が拡大している。そのトップを走る商品が、サントリーの「天然水」シリーズ。2016年の出荷量は、初の1億ケースを突破。ペットボトルで約12億7000万本を販売した。そのブランド戦略を担当するのが、サントリー食品インターナショナルの糸瀬大祐さん。大ヒットしたフレーバーウオーター「ヨーグリーナ」は、「いつか退職するときに、思い出す商品」だという。その開発の裏には、何があったのか。
【サントリー食品インターナショナルの糸瀬大祐さん】
●初の年間1億ケース突破
「南アルプスの天然水」などで知られる天然水シリーズは、同社の清涼飲料販売の4分の1を占める。糸瀬さんが担当になったのは14年9月。それまでは、缶コーヒー「BOSS」の部署にいた。「働く人がどのように缶コーヒーを飲むか」を考えていたが、今度は「人が水を飲む、ということの本質を考えることになった」。
サントリーのミネラルウオーター事業の始まりは1970年。ウイスキーに適したおいしい水を求めて、全国の水質を調査し、業務用ミネラルウオーターを商品化した。80年代には家庭用ミネラルウオーターの需要が増加したものの、家庭用市場ではハウス食品「六甲のおいしい水」が首位を走っていた。そんな状況を変えたのが、91年に発売した「南アルプスの天然水」だ。
南アルプス(山梨県)のほか、阿蘇(熊本県)、奥大山(鳥取県)といった採水地を前面に出したブランドイメージが定着し、販売は右肩上がり。健康志向に加え、東日本大震災以降は防災意識がさらに高まり、市場は拡大。その成長をけん引してきた。2016年は前年比6%増の1億60万ケースを販売した。
●フレーバーウオーターの次の一手
天然水の主力商品は2リットル・550ミリリットル入りペットボトルになるが、フレーバーウオーターなどのサブカテゴリー商品も近年の成長を下支えしている。糸瀬さんが天然水の仕事を始めたころ、13年に炭酸水の「スパークリング」、14年にフレーバーウオーター「朝摘みオレンジ」を投入していて、今後のブランド戦略が課題になっていた。
フレーバーウオーター市場は、日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す」など、他社の商品が先行していた。そのため、後発となる新商品は失敗できない。社内でも天然水ブランドに対する期待は高く、機運が高まっていた。「新しい価値をつくっていくというモチベーションが高まった」と、糸瀬さんは振り返る。
次の一手として決まった新商品は、朝摘みオレンジに次ぐフルーツフレーバー。糸瀬さんが加わった14年9月の時点で、中身もパッケージも決定していた。
ちょうどそのころ、中身を開発する研究所で、ある研究員が生み出した味に注目が集まっていた。「こんな味ができた」と、研究員が自発的に提案した味。それが、乳性フレーバー。後に「ヨーグリーナ」として世に出るフレーバーウオーターだった。
研究所での話はたちまち広まり、その水が「おいしい」と話題に。上層部にも伝わり、チームの雰囲気は変わっていった。
そして、決まっていた新商品計画の変更を決断。14年9月、新商品発売まで約半年。商品名やパッケージを決める時間は、たった2カ月しか残されていなかったが、ここから糸瀬さんら天然水チームの奮闘の日々が始まる。
●過去の商品に目を付ける
ヨーグルトのような味はおいしいが、それをどう表現するか。まずは商品名だ。「乳性フレーバー」といっても味がイメージできない。乳製品によくある「ホワイト」という言葉も、商品が白くないため使えない。この味わいを伝える言葉はないか……。
そんなときに目を付けたのが、過去の商品。1990年代に発売した特定保健用食品の乳性飲料が「ヨーグリーナ」だった。あまり売れなかった商品だったため、「縁起が悪い」という声もあったが、「親しみのある響きで味わいを伝えるのにぴったり」と、再び採用した。
パッケージも悩みの種だった。どんな色やデザインを使えば、味をイメージできるのか。デザイナーと何度もケンカをしながら、「ものすごいスピード」で試作を繰り返した。その数は200種類にも上る。試行錯誤の中で、ブルー系の色を基調としたデザインをゴールドに一変させたことも。青いパッケージは酸味のあるヨーグルトをイメージさせるため、甘くリッチなヨーグルト商品によく使われる金色を採用した。最終的にパッケージが完成したのは、商品発表の直前だった。
そんな嵐のような日々を経て、ヨーグリーナは世に出ることになった。開発段階から「おいしい」と絶賛された味の秘密は、素材を生かした製法だ。その素材とは、チーズを作るときに出る液体「ホエイ(乳清)」。ヨーグルトの上澄み液としても知られている。その乳清を乳酸菌で発酵させることで、透明でありながらコクのある味に仕上げた。「飲めば分かる」というおいしさを広く知ってもらうため、発売前の告知にも力を入れた。
そして、2015年4月14日の発売日を迎える。受け入れてもらえるか――。
●2カ月半の販売停止
糸瀬さんらの不安を吹き飛ばすかのような「想定外の売れ行き」でヨーグリーナの販売は幕を開けた。
ところが、大きな問題が起きる。生産能力を上回るほど売れてしまったのだ。メディアが大きく報じたため、ご存じの人も多いだろう。発売してすぐに出荷停止に追い込まれる。再開までには2カ月半を要した。
その間、糸瀬さんは大量に生産するための交渉に走り回っていた。天然水シリーズは、採水地にある工場を拠点として、川上から川下まで、全ての工程がブランド構築の重要な役割を担っている。それを支える製造現場に対して、無理難題ともいえる大量生産をお願いした。在庫を抱えることはリスクにもつながるため、「責任を取れるのか」と責められることもあった。それでも、供給体制を整えることが優先だった。
「売れないといけないが、商品を切らしてもいけない」というプレッシャーがかかる中、迎えた15年6月30日の販売再開。再び世に出たヨーグリーナは順調に走り出し、糸瀬さんは「また認めてもらえた」と胸をなでおろした。
そして、9カ月後の16年3月に販売数量1000万ケースを突破。フレーバーウオーター市場で、過去最速のペースを記録した。
●部署を飛び越えた開発
短い期間で商品を完成させ、大ヒットに導けたのは、「たくさんの人に関わってもらったおかげ」。担当や部署を飛び越えた「チームの力」だという。
通常の新商品であれば、パッケージ開発や宣伝といったプロセスを順番にこなしていくことが多いが、2カ月で全てを完成させる必要があったため、同時進行を余儀なくされた。そうなると、商品がまだできていないのに、宣伝の部署と打ち合わせを始めることになる。結果、宣伝チームからも商品についてアイデアをもらうことができた。他にも、開発チームが気付かない視点から意見をもらう機会が多く、「いい作用」を引き起こした。また、販売停止によって、製造の部署ともより深く関わった。無理をお願いして衝突したこともあったが、その経験で関係が深まり、その後の仕事にも生きているという。
ヨーグリーナの経験が教えてくれたのは、「壁があっても、いろんな人が知恵を出し合えば、乗り越えることができる。そうすれば、世の中を動かすこともできる」ということ。「そこそこヒットした『朝摘みオレンジ』を前例に、フルーツ系のフレーバーにしていたら、ここまで天然水ブランドが活性化することはなかった」と振り返る。
4月25日には、新たなフレーバーの新商品を発売する。ヨーグリーナに続く、新カテゴリーを打ち立てる計画だ。まだ詳細は明かせないが、糸瀬さんは「『そうきたか!』と言わせたい」と自信をのぞかせる。
引用:出荷停止も…… 「ヨーグリーナ」開発の舞台裏で何があったのか
【問題】外食チェーンを展開する「ペッパーフードサービス」の業績が好調である。その理由を述べよ――。
【V字回復のきっかけは「ワイルドステーキ」】
「はいはい、『いきなり!ステーキ』が順調なんでしょ。行列がよくできているし」と思われたかもしれないが、その答えだと「50~60点」といったところ。同じステーキをウリにしている「ペッパーランチ」の快進撃が続いているのだ。
ペッパーランチと聞いて「えー、本当に? ちょっと信じられない」とびっくりされた方は、あの事件・事故の記憶が甦ったからかもしれない。2007年5月に起きた強盗強姦事件と、2009年9月に起きた「O157食中毒」である。後者は感染者が全国的に広がったこともあって、業績が悪化。競争の激しい飲食業界の中で、この事故は大きな足かせになるはずだった。ネット上でも「ペッパーランチは全店閉店すべき」といった声があった中で、2012年11月から反撃が始まるのだ。
あの手この手を打って、52カ月連続(4年以上)で既存店売上が上昇(現在も継続中)。内訳をみると、2012年の1店舗平均売上は450万円だったが、現在は650万円に。客単価は、路面店で800円、フードコートで700円だったが、現在は1100円、900円に。一度は地獄を見たペッパーランチは、どのようにして蘇ったのか。同社で取締役を務めている川野秀樹さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
●客単価が上がっているのに、客数も増えた
土肥: 国内のペッパーランチをみていると、2009年の食中毒事故をきっかけに、店舗数・売上高ともに落ち込みました。個人的に「ああ、もう終わったな」と思っていたのですが(失礼)、直近の数字を見てびっくり。2012年11月から現在(2月末)まで、52カ月連続で既存店売上が上昇している。
どうしてかなあと思って数字を追ってみると、気になったところがあったんですよ。それは「客単価」。2012年の客単価は路面店で800円、フードコートで700円でしたが、現在は1100円、900円。そして「客数」も伸びている。マーケティングの本なんかには「客単価が上がれば、客数は減る。しかし、単価が上がっているので売り上げは伸びるかも」といったことが書かれていますが、ペッパーランチの場合は違う。「客単価が上がっているのに、客数も増えて。結果、売り上げも伸びている」。なぜ、こんなことが起きているのでしょうか?
川野: ご指摘の通り、2009年の「O157食中毒事故」で、ペッパーランチの売り上げは大きく落ち込みました。かつてないほどの大打撃を受けたこともあって、社内からは「このままではダメだ。なんとかしなければいけない」という声がありました。そこでどうしたか。それまでは工場で肉をカットして、各店舗にそれを届けていましたが、この方法でやると原価率が高くつくので、各店舗でステーキにカットしてもらうことに。
土肥: それまでの店舗スタッフは、カットされたステーキを鉄板に乗せて焼くだけ。それなのに、いきなり「肉をカットしてくれ」と伝えて、現場から不満の声はなかったですか? 「えー、そんなの無理だよ」「これまで通り、工場でカットしてきてよ」と。
川野: いくつかの店舗からそのような声がありました。ただ、一部の店舗で店内カットの形に変えたところ、売り上げがぐーんと伸びたんですよね。ということもあって、全店での導入を決めました。
土肥: 肉をカットするって簡単そうに見えて、難しそう。全店導入はスムーズにいったのでしょうか?
川野: 現場で肉のカット法を教えて、「問題がない。大丈夫」と判断したところから導入して、2010年7月に「ワイルドステーキ」という商品を販売することに。肩ロースの塊をカットしたもので、当時の価格は1000円(300グラム、ライス付き)。店内で肉の塊をカットする店はそれほどなかったので、ものすごく売れたんですよ。
●クレームが多く、一進一退の状況が続く
土肥: いわゆる高級店に行けば、その場で肉をカットしてくれる。しかし、ペッパーランチのような券売機で食券を買って、1000円で食べることができる店でそのようなスタイルの店舗はあまりなかったような。
川野: ただ、話は順調に進みません。肉の硬い部分は「サービスステーキ」(120グラム、ライス付き、580円)として販売していたのですが、一部の現場は混乱していました。ワイルドステーキとして提供する肉をサービスステーキとして提供していたり、その逆もあったり。「この前食べたときのワイルドステーキはおいしかったのに、なんだこれ!? 硬いじゃないかっ!」といったクレームがありました。ワイルドステーキが予想以上にヒットしたので、「売り上げは伸びるはず」と見込んでいましたが、クレームが多く、一進一退の状況でした。
土肥: では、一進一退の話を聞かせてください。
川野: 2010年にワイルドステーキを販売して、その商品は好調だったのですが、世の中は「デフレ経済」が続いていました。大手牛丼チェーンが牛丼一杯250円前後で販売していたので、当社も考えたんですよ。当時、サービスステーキは580円で販売していました。ライスの価格は190円なので、ライスなしで390円。そこから100円引いて、290円で販売することに。
土肥: 牛丼戦争の中にステーキが参入したわけですね。
川野: はい。290円で販売したところ、多くの店で行列ができました。ところが、またクレームが殺到しました。
土肥: どうしてですか? また違う肉を提供したとか?
川野: 「なんでライスが付いていないんだ!」「どうせ安物の肉を出しているんだろう!?」といった声が多かったんですよ。290円ステーキの原価率は50%ほどだったので、利益はあまり出ません。そのうえ、クレームが多い。
土肥: 売っても売ってもあまり儲(もう)からない。加えてクレームも多い。“骨折損のくたびれもうけ”だったわけですね。
●高価格のメニューを投入したところ
川野: ワイルドステーキに続くヒット商品がなかなか生まれない。何とか現状を打破するために、海外にヒントを求めて視察旅行に行きました。
シンガポールの飲食店をみると、たくさんのメニューが並んでいたんですよ。カレー、パスタ、ドリア、ステーキなど。なぜかというと、現地の人はたくさんの人と一緒に食事を楽しむ文化があるんですよね。またフードコートをみると、ボリュームを少なくして、低価格の商品を提供していました。「これだ! 日本でもこの2つをやってみよう。1つはメニューを増やす。もう1つは低価格の商品を増やす」と決めました。
2012年1月に、カレー、パスタ、ドリアなどを提供しましたが、肉以外のモノはほとんど売れませんでした。また、ボリュームを減らして低価格の商品を提供したところ、こちらはクレームが殺到。
土肥: なぜクレームがきたのでしょうか? 当時は日本でも低価格の商品がたくさんありましたよね。
川野: 「価格を下げればいいと思っているのか。ペッパーランチは肉をたくさん提供するのがウリだろう」といった声が多かったんですよね。というわけで、この2つの試みはやめました。で、次に何をしたのか。お客さまから「肉をたくさん食べたい」という声が多かったので、より肉感を出したメニューを増やしました。肉のボリュームを増やしたり、質を上げたり、すると評判が良かったんです。単価を上げたのですが、売り上げも伸びました。原価率も上がりましたが、販売価格も上がるので、粗利額も増えました。また、お客さまからは「お得に感じる」といった声が多かったんですよね。
客数は順調に伸びていき、2014年2月に事故前の売り上げを超えました。また、券売機を止めてレジに切り替えました。それまではファストフードのステーキ店として運営してきましたが、1000円以上のステーキを食べるのに券売機で食券を買うのはちょっと嫌ですよね。また券売機で食券を買うときって、ちょっとプレッシャーを感じることがありますよね? 後ろで人が待っていたら「早く決めなければいけない」と感じて、食べたいと思っていたモノと違うモノを選ぶことも。
そうした不満を解消するために、券売機を廃止して、レジを導入。お客さまから「オススメはどれですか?」といった質問にも答えることができるようにしました。結果、顧客満足度が上昇してきました。
●消費者の胃袋をつかむことは難しい
土肥: 当時は値下げ商品が相次いでいたので、社内から値上げすることに反対の声はなかったですか? 「また、お客さんが逃げるじゃないか」と。
川野: ありました。ただ、数店舗でテストをしました。ステーキ250グラムで価格はそのまま、ステーキ300グラムで値上げ。どちらが売れたと思いますか? 300グラムだったんですよね。
土肥: 消費者の胃袋をつかむって、難しいですねえ。価格を下げたら怒られる、ボリュームを減らしても怒られる。逆に、価格を上げて、ボリュームを増やすと、喜ばれる。資料をみると、その後売り上げは順調に回復していくわけですが、当時いまのような状況を想像していましたか?
川野: いえ、まったく。O157の事故があって、売り上げは激減。ワイルドステーキがヒットしたものの、その後は迷走が続いていました。そうした中で、原点に戻るしかなかったんですよね。ボリュームのある肉をきちんと提供するしか。以前は売り上げが低迷している店舗は割引をしていましたが、それって店の価値を下げるだけなんですよね。というわけで、いまは一切割引をしていません。
土肥: もうひとつ気になることがあります。2013年12月に「いきなり!ステーキ」を出店していますよね。同じステーキを扱っているわけなので、カニバリ(自社製品が競合するので、市場で共食いが発生してしまうこと)もあるのではないでしょうか。
川野: 当初、ペッパーランチを運営している会社が「いきなり!ステーキ」もやっていることをなるべく出さないでいました。なぜかというと「しょせんペッパーランチをやっている会社が運営しているんでしょ」といった感じで受け止められるのではないかと懸念していたから。ただ、1年ほどが経って、「ペッパーランチもやっている会社ですよ」といった形で打ち出したところ、「しょせん……」といった反応はほとんどありませんでした。
カニバリはないのか? というご質問についですが、結論から言うと「ありません」。
土肥: 本当ですか? 東京の錦糸町、神奈川の横須賀、大阪の難波などでペッパーランチの近くに、いきなり!ステーキの店がありますよね。
●「いきなり!ステーキ」登場で、カニバリは?
川野: でも、どのペッパーランチも売り上げは伸びているんです。なぜか。「わざわざ」がキーワードだと思っています。
土肥: わざわざ? どういう意味でしょうか?
川野: いきなり!ステーキで食べたいので、わざわざ足を運ぶ人は多い。一方、ペッパーランチを食べたいので、わざわざ足を運ぶ人は少ない。
いきなり!ステーキを食べるために、電車に乗って来たけれども行列ができていた。時間がないので並ぶのは嫌だなあと思っていたら、近くにペッパーランチがあった。その店は行列ができていないので、待たずにすむ。しかも座って食べることができる。「じゃあ、ペッパーで……」という人が多いようです。また「以前ペッパーランチで食べたことがあるけれど、しばらく食べていない」「食べたことがなかった」といったお客さまが増えています。
ペッパーランチのオーナーさんに「近隣に『いきなり!ステーキ』ができる計画があるんです」と伝えると、ほとんどの人が「それは止めてくれ」と言っていました。でも、いきなり!ステーキが近くにできてもペッパーランチの売り上げは伸びているんですよ、といった事例をお伝えすると、納得されるケースが多いですね。いきなり!ステーキは集客力があるので、その相乗効果がでているのではないでしょうか。
土肥: 「寿司を食べたい」と思っている人は、いわゆる“寿司腹”になっているのではないでしょうか。「トロを食べたい」「ウナギを食べたい」という食欲があるのに、目的の店に行ったら行列ができていてすぐに食べることができない。「じゃ、隣にあるパスタの店にするか」とならず、近くにある寿司店を探す。時間がない状況でも、なかなかあきらめることができないわけですよ。
寿司腹と同じように、“ステーキ腹”になっているお客さんをがっちりつかんでいるわけですね。だからペッパーランチといきなり!ステーキは共食いをしていない。本日はありがとうございました。
引用:どん底に落ちた「ペッパーランチ」が、快進撃を続けているワケ
「マツダ地獄」という言葉がある。一度マツダ車を買うと、数年後に買い換えようとしたとき、下取り価格が安く、無理して高く下取りしてくれるマツダでしか買い換えられなくなる。その結果、他社のクルマに乗り換えできなくなることを表した言葉だ。発想の原点は「無間地獄」だろう。
【1989年、突如ライトウェイトスポーツカーというジャンルを復活させた初代ロードスター】
●誰も得をしていない
なぜマツダはそんなひどい言われ方をしていたのだろう? マツダは新車の販売が下手だった。ブランドバリューが低いからクルマを売るとき、他社と競合すると勝てない。あるいは勝てないという強迫観念を営業現場が持っている。それを挽回してマツダ車を買ってもらうために、分かり易いメリットとして大幅値引きを行う。しかし値引きが常態化して新車の実売価格が下がれば、好き好んで新車より高い中古車を買う人はいないので、新古車でさえ値段が下がる。そこから先はドミノ倒し式の崩壊だ。つまり新車の値引きは中古価格の暴落を生む。しかも新車以上に中古車はブランドイメージで値段が変わる。
そうなると、仮に新車から5年乗って「そろそろ新しいクルマに……」と思っても、下取り価格が低くて買い換えを躊躇(ちゅうちょ)するユーザーも一定数出てくる。元々が新車値引きに釣られて買ったユーザーなので、経済的にもあまり豊かとは言えない。そういう人が低い下取り価格に直面すれば「もう少し乗るか」という判断になりがちだ。
そうやって年式がどんどん落ちていき、さらに査定額が下がる。結局買い換えの踏ん切りが付くのはもうクルマの商品としての寿命が尽きた後。そんなときに下取り車に何とか値段を付けてくれるのはメーカーが下取り促進費を負担するマツダだけ。だからまたマツダになる。そして手元不如意のためまた大幅値引きを要求する。
「ずっとマツダに乗ってくれるならいいじゃないか」と言えないのは、それが常に強い値引き要求と買い換えサイクルの長期化という問題を含んでいるからだ。デフレスパイラルにも似たネガティブな輪廻が繰り返されており、長期的に見ればユーザーも販売店もメーカーも誰も得をしていない。
●ブランド価値の向上
この地獄を脱出しない限り、マツダに未来はなかった。先代CX-5から始まる第6世代商品群は、この問題に真剣に取り組むことからスタートした。それがマツダの言う「ブランド価値の向上」だ。「どこでも聞くような標語だなぁ」と当時は思っていたが、そうではない。例えば、余命宣告された人が「健康は大事だよ」と静かに言うような覚悟と思いの込められた言葉だったのである。マツダの「ブランド価値の向上」はハイファッション・ブランドの人たちが言うようなスカした抽象論ではなく、ビジネスの根幹にあるクルマの販売を根本的に改革することこそが目的である。
この輪廻を断ち切るための現実的なスタートは新車の値引きをしないことだ。しかし、ただ販売店に値引きを禁じれば良いというわけにはいかない。そんなことをメーカーが販売店に強要したら独禁法違反でアウトだ。なので、値引きをしないで売れるためには何がどうあるべきかを根底から考えなくてはならない。
値引き勝負をしないためには、クルマの価値を認めてもらうことだ。幸いなことにマツダには歴代ロードスターという成功例があった。ロードスターを買うユーザーは、安いから買うわけではない。ロードスターの価値を認めて、まず商品に惚れ込み、その上で懐具合と相談する。「4人乗れて動く安いヤツ」を探しているわけではない。しかし、商品として極めて個性的なロードスターならともかく、ほかの基幹車種をどうやってそのパターンに持ち込むのか? それは相当に難しいことに思える。
第6世代商品群を作るにあたって、マツダはまず走りとスタイルに個性を持たせた。全員に好かれようと考えるのを止めて、2%の人がどうしても欲しいクルマを作ることにした。ロードスターに範を取り、全マツダ車の位置付けをそう再定義したのだ。そんなことをして大丈夫なのだろうか?
実は、世界の新車販売台数は約1億台だから、2%は200万台になる。2017年3月期のマツダの通期販売見通しは155万台だ。だから2%は決して諦めの数字ではなく、むしろ野心的な数字とさえ言える。それができるかどうか以前に、誰にも好かれようとして無難なクルマを作っても、それを販売力で押し切れないことは既に長い実績が証明している。それがダメだということだけはハッキリ結論が出ているのだ。
だから個性こそが大事だと考えた。しかし製品として個性的なクルマを作れば値引き要求されなくなるのか、と言えばそれはそんなに簡単ではない。「好きだから欲しい」という購入モチベーションは必要条件に過ぎず、十分条件ではない。マツダは販売から後の部分にも手を入れた。この詰め将棋のような戦略が面白い。
●マツダの価値を変える覚悟
まずは2年に一度のマイナーチェンジを止めて、毎年の商品改良に切り替えた。これにより、マイナーチェンジを挟んで前後のクルマの中古車価格の変動が少なくなり、クルマの価値が時間軸で安定する。狙いは中古車の流通価格の安定である。ブレがあると人は安値に注目する。だからマイナーチェンジで見分けが付きやすいほど外観を大げさに変えなくなった。
そうやって流通価格を安定させた上で、残価設定型クレジットの残価率を引き上げた。一部の車種を例外として3年後の残価率55%を保証した。市場に任せるだけでなく、メーカー自身が市場価値を保証したのである。ここはブランド戦略の勝負どころだ。価値が落ちないことをメーカー自身が信じ、それを保証しなければ誰も信じない。
しかし、残価保証とはつまり買取保証ということなので、その戦略を完遂するためには、何が何でもリアルワールドでのクルマの価値を維持しなくてはメーカーが大赤字になってしまう。仮にユーザーが「買取価格が保証されているから、メンテは適当に」ということになると、劣化によって生じる市場価格との差額をマツダが補てんし続けることになる。そうならないためには中古車の劣化を食い止めなくてはならない。
だからメインテナンスのパックメニューを用意した。期間はいくつか選べるため、多少の違いはあるが、基本的な考え方としてはタイヤ交換以外のすべての定期点検と消耗品交換を含むメニューで、購入後の予定外出費を不要にするものだ。これに加えて、制限付きながら、ボディの無償板金修理を負担する保険も用意した。徹底して価値の低下を防止する意気込みだ。
このあたりマツダの都合とユーザーのメリットが一致しているのも面白い。マツダでは「お客さまの大切な資産を守る」と言う。ウソではないが、それはマツダにとってもマツダ地獄を抜け出すための重要な戦略なのだ。マツダの説明によれば、その結果、CX-5の新車を現金で購入後、7年間乗り続ける場合と、残価設定ローンで3年ごとに新車に乗り換え、7年目の時点の支払額がほぼ同額になるのだと言う。ユーザーはいつも新車に乗っていられるし、マツダは3年ごとに新車を買ってもらえてまさにwin-winだ。
●数値結果
さて、こうした戦略をとったマツダだが、第6世代が一巡して、マツダ自身が6.5世代と位置付ける新型CX-5が登場したところでこの戦略は成功しているのだろうか?
まずは、狙い通り乗り換えサイクルが短縮したのか? 長期化すれば下取りが悪化して地獄へ逆戻りだけに、ここは重要だ。新型CX-5は今年2月2日の発売から約1カ月で1万6639台を受注した。目標の約7倍となる成功だ。しかも注目すべきは、初代CX-5からの下取り乗り換えが39%に達していることだ。初代のデビューは2012年なので、つまり最長でも5年以内の乗り換えということになる。
初代CX-5が出た2012年の例を見ると、41%がマツダ車からの乗り換えだったが、新型ではこれが66%に上がった。「マツダ車からマツダ車への乗り換えはマツダ地獄ではないのか?」と考える人もいるだろうが、前述の通り、初代CX-5から5年以内に乗り換えているケースが多い上、安全装備が付いた上位グレード、Lパッケージとプロアクティブが受注の95%を占めている。つまりお金がない中で苦労して乗り換えているという様子には見えない。マツダの人に聞くと、「下取りが予想外に高くて喜んでいらっしゃるお客さまが多いです。その結果、上位グレードが売れているのではないかと思っています。マツダ地獄じゃなくてマツダ天国になったのかなと……」。
マーケットは不思議なもので、時代に即応する。良いクルマはほぼ間違いなく中古車価格が高い。ただし中古車価格が高いクルマが良いクルマとは限らない。いずれにしても下取り額が上がり、買い換えサイクルも短縮された。程度の良い中古が市場に増えれば中古車マーケットも賑わう。そして何より大事なのは、マツダが新車販売を値引き勝負で戦わなくて済むようになったことだ。こういう戦略があればこそ、ディーラーのCI(コーポレート・アイデンティティ)変更も順次行われている。黒を基調にした新しい店舗への刷新は、マツダのブランド価値の向上の重要なパーツなのである。
以上はマツダの説明を基に筆者が見立てた第6世代がマツダの何を変えたのかについての分析である。マツダから提供された数値については、筆者もそれなりに納得しているが、少し意地悪に見れば、マツダのラインアップの中で車両価格が比較的高いCX-5であることも勘案すべきだと思う。デミオでこうした数字が出て来たとき、作戦の成功が確実なものになるだろう。
(池田直渡)